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三章:寝不足
41:噂の二人
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辺りには、ちらほらと人の姿が見えるが渉達の姿が現れた事に驚いた様子はない。
(原理がわからないけど……気づかれないのはすごいな……)
ぼんやりとそんな事を思っていた渉だが、人々の視線が徐々に集まっている事に気づく。
(な、なんか見られてるような?)
首を傾げた渉だったが、その視線が穂と繋いだままの手に向けられている事に気づき、慌てて手を離した。
「おや、離すのか?」
「だ、だって見られてるし……恥ずいだろ……」
「さようか」
羞恥心で赤くなる渉を微笑ましそうに見つめる穂。その笑みに、道行く女性達が見惚れていたが、二人が気づくことはなかった。
「それでは、またな」
「うん、また」
大学の入り口で二人は別れ、各々自分の学ぶ校舎へと向かう。
渉は一時限目の教室へと入り、後ろの席に座る。すると後から入ってきた侑士が渉の姿に気づき、慌てたように近づいてきた。
「渉!お前イケメン持ち帰ったってマジか!?」
「ブッ!?な、はぁっ!?なんでそんな話になってんだ!?」
侑士の問いかけてきたあまりの内容に渉は吹き出し、驚愕したように声を荒げる。
「だって、昨日お前がイケメンに肩を抱かれて帰って、イケメンは昨日と同じ服でお前と一緒に登校してるらしいじゃん!?お前が持ち帰ったって噂で持ちきりだぞ!」
「んなっ!?そんなわけあるか!あいつは、昨日ふらついてた俺を助けてくれて、看病してくれてただけだよ!」
侑士が告げた言葉に顔を赤くしながら、渉は叫ぶ。教室の中は、二人の様子に聞き耳を立てる学生で溢れていた。
「あ……そっか。そういや昨日調子悪そうだったもんな」
「そうだよ……」
そう言えばそうだった。と、頷く侑士にため息を吐く渉。
「でも、なんでイケメンが看病してくれんの?」
「……最近、知り合ったんだけど何度か世話になってて……心配だからってついててくれたんだ」
「へー、イケメンなのにお人好しなんだなそいつ」
嘘という程ではないが、真実を誤魔化しつつ渉が説明すれば、侑士は納得したように頷く。
「それで、顔色は良さそうだけど眠れたのか?」
「久しぶりにめっちゃ寝た……なんだろ、人恋しかったのかな?」
「なんだなんだ、ホームシックかぁ?」
「そ、そこまではいってねぇわ!」
からかいつつも安心したように笑う侑士に、渉も普段の調子で笑いながら叫ぶ。
「ま、次同じ事があったら俺も協力してやるから声かけろよ」
「ははっ、そん時は頼むよ」
二人の普段のじゃれ合いに、周りの学生は興味をなくし、授業の準備へと取りかかる。
その後、噂を聞いたサークルやゼミの友人先輩と通話アプリのトークで同じやり取りをする事を渉は知らなかった。
(原理がわからないけど……気づかれないのはすごいな……)
ぼんやりとそんな事を思っていた渉だが、人々の視線が徐々に集まっている事に気づく。
(な、なんか見られてるような?)
首を傾げた渉だったが、その視線が穂と繋いだままの手に向けられている事に気づき、慌てて手を離した。
「おや、離すのか?」
「だ、だって見られてるし……恥ずいだろ……」
「さようか」
羞恥心で赤くなる渉を微笑ましそうに見つめる穂。その笑みに、道行く女性達が見惚れていたが、二人が気づくことはなかった。
「それでは、またな」
「うん、また」
大学の入り口で二人は別れ、各々自分の学ぶ校舎へと向かう。
渉は一時限目の教室へと入り、後ろの席に座る。すると後から入ってきた侑士が渉の姿に気づき、慌てたように近づいてきた。
「渉!お前イケメン持ち帰ったってマジか!?」
「ブッ!?な、はぁっ!?なんでそんな話になってんだ!?」
侑士の問いかけてきたあまりの内容に渉は吹き出し、驚愕したように声を荒げる。
「だって、昨日お前がイケメンに肩を抱かれて帰って、イケメンは昨日と同じ服でお前と一緒に登校してるらしいじゃん!?お前が持ち帰ったって噂で持ちきりだぞ!」
「んなっ!?そんなわけあるか!あいつは、昨日ふらついてた俺を助けてくれて、看病してくれてただけだよ!」
侑士が告げた言葉に顔を赤くしながら、渉は叫ぶ。教室の中は、二人の様子に聞き耳を立てる学生で溢れていた。
「あ……そっか。そういや昨日調子悪そうだったもんな」
「そうだよ……」
そう言えばそうだった。と、頷く侑士にため息を吐く渉。
「でも、なんでイケメンが看病してくれんの?」
「……最近、知り合ったんだけど何度か世話になってて……心配だからってついててくれたんだ」
「へー、イケメンなのにお人好しなんだなそいつ」
嘘という程ではないが、真実を誤魔化しつつ渉が説明すれば、侑士は納得したように頷く。
「それで、顔色は良さそうだけど眠れたのか?」
「久しぶりにめっちゃ寝た……なんだろ、人恋しかったのかな?」
「なんだなんだ、ホームシックかぁ?」
「そ、そこまではいってねぇわ!」
からかいつつも安心したように笑う侑士に、渉も普段の調子で笑いながら叫ぶ。
「ま、次同じ事があったら俺も協力してやるから声かけろよ」
「ははっ、そん時は頼むよ」
二人の普段のじゃれ合いに、周りの学生は興味をなくし、授業の準備へと取りかかる。
その後、噂を聞いたサークルやゼミの友人先輩と通話アプリのトークで同じやり取りをする事を渉は知らなかった。
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