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四章:穏やかな日常

43:講義のない午後

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「そういや、二人とも午後は?」

 お茶で喉を潤し、ペットボトルから口を離した渉は食事を続ける二人へと問いかける。

「俺は、授業とサークル。先輩に呼ばれてんだよな」
「我は、講義が午前だけだったから予定はない」

 侑士が予定有り、穂は予定無し。それを聞いた渉は、少し考えて穂へと視線を向けた。

「そっか。俺もサークルとゼミに軽く顔出す予定なんだけど、その後暇なんだよ。特に予定なかったらさ、穂どっか遊びに行かねぇ?」
「構わんぞ」

 渉からの誘いに穂は、一つ返事で頷いた。

「サンキュー」
「いいなー。俺もコマ取ってなかったら行きたかった」

 二人のやり取りを見た侑士が羨ましげな視線を二人へと向ける。

「先輩にも呼ばれてんだろ?」
「そうなんだけどぉ……はぁ……」

 渉の言葉に、しょんぼりと眉を下げた侑士が諦めたようにため息を吐いて立ち上がった。

「そろそろ時間だから行くわ。お二人さんはごゆっくり」
「ん、いってらー」
「しっかり励むのだぞ」
「はいは~い」

 食べ終えた食器を片付けに行く侑士を二人は見送り、渉は改めて穂に視線を向ける。

「穂は、どっか行きたいところある?」
「特にはないからお主に任すぞ」
「えー、マジでー?どこにしようかなー」

 遊びに行く場所について呟きながら悩みだす渉。それを微笑ましげに一瞥すると穂は昼食のきつねうどんへと手をつけた。

「ゲーセンもいいけど前侑士に連れられて三人で行ったし、カラオケは……バイト先に行くのちょっと恥ずい……、映画……映画とかよくね?」
「……何か見たいのがあるのか?」

 呟いていた渉がはたと、思いついたように目を輝かせて穂へと提案し、穂は咀嚼していたうどんを飲み込んで尋ねる。

「あー……話題の洋物ホラー映画があるんだけどさ。ほら、俺ってあれじゃん?一人で見るの不安だったから保留にしてたけど、穂となら安心して見れるかなって……」

 少し申し訳なさそうに視線を逸らしながらも、ポツポツと呟く渉に穂はニヤリとした笑みを浮かべた。

「なるほど、我を護り代わりにしたいと」
「……駄目?」
「……まあ、よかろう。人の子の作る架空の恐怖映像を見るのもまた一興というやつだ」

 捨てられた子犬のようにしょんぼりと穂の様子を伺う渉に、穂は仕方ないなというような笑みを浮かべて頷く。

「サンキュー穂!じゃ、ちょっとサークルとゼミに顔出してくる!終わったら連絡するから!」
「ああ、行ってこい。それまでは図書館ででも時間を潰しておくさ」
「わかった!」

 渉は立ち上がると食べ終えたどんぶりの乗ったトレイを持ち、穂に見送られながら席を離れるとトレイを返却口へと返した。
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