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四章:穏やかな日常

44:キャンプサークルの先輩たち

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 足取り軽く学食を後にし、その足で向かうのはサークルの部室。

「失礼しまーす」
「お、渉か」

 サークルの部室の扉を開ければ、そこにいたのは一人の男子学生だった。渉より三つ上の四年生であり、このキャンプサークルの代表である。

「森先輩と……保田先輩だけですか?」

 渉が部室を見回せば、もう一人女子学生がいるのを見つけた。彼女は、渉の二つ上の三年生。意欲的にサークル活動に励んでいるから時期サークル代表と言われている女性だった。

「まぁな」
「まだ、ほとんどの子は午後の講義も残ってるしこんなものよ。稲鍵君はどうしたの?」
「ちょっと顔出しに来たのと、友人が夏休みのキャンプ参加したいって言ってたんでその報告に……」

 保田に問われた渉は、正直に答えるとその返答に保田の目の色が変わる。

「まさか、噂のイケメン君かしら⁉」
「あ、いえ……そっちじゃなくて、侑士……もう一人の方です」

 保田の勢いに押されながらも、参加希望者が穂ではなく、侑士である事を渉が伝えると保田は肩を落とした。

「ああ、いつもの子の方ね。……イケメン君は来ないの?」
「あー……そっちは、まだ予定が合うかわからないらしくて……」
「そう……でも、予定があったら大歓迎だから!」
「ははっ……」

 まだ諦めたわけではなさそうな保田の様子に渉が苦笑する。

「おいおい、あまり渉を困らせてやるなって」
「仕方ないじゃないですか!あんなイケメンとキャンプできるなんてチャンス滅多にないんですから!」

 森が呆れながらも保田を注意すると、保田はこぶしを握りしめて森へと視線を向けた。

「遠目から見かけた事はありますけど、あれはもう国宝レベルの顔ですよ!近づく事も恐れ多いというか……でも、間近で見て見たいじゃないですか!」
「あー、あー……わかった。わかったから。渉がドン引いてるぞ」
「あ、あら……うふふふふふふ……」
(誤魔化してもすでに遅いんですよ保田先輩……)

 キャンプ女子と言った溌剌とした女性ではあるが、イケメン好きという保田の知らなかった一面を知り、渉は乾いた笑いを浮かべる。

「じゃ、じゃあ……今日はこれで」
「ああ、知らせてくれてありがとう」
「くれぐれも、くれぐれもイケメン君によろしくね!」
「保田……」
「ま、まあ……伝えときます……」

 最後まで圧の強い保田に押されながらも部室を後にした渉は、次の目的地であるゼミへと向かうのだった。
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