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第一部:本編

70:四層

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 三層も順調に攻略が進み、今日野営予定の四層へとたどり着いた。

「んー、宝探ししながらだったけど、早く着いたな」

 宝探しをしながらの進行だったが、それでもヘルトさんの予想より早く到着したらしい。

 まあ、宝箱のある未発見の隠し部屋が見つからなかったのもあるんだけど。

 隠し部屋だったらしい小部屋はあるんだけど、三層もまだまだ人が多いから競争率が激しいのだろう。

 ダンジョンの階層の目安的に、二層までが初心者、五層までが初級、十層までが中級、十五層までが上級で、十六層からは特級。存在するかわからない二十一層からは階級が決められない未知の領域らしい。

 その為、宝箱の存在する隠し部屋が見つかる事が多いのが、上級冒険者が活動する十五層以降。

 ヘルトさんが普段潜っていたのは、ソロなのも考慮して十四層から十六層辺りまでだったと聞いているけど……それでも、未発見の宝箱の数は、十四層と十五層でずいぶんと変わるそうだ。

 だから、今の浅い階層では隠し部屋を見つける事は本当に稀でしかないのだと思う。

 なかなか世知辛いものだけど、浅い階層でも一括千金がありえる世界だから冒険者に憧れる人が多いのも納得の理由だった。

「宝箱見つからなかったですもんねぇ……」
「なにいってるんだ? エルツがモンスターを纏めて処理できるようになったのが大きいんだぞ」
「へっ?」

 隠し部屋を見つけられなかった事を残念に思って言葉にしたら、予想していなかった言葉が飛んでくる。

「前までは、接敵するまで警戒したり、エルツが安定して倒せる数を残していたりしただろう? だけど、今は曲がり角で鉢合わせない限りはエルツの魔法で倒せる。その分進む速度が上がったんだ」

 ヘルトさんの言葉に目から鱗が落ちる。そう言われるとそうなのかもしれない。

「……僕、役に立ってますか?」
「おう! めちゃくちゃ働いてくれてるぜ! でも、無理はすんな。その為に俺が居るんだからな」

 ヘルトさんを見上げれば、そう言ってわしゃわしゃと頭を撫でてくれる。

 そっか。十分に役に立てているのか。

 初めて群れを一人で倒せた時も嬉しかったが、こうして攻略速度にも影響が出てくると役に立てているという実感が大きい。

「時間に余裕もあるし、今日はゆっくり休もう。明日には帰るが……お前が野営に慣れたらもっと深く潜れるようになるのは早いぞ」
「頑張ります!」

 今は、僕の実践も兼ねているのでヘルトさんの探索のレベルは、グッと下がっている状態だ。

 少しでも早くダンジョン産の魔導義手を手に入れたいだろうに足止めしているのが申し訳ない。

 だから、早くダンジョンで野営する事に慣れて、より深く潜れるようになりたかった。
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