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第一部:本編
84:名前
しおりを挟む「ま、待って! 止めて止めて! その人は仲間だから! 僕のご主人様でもある人だから攻撃しちゃ駄目!」
「さようでしたか。申し訳ありません」
僕の制止に魔導人形は腕を降ろし、剣を引っ込める。
あ、危なかった……。あれヘルトさんだから避けられたけど、僕だったら無理だよ。
「男の方は、近接物理か。そっちの女の方はどっちなんだ? 近接か? 遠距離か?」
そして、攻撃されたヘルトさんだけど、魔導人形の攻撃タイプの方が気になっているようだった。
「答える義務はありません」
ヘルトさんの質問に素っ気なく返す女の子に僕の方が焦ってしまう。僕は、借りるって条件でこの子達に魔力を流したのだから。
「待って! さっきも言ったでしょ? ヘルトさんは、僕の主人で師匠なの! 本来だったら君達の主はヘルトさん! だから、僕と同じくらいか、優先して言う事を聞いて欲しい!」
「マスター以上に優先する事はできませんが……」
「そうおっしゃるのでしたら、ほぼ同等程度に命令をお聞きいたします」
承諾してくれた魔導人形達の言葉にホッと一息つく。これで、駄目だったら申し訳なさ過ぎた。できれば、僕よりヘルトさんを優先してほしいが、彼らにも彼らの基準があるからこれができる限りの譲歩なのだろう。
「それでタイプはどっちなんだ?」
「遠距離物理です。このように」
改めて問いかけたヘルトさんの言葉に女の子が離れた壁に手を伸ばし……――ドシュッ! と、いう音とともにその手のひらから矢が飛び出した。
「仕込み矢か……なかなか威力も強いしいいな。そういや、魔法は使えるのか?」
「可能かどうかでいえば可能です。ですが動力となる魔力を使用するので稼働時間が減ります」
「また、人間のように自身での応用魔法は使えませんので魔法型としての運用の場合、予めどのような魔法を使用するか教えていただく必要があります」
「ってことは、学習も可能と」
「「はい」」
ヘルトさんは、興味が尽きないのか新たな質問を尋ね、魔導人形達が答えていく。
見かけは、子供の質問に答える冒険者の図なんだけど……二体、ううん……二人ともモンスターなんだよね。
質問の答えを僕も興味深く聞いていたのだけど、ふとヘルトさんが僕に視線を向けてきた。
「エルツ。二人の名前決めたか?」
「え、あ……すみません、今考えます」
そういえば、名前決めなきゃ。でも、どうしよう……。
二人の外見を改めて見る。
男の子の方は金色の髪が綺麗で活発な雰囲気。
女の子の方は銀色の髪が綺麗で可愛らしい。
双子みたいな容姿でもあるし……なんか対になるような名前がいいのかな?
うーん……金と銀かぁ……。
ヘルトさんと二人が様子を見てくる中、しばらく悩みぬき口を開く。
「男の子の方がソル。女の子の方がルナでどうかな?」
他の国の言葉で太陽の意味を持つソルと月の意味を持つルナ。二人の綺麗な髪色にピッタリだと思ったのだ。
「「マスターから名付けていただけるのならどのような名前でも構いません」」
「いいんじゃねぇか。呼びやすいし」
ソルとルナからも承諾を得られ、ヘルトさんにも頷いて貰えたのでこれで良しとする。
「よろしくね。ソル、ルナ」
予期せず所有者になったけど、主になったのだからヘルトさんのようにより良い主人になれるように頑張ろうと思う。
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