転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん

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28 レーベン王国との会合 その弐

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 一際輝く銀髪に美しい紫の瞳。……美しい、少女。
 
 ……そして、レーベン王国の3人が探し求める女性。


「セリーナッ!」
「セリーナ嬢!」

 クリストフとハインツが思わず叫び、駆け寄ろうとしたのだが……。


「ッ!? なんだ、身体が……!?」

「動けぬ……!」


 3人は身動き出来ず、外務大臣は驚いて教皇を見た。


「やれやれ……。先程あれほど申しましたのに、困った御仁たちじゃのう。……孫娘には、指一本触れさせませぬぞ」

 教皇は最後、3人を睨みつけるようにして言った。

「何を……! 彼女は貴方の孫娘などではない! 彼女こそ私達が探し求める『セリーナ』嬢だ!」

 王子は顔だけを必死に教皇に向けてそう叫んだ。
 教皇に向かってそう叫ぶものの、この魔法は明らかに目の前の少女からかけられている。

「……そんな……! 我が国の王子とラングレー殿に魔法を掛けるとは……! セリーナ様は、まっこと『偉大なる魔法使い』……!」

 外務大臣はそう呟いた後、教皇に向かって言った。

「セリーナ様は、我らに……我がレーベン王国に必要なお方!! 何が何でも返していただきますぞ!」

「本当に、誰も彼も人の話を聞かぬのう……。『セリ』は私の可愛い孫娘。手出しする者は、世界の教会を敵に回すとお心得いただきたい!」

 教皇がそう言い、その聖なる魔力を膨らませるとすぐに部屋に聖騎士達が入って来た。
 『孫娘』の横には赤髪の騎士が守るように前に出ていて全く隙がない。

 
 一触即発の雰囲気になったのだが……。


「教皇さま? 大丈夫ですよ、だってこの3人は拘束してるので何も出来ませんもの」


 『教皇の孫娘セリ』がそう言うと、教皇はすぐさま表情を緩めこう返した。

「『お祖父様』と呼びなさいと言うたのに。……あぁ、まあなんと呼んでも可愛いのには変わらんがの」

 そう言ってデレる教皇。

「もう! 教皇さまったら!」

 プイっと拗ねたようにしつつ照れている『孫娘』。




 ……なんだ? 何を見せられている?

 動けない3人はただ呆然と教皇と『孫娘』の掛け合いを見ていた。


 ハインツはジッと教皇の『孫娘』を見詰める。

……セリーナは、こんな風に笑う娘だっただろうか? こんなに自然に、拗ねたり甘えたりしている所を、私は見た事があっただろうか?


 そんな風に見詰める3人を、不意に『孫娘』が振り向いてジッと見た。

 ……澄んだ、紫の瞳。

 3人はドクリとまるで心臓を掴まれたような気持ちになった。

 そしてそれに気付いた赤髪の騎士が孫娘を庇って後ろにやり彼らを睨んだ。


 そこで教皇は分かりやすく大きくため息を吐いた。

「…………とにかく、私の可愛い孫娘に手を出そうとするのなら、さっさとここから出て行ってもらいましょうぞ。……そして今後、一切孫娘に手を出す事は許しませぬ。孫娘に手を出すという事はこの私を、そして世界中の教会即ち世界の国々を敵に回す事だとそう肝に銘じておかれる事ですな」


 教皇はそう強く念を押した。

 
 3人は失意のまま、聖騎士と赤髪の男に連れられて部屋を出て行ったのだった。


 ◇


「……あんな強気で言っちゃって、大丈夫なのですか? 一応レーベン王国の王子と有力貴族達ですよ?」

 皆が出て行き、2人になってからセリは教皇に問いかけた。

 教皇様もこの世界のトップ。流石に先程のレーベン王国の外務大以上の魔力は持っているのは分かる。自分とライナーを抜きにしても聖騎士達と合わせてあの3人といい勝負かしら。
 ハインツ兄様はお父様程魔力は高くないし、クリストフ殿下も母である王妃様は陛下と『真実の愛』とやらで結ばれた元男爵家令嬢で、王子もそれ程魔力は高くないとよくお母様が話してらしたものね。

 レーベン王国内の噂は話好きの母から聞いてだいたいは知っている、相変わらず耳年増なセリだった。


「ふふ。可愛い孫娘の為ならば普段出さない力も出せるものなのですよ。魔力も権力も、大切な者を守る為にあるのですからな!」

 そう言ってウィンクして見せる教皇に、セリは微笑んだ。

「教皇さま。……本当にありがとうございます。私、ずっとレーベン王国から隠れて暮らさなきゃいけないって考えてました。……でも、それじゃダメなんですよね。力は、大切な人達の為に使わないと、ですね!」


 少し泣き笑いで言ったセリを、教皇は眩しそうに見つめた。

「そうですぞ。セリ様にはその力も勇気もお有りになる。きっと良い方向に進む事が出来るでしょう。私も及ばずながら力になりますぞ」

「教皇さま! 私のことも「セリ」って呼んでくださいって言ったのに!」

「……む。それではセリ様も『お祖父様』と呼んでくださらねば!」

「え、でもそれは不敬じゃないですか?」

「では私もずっと『セリ様』ですぞ!」

「えええーー!?」


 2人の掛け合いは続いたのだった……。



 

 
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