玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第4章 エルセニム国のおてんば姫

第4章第011話 ダーコラ国到着

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第4章第011話 ダーコラ国到着

・Side:ツキシマ・レイコ

 ダーコラ国へ向かうローザリンテ殿下を乗せてエイゼル市の港から出発して、進み続ける船上で一泊した後、ダーコラ国の港町に着きました。ここはバトゥーというダーコラ国最大の港町で、ここから王都ダーコラには一泊の距離だそうです。
 ただ、エイゼルの街と比べると、街の規模はだいぶ小さく見えますね。国一番の貿易港なら、もっと栄えていそうなものですが。規模はエイゼル市のせいぜい二割くらいといったところでしょうか。

 当然、今回の艦隊が入れるような規模の港も桟橋も無く。沖合に七隻縦列、クイーン・ローザリンテ号の盾となり、同時に町を威圧する感じで、碇を降ろして並んでいます。
 ダーコラ国が持つ最大の帆船は、今回のネイルコード国の帆船と同じくらいですが、たった一隻しかなく。あとは半分以下の大きさの船がいくつかと言う程度だそうです。ここまで差があると、完全に砲艦外交ですね。砲は無いですが。

 カッターを降ろして、ネイルコード国の使者が街に向かい、無理矢理上陸許可を取ってきました。
 最初は先方もごねていたようですが。ダーコラ国の王族でもあるローザリンテ殿下を待たせるのか?と、かなり高圧的に恫喝したようですね。
 とはいえ、まずはローザリンテ殿下には船に残っていただいて。ネタリア外相とアイズン伯爵に私とマーリアちゃん、あと護衛の兵士で、港が見える宿を一軒借し切りで押さえ、街に来ているという外交官とそこで会うことになりました。

 「船で王妃とその護衛が来るとは聞いていたが、最大級の軍船八隻でくるとは思わなかった」

 街に来ていたダーコラ国の外交担当官の弁です。

 まぁ、ローザリンテ殿下とその護衛を運ぶにしても八隻は多いと思いますし。まさか大型船に兵士を満載で来るとは思わなかったのでしょう。その気になれば街を簡単に制圧できる戦力です。
 外交官は、マーリアちゃんと私をローザリンテ殿下が連れてきた程度の話しか知らされていなかったようですが。ネイルコード国が本気で腹を立てている事くらいは、これで伝わるでしょう。

 さて。これからローザリンテ殿下の上陸の準備を整える必要があります。
 どうするかと言えば、どこか陸上に拠点を設営して殿下の周囲を蟻も漏らさずネイルコード国側の兵士で囲むことになりますが。まずはその場所の確保が先決です。

 件の外交官と街の領主を宿に呼び出し、港町バトゥーの郊外にある平地を使う許可を無理矢理取りました。嫁いでいるとはいえダーコラ国の王族でもあるローザリンテ殿下をいつまでも船上で待たせておくのは無礼ですからね。場所代は払いますよ、それとも無理矢理がいいですか?…てなもんです。
 遅まきながら、宿の警備に領の兵をを出すなんて言われましたが。刺客を送り込んだ国を信用するわけないと突っぱねました。マーリアちゃんがなんでネイルコード国にいたのか、その辺の事情も知らされていないようです。

 租借した平地は、丁度河沿いにあります。先発隊がそこを整地をして、カッターで六六のパーツをピストン輸送して、その日のうちにローザリンテ殿下の宿舎を含む拠点を作ってしまいました。ネイルコード国軍にも工兵科みたいな部隊があるそうで、彼らの練度がぱないです。
 城壁とまでは行きませんが周囲には杭に固定された柵が張り巡らされ。見張りにつかう櫓も要所に配置されています。立派な陣地ですね。

 次の日ローザリンテ殿下は、陸地は通らずに直接カッターで河を登って拠点に上陸し。ダーコラ国の王都からの連絡を待つことになりました。



 ローザリンテ殿下が上陸した次の日、ダーコラ国の王都からこの国の外相がやってきました。王都まで一泊と聞いていましたので、結構な強行軍だったようですね。
 おおっと、オルモック将軍が一緒です。交渉担当の外相さんは、ハルバニ・オーラン伯爵と仰るそうです。…なんかお二人とも疲れた顔をされています。なにか甘い物でも食べます?

 会談には、ローザリンテ殿下が自ら対峙されます。
 ちなみに、殿下以外でこの拠点で一番上位の人はラコール・ジスキー王国護衛騎士隊長。王城と王族の警備の責任者ですね。騎士ですが子爵の爵位を持っているそうです。騎士伯という爵位と騎士という職は別って事ですね。
 今回の会談には、ネタリア外相にアイズン伯爵も会談に同席しています。ダンテ隊長にエカテリンさんもアイズン伯爵の後ろについてますね。

 「いきなり大型軍艦八隻で乗り付けて、郊外の一角を占拠するとは何事です?! しかもネイルコードとの国境への再派兵! ネイルコードは我が国に戦争を吹っかけるおつもりか?」

 向こうのハルバニ外相が唾飛ばしていますね。

 「こちらからの抗議はすでに伝えてあるはずですし、ローザリンテ殿下が直接詰問に訪問するという連絡も来ているはずですが。一国の王妃の訪問です、我が国も護衛もそれなりに付けただけの話です。それなのに、この街に着いてもダーコラ国側の準備が外交官一人だけというのは、どういう事ですかな? しかも、ずいぶんとそちらに都合の良い状況しか知らされていなかったようですが」

 ネタリア外相が逆に責めます。

 「…抗議とは?」

 オルモック将軍は知らされていないようですね。

 「ダーコラ国の宰相が、ここにいるマーリア姫にレイコ殿を連れてこいと指示されたそうです」

 「マーリア姫?」

 「マーリア・エルセニム・ハイザート姫殿下。正教国に人質として連れて行かれたエルセニム国の王女ですな」

 人質ってところで眉をひそめるオルモック将軍。

 「…連れてこいってのは、説得しろとかそういう意味では無いですよね?」

 「ザッカル宰相に、レイコを"五体満足である必要はないが、なるべく生かして連れてこい"と言われました。私とこの子だけで」

 マーリアちゃん当人の証言です。なるべくってなんですか?
 後ろにセレブロも控えていますよ。ダーコラ国勢に睨みをきかせています。
 頭を抱えるオルモック将軍です…

 「その気になれば一軍を瞬時に壊滅させられるレイコ殿をこの国に連れてきて、いったいどうするつもりなんだ? あの馬…宰相は。しかも、エルセニム国とはただでさえ緊張状態なのに、その国の姫を単身でネイルコード国に刺客として送った?」

 今、馬鹿と言いかけた。流石に、同僚の前で言うわけにはいかないのでしょうが。
 ただ、ハルバニ外相も似たような感想なのか、苦虫咬んだような顔で何も言わないです。

 「はぁ。レイコ様の話は、良く伺っております。…本当にレイコ様に王宮までお越ししただいたら、すぐに諸々解決しそうですね」

 とハルバニ外相さん、ちょっとヤケになっています。

 「ザッカル宰相が、我が国に地球大使として駐在中の赤竜神の巫女様に刺客を送ってきた。それをネイルコード国側の捏造と言い放ち、恥知らずにも二人の引き渡しを求めてきた。先年末の国境での紛争もですが、ダーコラ国はどれだけネイルコード国を馬鹿にすれば気が済むので?」

 ローザリンテ様がおこです。

 「お怒りごもっともです」

 頭を下げるハルバニ外相とオルモック将軍。
 二人とも、本件がネイルコード国の捏造とかはまったく疑っていないようです。どれだけ信用が無いんですか?この国の宰相は。

 「というわけで。ダーコラ国国王アルマート・ダーコラ・セーメイ陛下に、本件についてどう対処されるつもりなのか。ネイルコード国王妃ローザリンテ・バルト・ネイルコードが、ローザリンテ・セーメイとして直に問いただすために、今ここまで赴いたというわけです。なぁなぁな対応で逃れられるとは思わないでいただきたいですわね」

 ローザリンテ殿下がダーコラ国の王家の血筋であるのは紛れの無い事実。ネイルコード国がダーコラ国に口を出す大義名分としては十分でしょう…とのことです。

 「叩き台として、ネイルコード国からの要求をまとめてありますので、どうぞ」

 ネイルコード国国王の玉璽が押された羊皮紙が渡されます。

 「ネイルコード国への謝罪。今回の件に関わった人間の処罰。国王は引責退位。ネイルコード国からの優先的食料輸入条約。奴隷制度の廃止…また無茶な…」

 「あくまでたたき台ですわ。ただ、私共もいいかげんケリを付けたいと考えておりますの。要求を飲むのか、全てを失うのか。よくよくご検討くださいな」

 うーん。これでは宣戦布告文書と同じでは無いか?とも思いましたが。まぁダーコラ国がエルセニム国にやっていることよりはずっとマシです。
 ハルバニ外相とオルモック将軍、本件を一度王都に持ち替えることになりました。三日以内に再度連絡を寄越すとのことです。王都との距離を考えると、また強行軍ですね。ほんとご苦労さまです。

 「…オルモック将軍、気をつけてくださいね」

 久しぶりに会うオルモック将軍に話しかけます。
 このことで国王は激怒するでしょうが。現実的にダーコラ国が打てる手は限られています。
 ローザリンテ殿下がすでに来てしまっている以上、放置しても良いことはありませんが。オルモック将軍はおそらく、国王と宰相に諫言することになるでしょうし。ただその場合、オルモック将軍が無事で済むか…
 今日初めて会いましたが、ハルバニ外相の方も比較的まともな人に見えるだけに、正論で王や宰相に疎まれないか、ちょっと心配です。

 「…お気遣いありがとうございます」

 なにか覚悟を決めたような将軍です。それをみたローザリンテ殿下が、オルモック将軍に声をかけます。

 「…これは独り言ですが。私は別に生れた国の消滅を望んでいるわけではありません。まともな国家運営をしてほしい…それが出来る人に王座に付いて欲しいと願っているだけです」

 「…」

 もしかしてクーデターの勧めですか? 二人は答えられません。そりゃそうです。

 「あと。もしお二人の縁者に危機が迫るようなら、この拠点に寄越しなさい。私が保護いたしましょう」

 了承もお礼も口にはせず、頭を下げるだけのハルバニ外相とオルモック将軍でした。

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