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最期と彼女
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チリリリリ、チリリリリ、
まだ起きてないのかと笑っているアラームに睡眠を邪魔された。元々自分で設定したのだから、文句を言える筋合いはない。それでも、起きたくなかったことは事実なのだから、文句の一つも言わずにはいられない。
いつまでも存在を主張してくるスマホのアラームにとうとう嫌気がさし、一回画面をタッチして画面下側にあるボタンを押して止めた。
アラームが鳴ったということは今は多分6時20分。本当は6時30分でもよかったのだが、なぜかいつも10分ほど時間を早めてしまう。普段から余裕を持って時間設定しているのに、その時間設定ですら不安になってしまうのだ。
6時20分に起きる。でも予定はない。毎日早起きしているものの毎日予定はない。でも単にニートをしているわけではない。僕には目標がある。
僕は目標のためにストレッチをしたあと、ジョギングに出かけた。
もう一度確認しておく。ニートではない。目標はある。しかし、人生を楽しく行きたいとは思っていない。このジョギングは目標において大切なことだからやっているだけだ。やる必要なければ絶対にしない。元々運動はあんまり得意ではない。体力はなるべく使いたくないし、汗をかくのも嫌だ。仕方ないからやっているに過ぎない。
僕は目標を達成して早々と僕を終わらせたいと思っている。
朝のジョギングを済ませ、シャワーを浴びて少しゆっくりする。朝のジョギングでは、目標を達成することが出来なかった。
こうして2年が過ぎた。
そして、その時はやってきた。
その頃、僕は朝のジョギングでは目標は達成できないと思い、夜に変更していた。
夜のジョギング中、住宅街を流れる川沿いを走っている時だった。
向こうから相当なスピードで走ってくる女の人であろう姿がある。僕はいつものように進路が被らないように軽く避け、通り過ぎようとする。でも、その女の人は僕に向かって走ってくる。
・・・気づいたら腹部を刺されていた。
あっ、痛いかも。痛い?っというか驚愕?とにかくびっくりした。あっ、やっぱり、痛いかも。
「ごめんね」
小さく呟くその声は、やはり女の人だった。
それは痛いよね。だってお腹には刃物が・・・、異物が刺さっている箇所を触ると滑りとした感触。
あっ、うゎ、あ、い、あ、うぁ、ぅぅぅぅぅぅ
意識した途端、激痛がほとばしった。世界にはこんな痛みがあるのかというほどの痛み。立つことに耐えられず思わずうずくまる。
ぁあああぁぁぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁ
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「悪いとは思ってる。ごめん。ごめんね。」
まだその場にいた女の人からの最後の言葉だった。言葉を残した彼女は静かに暗闇に消えていった。
死ぬことはこんなにも辛いことだったのか。もっと、もっと簡単なことだと思っていた。生から死へは国境くらいに明確で飛び越えて仕舞えばすぐだと思っていた。しかし、実際は生と死の間には生と死を混ぜたグラーデーションの部分があった。そんなことは考えればすぐにわかることだ。刺されれば痛いし、病気になれば辛い。死ぬことが簡単なんて、有りえないはずだ。でも、僕は死を望むあまり、死を美化し過ぎた。死ねば楽になる。死ぬことが最善であり、最高の手段だと。なのにもかかわらず、自分からは死ねず、他人から殺されるのを待っていた。もちろん、自殺は親が悲しむから、死ぬなら殺される方がいいと建前では思っていた。でも、それは多分嘘で単純に怖かったのだと思う。
ここに来て、目標にしていた他人に殺されることがかなった。それが本当にこの世の終わりであると初めて自覚した。
そうか、生きることって死ぬことに比べればなんてことないことだったんだ。
目を閉じたとき、僕を刺した彼女が浮かんだ。
まだ起きてないのかと笑っているアラームに睡眠を邪魔された。元々自分で設定したのだから、文句を言える筋合いはない。それでも、起きたくなかったことは事実なのだから、文句の一つも言わずにはいられない。
いつまでも存在を主張してくるスマホのアラームにとうとう嫌気がさし、一回画面をタッチして画面下側にあるボタンを押して止めた。
アラームが鳴ったということは今は多分6時20分。本当は6時30分でもよかったのだが、なぜかいつも10分ほど時間を早めてしまう。普段から余裕を持って時間設定しているのに、その時間設定ですら不安になってしまうのだ。
6時20分に起きる。でも予定はない。毎日早起きしているものの毎日予定はない。でも単にニートをしているわけではない。僕には目標がある。
僕は目標のためにストレッチをしたあと、ジョギングに出かけた。
もう一度確認しておく。ニートではない。目標はある。しかし、人生を楽しく行きたいとは思っていない。このジョギングは目標において大切なことだからやっているだけだ。やる必要なければ絶対にしない。元々運動はあんまり得意ではない。体力はなるべく使いたくないし、汗をかくのも嫌だ。仕方ないからやっているに過ぎない。
僕は目標を達成して早々と僕を終わらせたいと思っている。
朝のジョギングを済ませ、シャワーを浴びて少しゆっくりする。朝のジョギングでは、目標を達成することが出来なかった。
こうして2年が過ぎた。
そして、その時はやってきた。
その頃、僕は朝のジョギングでは目標は達成できないと思い、夜に変更していた。
夜のジョギング中、住宅街を流れる川沿いを走っている時だった。
向こうから相当なスピードで走ってくる女の人であろう姿がある。僕はいつものように進路が被らないように軽く避け、通り過ぎようとする。でも、その女の人は僕に向かって走ってくる。
・・・気づいたら腹部を刺されていた。
あっ、痛いかも。痛い?っというか驚愕?とにかくびっくりした。あっ、やっぱり、痛いかも。
「ごめんね」
小さく呟くその声は、やはり女の人だった。
それは痛いよね。だってお腹には刃物が・・・、異物が刺さっている箇所を触ると滑りとした感触。
あっ、うゎ、あ、い、あ、うぁ、ぅぅぅぅぅぅ
意識した途端、激痛がほとばしった。世界にはこんな痛みがあるのかというほどの痛み。立つことに耐えられず思わずうずくまる。
ぁあああぁぁぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁ
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「悪いとは思ってる。ごめん。ごめんね。」
まだその場にいた女の人からの最後の言葉だった。言葉を残した彼女は静かに暗闇に消えていった。
死ぬことはこんなにも辛いことだったのか。もっと、もっと簡単なことだと思っていた。生から死へは国境くらいに明確で飛び越えて仕舞えばすぐだと思っていた。しかし、実際は生と死の間には生と死を混ぜたグラーデーションの部分があった。そんなことは考えればすぐにわかることだ。刺されれば痛いし、病気になれば辛い。死ぬことが簡単なんて、有りえないはずだ。でも、僕は死を望むあまり、死を美化し過ぎた。死ねば楽になる。死ぬことが最善であり、最高の手段だと。なのにもかかわらず、自分からは死ねず、他人から殺されるのを待っていた。もちろん、自殺は親が悲しむから、死ぬなら殺される方がいいと建前では思っていた。でも、それは多分嘘で単純に怖かったのだと思う。
ここに来て、目標にしていた他人に殺されることがかなった。それが本当にこの世の終わりであると初めて自覚した。
そうか、生きることって死ぬことに比べればなんてことないことだったんだ。
目を閉じたとき、僕を刺した彼女が浮かんだ。
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