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一章
熱い視線、熱い人混み
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ガタ、ゴト、ガト、ゴト
電車に揺られて約40分。目的地を知らされていなかった僕がたどり着いたのは遊園地だった。夏休みのはじまりである今日は土曜日で多くの人で賑わっていた。夏休みと言うだけあって休みなのだから休まなくてどうするのだろうか。
「人多くない?」
普段あまり外に出かけない僕は人の多さにあてられていた。
「そこがまたいいんだよ」
わけのわからないことを言いだす小香花。人が多いとどこもかしこも列だらけになるし、歩きにくいし、嫌なことしかないんだけど。
「っていうかなんで遊園地?」
「行きなかったからに決まってるじゃん!」
行き当たりばったりで自由奔放もいいところだった。ずらりと並ぶ入場の列の一部に紛れ、前に前に少しずつ進む。
「遊園地とか人が多いところは別れるカップルが多いって知ってた?」
こんなところに連れてこられた僕は嫌味っぽくデンジャーなことを聞いた。
「私と日南汰は夫婦みたいなもんでしょ?」
「・・・」
「っていうか日南汰がなんだかんだでカップルだと思っていることが驚きだよ」
「確かに」
それは僕にも驚きだ。告白を断って以来、変な関係を続いていたからか今どんな距離感なのかがさっぱりだ。あの後僕から告白したのだから恋人どうしなのは間違えないのだけど、今までとはなんの変わりもない。
「恋人どうしなんだし、もうちょっとなんかないのか~~?!」
「ない」
「寂しいな~~もう」
いつものようにくだらない会話をする。怒ることもないし、嫌になることもない。そんなちょうどいい距離感。今はまだこんな関係でもいいのかもしれないな。
心の中でそう思った。
小香花に連れられたくさんのアトラクションを巡り、気づけば人の数はだいぶ減ってきていた。空は疲れた表情をしており、きた時とは随分違う暖色がかった色味をしている。
「そろそろ帰ろうか」
空の暗さ加減に頃合いと決め、帰ることを提案する。
「まだ乗りたいんだけどな~~」
「同じのに何回も乗ったじゃないか」
「何回乗っても面白いんだよっ」
「帰るのにも時間かかるしここらで潮時じゃないか?」
「ん~~」
まだ遊び足りないと言った様子でうなだれている。
「じゃあまたデートしてくれるなら許してあげよう」
「・・・わかったよ」
デートか。
「じゃあ行こうか」
「うん。約束だかんね」
「わかったよ」
僕が一足先に歩き、それに追いつこうと後ろから小走りしてくる小香花。背後から僕の手をそっと握り並んだ。僕はその手が心地よくて拒むことをしなかった。
繋いだ小香花の手は冷たいような気がした。
電車に揺られて約40分。目的地を知らされていなかった僕がたどり着いたのは遊園地だった。夏休みのはじまりである今日は土曜日で多くの人で賑わっていた。夏休みと言うだけあって休みなのだから休まなくてどうするのだろうか。
「人多くない?」
普段あまり外に出かけない僕は人の多さにあてられていた。
「そこがまたいいんだよ」
わけのわからないことを言いだす小香花。人が多いとどこもかしこも列だらけになるし、歩きにくいし、嫌なことしかないんだけど。
「っていうかなんで遊園地?」
「行きなかったからに決まってるじゃん!」
行き当たりばったりで自由奔放もいいところだった。ずらりと並ぶ入場の列の一部に紛れ、前に前に少しずつ進む。
「遊園地とか人が多いところは別れるカップルが多いって知ってた?」
こんなところに連れてこられた僕は嫌味っぽくデンジャーなことを聞いた。
「私と日南汰は夫婦みたいなもんでしょ?」
「・・・」
「っていうか日南汰がなんだかんだでカップルだと思っていることが驚きだよ」
「確かに」
それは僕にも驚きだ。告白を断って以来、変な関係を続いていたからか今どんな距離感なのかがさっぱりだ。あの後僕から告白したのだから恋人どうしなのは間違えないのだけど、今までとはなんの変わりもない。
「恋人どうしなんだし、もうちょっとなんかないのか~~?!」
「ない」
「寂しいな~~もう」
いつものようにくだらない会話をする。怒ることもないし、嫌になることもない。そんなちょうどいい距離感。今はまだこんな関係でもいいのかもしれないな。
心の中でそう思った。
小香花に連れられたくさんのアトラクションを巡り、気づけば人の数はだいぶ減ってきていた。空は疲れた表情をしており、きた時とは随分違う暖色がかった色味をしている。
「そろそろ帰ろうか」
空の暗さ加減に頃合いと決め、帰ることを提案する。
「まだ乗りたいんだけどな~~」
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「ん~~」
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「わかったよ」
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