暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

暑い陽射しと冷たいプール

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 夏休み中盤。早くも半分が過ぎた夏休み、まだ半分も残っている夏休み。この後に及んで宿題を明日やろう明日やろうとか言っているやつは確実に後者の心持ちでいることだろう。

 そんな夏休みだが、夏休みといえばらしくなく休みといえば当たり前の過ごし方である家でグータラを炸裂させていた。

 たまにかかってくる小香花からの電話を軽くあしらいながら日々を過ごす。

 珍しく今日は適当にあしらえなかった事案であるプールに行くというイベントを控えていた。

「今日は今年最大の猛暑日となるため、熱中症には充分に注意してください。こまめに水分を取ることを心がけましょう。」

 毎日のように暑い、暑いと繰り返すニュースを見終わると僕は待ち合わせの場所へと向かった。

「おっは~」

「おはよう」

「元気ないな~~。プールだよプール」

「あの人の蒸しサウナでしょ?」

「なにそれ~~面白い~~」

「それはどうも」

 いつもの通り気乗りしていない、しょぼくれた背をしながら人混みへと向かった。

「お待たせ~~待った~~?」

 一度着替えるため別行動となっていた僕たちは、着替えをおえて再集合した。

 目の前の小香花はいつもの天真爛漫さに発破をかけるような格好だった。フリースのついた水色の水着。子供っぽいかと言われればそうではなく、色のコントラストとデザインによってカバーされていた。上に一枚羽織っているから全体のシルエットはわからないけどとても可愛かった。

「待ったね」

「待ったのか!?それよりどうよ~~か・わ・い・い?」

 答えは1つしかないよねと言わんばかりのあざと可愛いさ。

「ちょーかわいーです」

 ただひたすらに自我を保とうとする。本当に可愛いから反応に困る。

「そうか、そうか。それなら良い」

「いいんですか」

「レッツゴーだよ」

 楽しそうにはしゃぐ彼女に引っ張られて、灼熱の大地へと足を踏み出した。

 さすがは夏休みのプール。大盛況といわんばかりの人の数だ。たくさんの人が視界を横切る。わーきゃー言ってる声から分かるように楽しさで満ち溢れていて、至る所から笑い声が聞こえる。

「じゃあまずはあれだね」

 そういってなぜか上の方を指差している小香花。なんで手が上向きなんだよ。そう思いながら指差している方へ顔を向けるとめちゃくちゃ高いところからのウォータースライダーが目に見えた。

「高すぎだよあれは」

「レッツゴー」

 こうして激しい水遊びが始まるはずだった。はずだったのだが・・・

「なんかごめん」

 僕は今、日陰の他より温度が低いところで横になっている。まぁ、なんだ、軽い熱中症というか、陽に当てられたわけだ。

「それより大丈夫?」

 心配そうに上から覗き込む小香花。こういう顔もできるんだな。なんてぼけっと顔を眺めていると

「そんなに私が、か・わ・い・い?」

「・・・」

 すぐに調子に乗るのだった。

「まったく、日南汰ったら体力なさすぎだよ~~」

「ごめん」

「体暑いの?」

「それはまぁ」

 熱中症で気持ち悪い。体が暑いのは熱中症もあるけどそれだけじゃない。見えてる世界が暑すぎる。視覚から訴えてくる脳が揺れるまでの暑さ。目の前に見えている色の一色一色が熱を放ち僕の感覚を狂わせる。

「私の体はね、冷たいから気持ちいいよ」

 そういうと僕の隣に横になって体と体、ちょうど腕のところが触れ合う。

 彼女のいった通り体は冷たくて驚くまでにひんやりとしていた。

「冷たい」

「でしょ?」

「うん」

「初めて役に立ったよ」

「なにが?」

「ううん、なんでもない」

 彼女は吐き出すようにいった言葉を取り消すように話を切った。

「悪化するといけないし帰ろっか」

「ごめんね」

 彼女が僕のために提案してくれたそれはとても暖かく感じた。
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