暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

課題と仮題

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「ねぇ照亜紀、夏休みの課題って多くない?」

「そう?僕はもうすぐ終わるけど」

 夏休みも終盤を迎え課題が終わってないと焦り始めるこのころ。僕も例外ではなく、照亜紀を巻き込みながら課題を終わらせることに徹していた。

 ちなみに僕の課題の進捗具合は全体の10パーセントほど。数学と英語、国語の課題がウエイトが重く時間がかかる。他の家庭科だったり学年課題はそれほどではないのだけど足を踏み出すのがめんどくさい。要するに少し手をつけたくらいでほとんどなにもやっていないのと同義だ。

「日南汰ってさ不思議な人だよね」

「どうしたのいきなり」

 2人とも目線を下に向け課題に集中している。

「僕はさ、日南汰のこと真面目な人だと思ってたからさ、なんていうんだろ、余計なことはしないっていうか、効率の良い方を探すような人だと思ってたから。
 だから課題ももうおおかた終わってるんじゃないかと思ってたんだよ」

「まぁ確かに去年まではしっかりやってた気がするけど」

「そっか。それじゃあ逢沢さんの影響なのかな?」

 逢沢小香花。僕が知り合った何かと不思議な女の子。そんな彼女の不思議さ、いいかえれば魅力は確かに僕の中の何かを変えたのかもしれない。

「どうなんだろうね。でもあのちゃらんぽらんな感じには助けられるんだよね。そばにいても苦にならないんだよ。もしかしたら一緒にいるうちに小香花の性格に巻き込まれたかもしれない。」

「やっぱり日南汰は変わったと思うよ。僕はさ今年から日南汰と関わるようになったから今よりもっと前のことはわからない。だけど日南汰は前からこんなんじゃなかったんだろうなとは思うんだ。」

 確かにそうだ。僕は人と付き合うことが苦手だった。それは今でも変わらない。ふとした瞬間に自分は普通ではないと感じてしまうから。それが僕には耐えられない。

「照亜紀はさ、普通じゃないってなんだと思う?」

 気づけば課題を進めていた手は止まり、視線が混じらないような微妙な距離感の中で話し合っていた。

「普通じゃないことか。僕はね・・・」

 照亜紀は何かを察したかのように脈絡のない僕の話になにも言わずに答えてくれようとしていた。

「僕は普通なんてどこにもないと思うよ。誰しも何かを抱えていて、思い悩んでる。」

 僕はいってもらいたかった言葉を言ってもらえた気がして少し心が軽くなった。

「照亜紀はいい奴だね」

「そうかな」

「例えばさ、僕が普通じゃなくて抱えてるものが大きかったとしても今と変わらずにいてくれる?」

「もちろん」

「そ、そっか」

「さ、課題に戻ろう」

「そうだね」

 いつのまにかあげていた目線を課題へと移し問題を解く。なにも気にせず、穏やかに流れる時間。そんな時間がこれからの安らぎとしてあり続けられることがとても嬉しかった。
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