暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

変わらない

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 朱華莉と公園で話をした翌日。

 まだ気だるさの抜けない夏休み終わりの学校。

 いつものように登校し、いつものように時間をやり過ごす。朱華莉と話したからといって何が変わるわけでもなくふざけている小香花を適当に受け流していた。

「日南汰~~なんか一発芸やってよ~~」

「やらん」

「え~~やって~~」

「やらん」

「日南汰、最近もの腰強くない~~?」

「小香花の扱いに慣れて来たのかな」

「もしかして、私だけにそんなツンツンしてんの?もう~~」

「・・・」

「ね~日南汰~~」

 いつも通り。そういつも通り。こうして周りからはいちゃついていると思われているのは。ラブラブな雰囲気を醸し出しているのは。

 だけど、調子の変わらない小香花を見て、僕はどこからか分からないイラつきを覚えていた。

「うるさい」

「日南汰~~怒らないでよ~」

「うるさいっっっ」

「えっ・・・」

 クラス中が凍りついた。普段声を荒げることのない僕の叫びを聞いて。

「ねぇ日南汰、日南汰。」

「・・・」

 うるさい。僕はそういっていた。

 何をやっているんだ僕は。

 あんなに声を荒げて。

 そんなことしたら。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 もうだめだ。

 彼女の弱さを知っているのに。

 壊した。

 壊してしまった。

「小香花大丈夫?」

「小香花?日南汰はちょっと怒っただけだって」

「どうしたの小香花?」

「日南汰、小香花に謝らないと」

 周りの声、照亜紀の声さえも聞き取ることが出来ず、真っ赤な世界の中で一人取り残された。


「ひなた」

「ひなた」

「日南汰、ちょっと!」

 点のように小さい声が、やがて大きくなり気付いた時には強く手を引っ張られ走らされていた。

「なにやってるの日南汰」

「・・・」

「日南汰!」

「う、」

「ねぇ、そばに行ってあげなよ」

「あぁ」

「分かってるの?」

 分からない。僕の心はどこにあるのだろう。頭は回らず考えることが出来ない。身体は動かず行動することが出来ない。


 本当に出来ないのだろうか、いや、きっと拒んでいるのだ。

 どうすればいいのかわからないから。身体が何かをすることを受け付けていない。

「日南汰、」

 不意に手に暖かい感触がした。目の前の朱華莉が両手で手を握ってくれていた。

「行ってきな」

 暖かい手。暖かい感情が僕を支配していた。心地よい感覚。この暖かさを伝えてあげないと。自分で。

「ありがとう」

 そう言って小香花の元へ走った。
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