暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

震え

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「小香花」

 勢いをつけて教室のドアを開け小香花のいる所まで駆け寄る。

「ごめん、僕が悪かった。だから、少し向こうで話をしよう」

 座っている小香花を返事を聞かずに教室から連れ出す。小香花の手を握ることに躊躇はなかった。

 暖かさを、温もりを分け与えないと。僕が壊してしまったから。この大きな借りはなんとしてでも償うべきものだ。

「嫌だよ、私何か悪いことしたかな。謝るからさ、許してお願いだから。」

 何かに縋るように、目上の者に慈悲を懇願するようなその姿は弱々しく、いつもの小香花の能天気さと覇気は一切感じられない。

「小香花。ごめんね、ごめん。怒鳴ったりして。こんなつもりじゃなかったんだ。」

「日南汰は私が嫌いなの?」

「そんなことない。」

「じゃあなんで・・・」

「色々あって・・・」

「誤魔化さないでよ」

「ごめん。ちゃんと言った方がいいよね。実はさ朱華莉から聞いたんだ。夏休みに話してたこと」

「そう、なんだ、、、」

「きっと、小香花が何かを抱えてるのに言ってもらえなかったことが、言ってもらえるだけの信頼を預けてもらえなかったことが悔しかったんだ。」

「だから、ちょっとずつでいいから話して欲しい。ほんの少しでも荷を軽くできるなら軽くして欲しい。」

「・・・まだ言えない」

「・・・・・・そっか」

 まだ何も聞かせてもらえない。

 僕は今もなお、打ち明けてもらえないことに大きなショックを受けた。

「僕の話はこれで終わり。じゃあ、行こうか」

 どうしようもなく開いてしまったその距離感を、どうしていいかわからずただ平行線のまま保ってお得ことしか出来ない。

 ごめんね小香花。

 僕の心はそんなに強くないみたいだ。
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