君の瞳に映るのは希望か絶望か

撫でたココ

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今日は昨日

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 7月22日、土曜日。7時50分。

 テレビの画面にはそう書いてある。今日も忙しなく、遠くで起きた火災とか、交通事故がニュースになっている。もちろん残念だとか、可哀想だとか思うけれど実感はわかない。でも今日は何だか、妙に感情移入してしまう。

「それはそうだよな」

 心当たりに出くわしてはまた心を暗くした。あれから2日経った。それにしては、ニュースが他人事過ぎるし、世間が静か過ぎる。学生が轢かれたのだから、ニュースになっていてもおかしくない。2日もたっているのだ。しかし、トピックスの欄にそれらしきニュースは見当たらない。

 そしてもう一つ気づくことがあった。7月22日、土曜日。それがひどく奇妙に見えた。

「土曜日は予定がないんだよね。」

 彼女が意地悪にも聞いてきてそうやって答えた。明日は土曜日だけど予定はあるの?か。あるわけないじゃないか。

「明日も明後日も予定なんて・・・・」

「明日・・・」

 そこで気がついた。さっき感じた奇妙な違和感に。あの日は金曜日だった。それから2日たった今日は日曜日のはずだ。

 このニュースはわざわざ昨日録画したものだったのならばそれは正しいが、ニュースを録画なんて滅多にしないだろう。それならば、どうして今日は土曜日なのだろう。

 僕はスマホを手に取り、“今日の日付”で検索してみた。するとやはり、7月22日土曜日と出てくる。

 だとしたら、あの日二度寝してから、まだ日が経ってないのだろうか。

 それはないだろう。あの時、時計はすでに8時を過ぎていた。そして、カーテン越しから朝日を浴びたのを覚えている。

 だとしたら、結局今日は何日で、何曜日なのだろうか。

「まぁでも、どっかで勘違いしてるんだろうな。」

 勘違いか。あの出来事も勘違いだったらいいのに。でも、あれほど強烈な出来事は絶対に勘違いではない。そうであったならば、その勘違いは許されるべきではない類のものだ。つまずき、はねられた彼女。流れる血。動かない身体。微笑む顔。瞳の中の数字。

 一瞬にしてフラッシュバックする記憶に、身体が拒否反応を示す。

「うっ、、、うぇ、、ぇぇぇぇ」

 再びすぐにトイレへと駆けこんだ。

「ぇぇぇぇ、、、うっ、う、、、」

 嗚咽とともに、目からは涙がこぼれ落ちていく。彼女は無愛想な僕に対して、隔てなく話してくれた。終始怒りっぽかったけど、嬉しかったのだ。だから、守りたかった。

 2日経っても言えることのない傷。あの瞬間を思い出しては気分が悪くなる。目の前で引かれてしまった衝撃と、最後まで守ることができなかったという罪悪感。

「うぅ、ぅ、、こんなになるなら、、会うんじゃ、、なかった。出会わなければ、こんな悲しみも、なかったのに、、。」

 今更どうにもならない嘆きと後悔を口にする。

 そうやって僕は、残りの夏期休暇を起きては思い出して吐き気を覚えトイレに駆け込む。収まっては疲れからベッドに逆戻りすることを繰り返した。

 結局、傷が癒えることはなかった。
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