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休み明け
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夏期休暇が終わった。
僕は未だ気だるい身体をなんとか起こして学校に行く準備をした。意識的に生活を変えなければ、このまま一生引きずってしまいかねない。だから、僕はなんとかこのタイミングを利用して、せめて、学校くらいには行かなければ。
固形の朝ごはんはまだ食べる気にならず、ゼリー状のエネルギードリンクを飲んで家を出た。
外は日差しが照り、ぽかぽかと暖かかった。気づけば季節が巡ろうとしていたようだ。初夏の少しずつ暑くなってきていた夏休み直前とは違い、夏も終わりを告げようと自己主張を抑えつつあった。
僕は自転車にまたがると、片道30分の大学までの道のりをいつもと同じルートで漕ぎ出した。
大学が近づくにつれて、まばらにではあるが学生が増えてくる。残念ながら、僕は知り合いがいないので、自転車で後ろから追い越して、おはよう、と挨拶などすることはない。淡々と駅から来た人を追い越して学校までの距離を縮めた。
大学の門をくぐったところで、事件は起こった。声をかける友達などいるはずもない僕であったが、そこにいたのは紛れも無い知り合いであった。
「ぇ・・・・・・」
後ろ姿では確認が出来ず、通り過ぎて振り返って見た。
そこには死んだと思っていた彼女がいた。
「なんで・・・・」
僕は乗っていた自転車を放り出し、彼女のもとに駆け寄る。
「生きてるの・・・」
彼女の前まで来て立ち止まる。すると彼女も歩いていた道を僕によって塞がれたので立ち止まることになった。
「なによあなた」
この強気の口調。起こっているような声音。目の前の彼女は間違えなく彼女であった。
「生きてたの・・・?」
「だから、誰なのよ」
「そうか、名前、まだ言ってなかったもんね。僕は佐々木千隼。」
「あっそう。それでなんなのよ」
「えっと無事だったんだね」
「だから、なんの話をしてるのよ!わけわからないんだけど。」
彼女はさっきから本当に何を言っているのかわからないようだった。
僕たちがこうして話している間にもたくさんの学生が横を通り過ぎ去っていく。この光景は、あの日の教室の外での出来事とそっくりだった。
「君は事故にあったんだよね。それで、僕は死んだと思って、それで、」
あの日のことを思い出して、全身の力が抜けた。膝ががくりと曲がり、地面がぼやけて見える。かざした手には涙が落ちてくる。僕はなんでこんなにも泣き虫なんだろう。いつも気がつけば、目は涙で溢れかえっている。いつもそうだ。
「ちょっと、いきなり泣かないでよ。みっともない。」
彼女は背負っていたリュックを前に持ってきて、がさがさと何かを探しているらしかった。
「ほら、とりあえず、これで拭きなさい。話は落ち着いてから聞いてあげるから。ね。」
彼女は僕と同じように膝をつき、ハンカチを僕の手に握らせた。
「とりあえずここは目立っちゃうから、付いてきなさい。」
そういうと、僕の手を引き、倒れていた自転車を起こしてもう片方の手で持ち、さっきくぐったばかりの門から出た。
僕は未だ気だるい身体をなんとか起こして学校に行く準備をした。意識的に生活を変えなければ、このまま一生引きずってしまいかねない。だから、僕はなんとかこのタイミングを利用して、せめて、学校くらいには行かなければ。
固形の朝ごはんはまだ食べる気にならず、ゼリー状のエネルギードリンクを飲んで家を出た。
外は日差しが照り、ぽかぽかと暖かかった。気づけば季節が巡ろうとしていたようだ。初夏の少しずつ暑くなってきていた夏休み直前とは違い、夏も終わりを告げようと自己主張を抑えつつあった。
僕は自転車にまたがると、片道30分の大学までの道のりをいつもと同じルートで漕ぎ出した。
大学が近づくにつれて、まばらにではあるが学生が増えてくる。残念ながら、僕は知り合いがいないので、自転車で後ろから追い越して、おはよう、と挨拶などすることはない。淡々と駅から来た人を追い越して学校までの距離を縮めた。
大学の門をくぐったところで、事件は起こった。声をかける友達などいるはずもない僕であったが、そこにいたのは紛れも無い知り合いであった。
「ぇ・・・・・・」
後ろ姿では確認が出来ず、通り過ぎて振り返って見た。
そこには死んだと思っていた彼女がいた。
「なんで・・・・」
僕は乗っていた自転車を放り出し、彼女のもとに駆け寄る。
「生きてるの・・・」
彼女の前まで来て立ち止まる。すると彼女も歩いていた道を僕によって塞がれたので立ち止まることになった。
「なによあなた」
この強気の口調。起こっているような声音。目の前の彼女は間違えなく彼女であった。
「生きてたの・・・?」
「だから、誰なのよ」
「そうか、名前、まだ言ってなかったもんね。僕は佐々木千隼。」
「あっそう。それでなんなのよ」
「えっと無事だったんだね」
「だから、なんの話をしてるのよ!わけわからないんだけど。」
彼女はさっきから本当に何を言っているのかわからないようだった。
僕たちがこうして話している間にもたくさんの学生が横を通り過ぎ去っていく。この光景は、あの日の教室の外での出来事とそっくりだった。
「君は事故にあったんだよね。それで、僕は死んだと思って、それで、」
あの日のことを思い出して、全身の力が抜けた。膝ががくりと曲がり、地面がぼやけて見える。かざした手には涙が落ちてくる。僕はなんでこんなにも泣き虫なんだろう。いつも気がつけば、目は涙で溢れかえっている。いつもそうだ。
「ちょっと、いきなり泣かないでよ。みっともない。」
彼女は背負っていたリュックを前に持ってきて、がさがさと何かを探しているらしかった。
「ほら、とりあえず、これで拭きなさい。話は落ち着いてから聞いてあげるから。ね。」
彼女は僕と同じように膝をつき、ハンカチを僕の手に握らせた。
「とりあえずここは目立っちゃうから、付いてきなさい。」
そういうと、僕の手を引き、倒れていた自転車を起こしてもう片方の手で持ち、さっきくぐったばかりの門から出た。
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