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でじゃぶ
しおりを挟む僕はなんとか彼女より先に駐輪場についた。自転車は置いていったほうがいいのだろうかとか、考えながら彼女を待っていた。後ろを振り向くと、もうすでにそこにいた。
「あっ、いたの?」
「失礼ね。いつ気づくのかと思って待ってたのよ。あなた全然気付かないのね。」
「いや、音とか全然しなかった・・・」
0.500
「・・・から」
早まる鼓動をなんとか抑えて話を続けた。我ながらなんとかごまかせたんじゃないかと思う。今もまだ心臓の鼓動が収まらない。なんで、また。また、なんだ。どうして、彼女なんだ。
「それはゆっくり近づいたんだから当たり前でしょ」
「・・・そ、そうだね」
まだ、やはりまだ、はやる気持ちを抑えられない。だって彼女はこれで一度死んだのだから。
「まぁ、いいわ。行きましょ」
僕は自転車をどうするのかなどすっかりと忘れ、歩き始めた彼女に置いてかれないようについていった。
電車に乗りやってきたのはこの近辺では、ここが一番大きいであろう、大型複合施設だ。今日は別に休日ではないので人もそんなには多くない。
これくらいの人ならば、注意するは容易いだろう。
「ねぇ、佐々木くん。もう少し疲れたわ。一旦、喫茶店にでも入りましょうよ。」
ようやくついたばっかりなのにもかかわらず、いきなりの休憩発言だ。
「いいですけど、いきなり休憩しちゃうと、買い物に行くのに腰が重くなりそうですよ。」
「重くなるとかいわないでよ。いいのよ、そんなこと。いいからいくよ。」
「わかりましたよ。」
僕は彼女の有無を言わせない言動に素直に従い、すぐそこにあった案内板を見て、喫茶店を見つけるとそこまで一直線で向かった。
そこの喫茶店は大きい施設の中なだけあって、大型チェーン店だ。僕たちは店員さんに案内された席に座ると、まだ増えていない荷物を置いて、早速休憩に入った。
「今日はどこを回る予定なんですか?」
特に話すこともなかったので、とりあえず今日の予定を聞いておいた。
「そんなことはどうでもいいわ」
どうでもいいわけはないと思うんだけど。ここにきたのは買い物が目的なわけだから。
「あなた、さっきから様子が変よ」
「そんなことはないと思いますけど。」
だいぶ落ち着いてきた鼓動を、止めるくらいの静かな気持ちで、なるべく悟られないように答えた。彼女はこの前もそうだった。
この前も僕の細かい仕草をよく見てくれていた。きっと人の機微に敏感なのだろう。
「なに?私に嘘つくの?それは助けてもらったもののすることとは思えないわね。」
「えっと・・・」
「渋るのね。それなら、こっちにも考えがあるわ」
「・・・話しますから。」
「それでいいのよ。・・・でどうしたのよ。あなたの様子が少しおかしいことくらい、誰でもわかるわ。」
「えっと、落ち着いて聞いて欲しいんだけど、君が今日、死ぬかもしれない。」
「・・・・・・」
彼女は黙ったまま、目を巡らせている。目以外は一切動かなかった。
「・・・私には、、、分からないわ。でも、君は私が死ぬことを恐れてくれてるのよね。」
「・・・人が死ぬかもしれないのを見過ごすなんて出来ない。」
「もう一度聞くけど、その、私が死ぬっていうのは、本当なの?」
「かもしれない。死ぬ確率は半々。だから、本当に、かもしれないとしか、、、」
「そう・・・でも・・・あなたが、あなたが、守ってくれるなら、心配は、ないわね・・・」
彼女の言葉は震えていた。それは僕の突拍子も無い話を信じてくれているということの裏返しでもあった。普通に考えれば、そんなことあるわけないと突っぱねるだろう。でも、彼女はそれ以上に、信頼し、恐怖している。そしてこの恐怖に抗おうとしている。
「う、ん。絶対に大丈夫だから。」
怯えている彼女を前に、僕も一緒に怯えているわけにはいかない。
「さて、じゃあ、一緒に買い物しようか。」
絶対に繰り返すわけにはいかない。
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