君の瞳に映るのは希望か絶望か

撫でたココ

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改めまして

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「痛っ」

 地面にぶつかった衝撃が、心臓を圧迫する。この心臓への圧力とともに、露出していたことで地面に擦れた腕が痛む。

 かろうじて動かせる身体を起こす。痛みで忘れていた事態が目の前に広がる。

「〇〇さん?」

「〇〇さん?」

「〇〇さん?」

 呼びかけと一緒に軽く肩を叩く。

 しかし、返事はない。

「〇〇さん!」

 何度呼びかけても結果は同じだった。

「う、、、そ?、、、と、とりあえず、救急車呼ばないと、、、」

 この間にも応答する様子はない。そして、頭からは少しずつ真っ赤な血が流れてくる。

「いちいちきゅう、、、」

「はやく、はやくしないと、、、また、、」

「はい、消防119です。火事ですか、救急ですか」

「あ、救急です。人が倒れてるんです、はやくお願いします。はやく。早くしないと。死んじゃ、、」

「わかりました。落ち着いてください。」

「はい。でも、早くしないと。早く来てください。」

「落ち着いてください。そこはどこですか?」

「彼女の家の前で、〇〇アパートの前です」

「わかりました。今向かわせます。倒れている人の名前は?」

「〇〇です」

「様子はどうですか?」

「頭から血が、、、」

「わかりました。もう一度いいます。落ち着いてください。」

「はい。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「佐々木さん!」

「・・・っは」


 気づけば救急車の中だった。彼女はベットに横たわり、医師が応急手当てをしてくれている。

「しっかりしてください。いいですか。彼女さんは今、危険な状態にあります。衝撃が大きかったのか、傷がかなり深く、出血量も並みじゃありません。」

 さっきから、なんども話しかけられているが、気持ちが追いつかない。助かるのだろうか。助けてくれるのだろうか。僕のせいで。僕が踏み外しさえしなければ。こんなことには。

「佐々木さん!手を、手を握ってあげてください。」

 僕の手は言葉に反応し反射的に彼女の手を握った。まだ暖かく、温もりがある。

「大丈夫だから。そばにいるから。」

 口から出た精一杯の言葉。

 この言葉に反応したのか苦しそうな彼女の表情が一瞬和らいだ。

「〇〇さん!」

 体がほんの少し動き、握っていた手もまた少し動いた。

「もうすこしだから。心配ないよ。」

 彼女の暖かい手が僕の手をそっと握り返す。

 そして、彼女は自身の目をゆっくりと見開いた。

「よかった。よかったよ。」

 僕は彼女の手を両手で握り直した。

「あ、、、」

 彼女がなにかを言おうとしている。

「どうしたの?」

 彼女は頭は動かさず、目を僕の方に向けて、声に出さない声でこういった。

「また、助けてね。」

 こう告げたまま、僕の返事を聞くことなく、まぶたを閉じた。

 僕が握っていた彼女の手から精気が消えた。

 彼女が息絶える寸前、瞳の中には


 0.500

 この無機質な数字が、死神のように最後まで彼女につきまとっていた。


 0.500 24 12 24 12 12
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