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カラカラとスッキリした空模様に、時々吹く風にまだ色の残った葉があおられる。秋の兆しを見せる天気であったが、陽の光はまだほんのり暑く夏の余韻を感じさせる。
僕は家にいてもそわそわしてしまい20分程早く家を出た。たかが20分の早出だったのでそれほど道のりに変化はなかったが、大学に近づくにつれていつもならもう少し多い学生の数は人が重ならないほどであった。
講義室に入るまでに彼女に会うことはなく、講義も別々の講義であったので、約束の時間まで辛抱することになった。
「いるかな」
講義中も教授の話に集中できず、3限目が終わるとそわそわした気持ちのまま、駐輪場に走っていった。
「思ったより早いじゃない」
彼女はもうそこにいた。まだいないだろうと思っていたので心の準備がまだだった。結果、思ったより再開があっさりしてしまった。
「君も、早いね」
ついつい何事もなかったかのように話しかけてしまった。実際、彼女からすればただ、僕が待ち合わせの時間に、待ち合わせの場所にきただけなのだから、この反応が普通なのだ。
「私は2限までだもの。昼ごはんを食べたあと、軽く時間があるくらいよ。」
「そっか。それなら、いいんだ。」
「なによ?、まあいいわ。行きましょ。」
彼女は僕の手を握り、引っ張って連れようとする。
「まって、」
僕は彼女の手を振りほどいて、その場に立ち止まった。
彼女は驚いて、振り返り、僕の方に目を向ける。
0.400
僕は今日初めて彼女の目を覗き込んだ。
「まって、ってなによ。なにかあるの?」
僕の対応にすこし怪訝な様子の彼女。
「買い物の前に僕の家によってもいい?」
「何、忘れ物?さっさと行ってきなさいよ。図書館で時間潰してるから」
「君にも来て欲しいんだ。話があるから。」
また、伝えなければならない重大な話が。命にも関わってくる大切な話が。
「それ、あなたの家の必要あるの?」
「うん。そこが、、安全だから。」
「・・・・わかったわ。なら行きましょうか。」
僕は小走りで自転車を取りに行き、ロックを解除して彼女のそばまで戻ると、今度は普通の速度で自転車を押しながら歩き出した。
自転車を漕げば30分もかからない道のりも、歩きだと倍近くかかってしまう。二人で歩くとなおさら着くのが遅くなるだろう。
いつもなら何も気にせず通り過ぎてしまう道も、歩きながらだとどこか新鮮に感じる。それは、それほどに周りに意識を向けているということであり、つまりは彼女とろくに話もしていないということであった。
「ここです」
そして気がつけば家の前まで着き、中に入る流れとなった。
「とりあえず、適当に座ってください」
僕は冷蔵庫を開けて、麦茶をとりだし、コップに注いでいた。
「わかったわ。それにしても、殺風景な部屋ね。ほとんど必要最低限なものしかないじゃない。」
「そうかもね。あまり、興味がないんだ」
彼女の言う通り、机とテレビ、本棚といった、大きめの家具や家電以外にはこれといっておいてあるものはない。物にあまり頓着する方ではないので、こうも殺風景になってしまう。
でも、今日に限ってはそれはありがたかった。
「それで、ここに連れてきた理由を教えてくれるんでしょうね?」
「うん。そうしないといけないもんね。」
目の前に置いた麦茶を一口飲み、一息ついた。
「・・・えっと、昨日だと思うんだけど、僕が君に話したこと、覚えてる?」
「当たり前じゃない。あんな話、なかなか忘れられないわよ」
「そっか。えっと、それで、また君が、死ぬかもしれないんだ」
「それは、本当なのよね」
彼女は僕にとっての昨日、見せたように再び驚いた。
僕は家にいてもそわそわしてしまい20分程早く家を出た。たかが20分の早出だったのでそれほど道のりに変化はなかったが、大学に近づくにつれていつもならもう少し多い学生の数は人が重ならないほどであった。
講義室に入るまでに彼女に会うことはなく、講義も別々の講義であったので、約束の時間まで辛抱することになった。
「いるかな」
講義中も教授の話に集中できず、3限目が終わるとそわそわした気持ちのまま、駐輪場に走っていった。
「思ったより早いじゃない」
彼女はもうそこにいた。まだいないだろうと思っていたので心の準備がまだだった。結果、思ったより再開があっさりしてしまった。
「君も、早いね」
ついつい何事もなかったかのように話しかけてしまった。実際、彼女からすればただ、僕が待ち合わせの時間に、待ち合わせの場所にきただけなのだから、この反応が普通なのだ。
「私は2限までだもの。昼ごはんを食べたあと、軽く時間があるくらいよ。」
「そっか。それなら、いいんだ。」
「なによ?、まあいいわ。行きましょ。」
彼女は僕の手を握り、引っ張って連れようとする。
「まって、」
僕は彼女の手を振りほどいて、その場に立ち止まった。
彼女は驚いて、振り返り、僕の方に目を向ける。
0.400
僕は今日初めて彼女の目を覗き込んだ。
「まって、ってなによ。なにかあるの?」
僕の対応にすこし怪訝な様子の彼女。
「買い物の前に僕の家によってもいい?」
「何、忘れ物?さっさと行ってきなさいよ。図書館で時間潰してるから」
「君にも来て欲しいんだ。話があるから。」
また、伝えなければならない重大な話が。命にも関わってくる大切な話が。
「それ、あなたの家の必要あるの?」
「うん。そこが、、安全だから。」
「・・・・わかったわ。なら行きましょうか。」
僕は小走りで自転車を取りに行き、ロックを解除して彼女のそばまで戻ると、今度は普通の速度で自転車を押しながら歩き出した。
自転車を漕げば30分もかからない道のりも、歩きだと倍近くかかってしまう。二人で歩くとなおさら着くのが遅くなるだろう。
いつもなら何も気にせず通り過ぎてしまう道も、歩きながらだとどこか新鮮に感じる。それは、それほどに周りに意識を向けているということであり、つまりは彼女とろくに話もしていないということであった。
「ここです」
そして気がつけば家の前まで着き、中に入る流れとなった。
「とりあえず、適当に座ってください」
僕は冷蔵庫を開けて、麦茶をとりだし、コップに注いでいた。
「わかったわ。それにしても、殺風景な部屋ね。ほとんど必要最低限なものしかないじゃない。」
「そうかもね。あまり、興味がないんだ」
彼女の言う通り、机とテレビ、本棚といった、大きめの家具や家電以外にはこれといっておいてあるものはない。物にあまり頓着する方ではないので、こうも殺風景になってしまう。
でも、今日に限ってはそれはありがたかった。
「それで、ここに連れてきた理由を教えてくれるんでしょうね?」
「うん。そうしないといけないもんね。」
目の前に置いた麦茶を一口飲み、一息ついた。
「・・・えっと、昨日だと思うんだけど、僕が君に話したこと、覚えてる?」
「当たり前じゃない。あんな話、なかなか忘れられないわよ」
「そっか。えっと、それで、また君が、死ぬかもしれないんだ」
「それは、本当なのよね」
彼女は僕にとっての昨日、見せたように再び驚いた。
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