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ルシィは決して愚かではない。
むしろ、この家の兄弟姉妹、つまり、いとこ達の中では誰よりも聡い、とヴィーネは常々思っている。
それなのに――
伯父一家、ルルスの名門とされるアルフェール家は、二男二女に恵まれた。
現在、十七歳の長男ロシアン、十五歳で成人済の双子の男女、次男アンソニーと長女マリアーナ。そして、八歳の次女ルシアーナである。
跡継ぎ候補の長男と次男は広い人脈を築くため、成人すると同時に王都の騎士団へ入団させられ、通常王都で生活している。
そして、絶世の美少女と名高い長女マリアーナは、将来有望、玉の輿間違いなし、と幼い頃からずっと期待されてきた。本家分家問わず一族ほとんどがそんな彼女を甘やかし続け、自他共に虎視眈々と玉の輿実現に向けて機会を窺っている。
長男ロシアンは美しい自分の二つ下の妹に夢中で溺愛する一方、年の離れたもう一人の妹には見向きもしない。
同じく、一族のほとんどもまた、次女ルシアーナを姉と比べて今一つ見栄えのしない、利用価値の低い娘として軽んじてきた。
ルシィは聡いがゆえに、そんな周りの思惑や扱いを早々に敏感に感じ取ってしまった。
そして、同じ家族なのに、長兄ロシアンが姉と違って、自分のことなど少しも眼中にないことも。
むしろ、邪魔に思っていることさえも――
疎まれている、と感じている兄にも、一生懸命無事を祈りながら護符を作るルシィの心を思うと、ヴィーネは切なくなった。
ヴィーネにとって、ルシィの生き生きとしたはしばみ色の瞳は、生命力に満ち溢れていて何より美しく感じるし、分け隔てなくロシアンにさえも祈りを込めて護符を作るその温かい心、性分は、甘やかされて我儘なマリアーナなどとは比べ物にならないほど、尊く愛しい。
ルシィの本質を見極められず、不当に扱う愚か者達への怒りを押しつぶしながら、心を切り替え、ヴィーネは何気ない風を装って助言した。
「二人の無事を祈るなら、それぞれに名前も入れた方がより効果的ね。あと、武運を兼ねて、宝剣を――破邪の剣として、黒曜石を組み込んだ剣を後ろに入れたら、どうかしら? 左端に小さく入れれば、意匠の邪魔にもならないし……」
ぱっと、ルシアーナの顔が輝く。
「そうね、そうだわ! とても良い考え! わたし、今から頑張る。……ヴィーお姉さま、お守りの刺繍はあと少しだから、わたしでも出来そう。でも、外側のお守り袋の方は、お願いしても、いい?」
「はいはい、分かりました。お守りは、中身の方が大事だからね。……袋はどんな風が良いか、ルシィが隣で見ていて指示してくれる?」
そのまま、心地よい沈黙の中、しばし互いの作業に没頭する。
どのくらい時間が経ったのか――ほとんど出来上がり、作業の終わりがみえた頃、ふとルシアーナが呟いた。
「ヴィーお姉さまがいてくれて、良かった。きっとわたし、何が足りないか教えてもらえるって思ったの」
何気ないその言葉に、ヴィーネは驚いた。
どこまで分かっているのか――相変わらずの無邪気さの裏で、ルシィは鋭い。
ひょっとして母リーシアの、ルシィにとっては叔母にあたる人の才能を受け継いでいるのでは、と思う。いや、文武両道だったという、伯父似なのかもしれないが……。
長女であるマリアーナは叔母の外見を、次女のルシアーナは叔母の聡明さを受け継いでいるように思えてならない。
むしろ、この家の兄弟姉妹、つまり、いとこ達の中では誰よりも聡い、とヴィーネは常々思っている。
それなのに――
伯父一家、ルルスの名門とされるアルフェール家は、二男二女に恵まれた。
現在、十七歳の長男ロシアン、十五歳で成人済の双子の男女、次男アンソニーと長女マリアーナ。そして、八歳の次女ルシアーナである。
跡継ぎ候補の長男と次男は広い人脈を築くため、成人すると同時に王都の騎士団へ入団させられ、通常王都で生活している。
そして、絶世の美少女と名高い長女マリアーナは、将来有望、玉の輿間違いなし、と幼い頃からずっと期待されてきた。本家分家問わず一族ほとんどがそんな彼女を甘やかし続け、自他共に虎視眈々と玉の輿実現に向けて機会を窺っている。
長男ロシアンは美しい自分の二つ下の妹に夢中で溺愛する一方、年の離れたもう一人の妹には見向きもしない。
同じく、一族のほとんどもまた、次女ルシアーナを姉と比べて今一つ見栄えのしない、利用価値の低い娘として軽んじてきた。
ルシィは聡いがゆえに、そんな周りの思惑や扱いを早々に敏感に感じ取ってしまった。
そして、同じ家族なのに、長兄ロシアンが姉と違って、自分のことなど少しも眼中にないことも。
むしろ、邪魔に思っていることさえも――
疎まれている、と感じている兄にも、一生懸命無事を祈りながら護符を作るルシィの心を思うと、ヴィーネは切なくなった。
ヴィーネにとって、ルシィの生き生きとしたはしばみ色の瞳は、生命力に満ち溢れていて何より美しく感じるし、分け隔てなくロシアンにさえも祈りを込めて護符を作るその温かい心、性分は、甘やかされて我儘なマリアーナなどとは比べ物にならないほど、尊く愛しい。
ルシィの本質を見極められず、不当に扱う愚か者達への怒りを押しつぶしながら、心を切り替え、ヴィーネは何気ない風を装って助言した。
「二人の無事を祈るなら、それぞれに名前も入れた方がより効果的ね。あと、武運を兼ねて、宝剣を――破邪の剣として、黒曜石を組み込んだ剣を後ろに入れたら、どうかしら? 左端に小さく入れれば、意匠の邪魔にもならないし……」
ぱっと、ルシアーナの顔が輝く。
「そうね、そうだわ! とても良い考え! わたし、今から頑張る。……ヴィーお姉さま、お守りの刺繍はあと少しだから、わたしでも出来そう。でも、外側のお守り袋の方は、お願いしても、いい?」
「はいはい、分かりました。お守りは、中身の方が大事だからね。……袋はどんな風が良いか、ルシィが隣で見ていて指示してくれる?」
そのまま、心地よい沈黙の中、しばし互いの作業に没頭する。
どのくらい時間が経ったのか――ほとんど出来上がり、作業の終わりがみえた頃、ふとルシアーナが呟いた。
「ヴィーお姉さまがいてくれて、良かった。きっとわたし、何が足りないか教えてもらえるって思ったの」
何気ないその言葉に、ヴィーネは驚いた。
どこまで分かっているのか――相変わらずの無邪気さの裏で、ルシィは鋭い。
ひょっとして母リーシアの、ルシィにとっては叔母にあたる人の才能を受け継いでいるのでは、と思う。いや、文武両道だったという、伯父似なのかもしれないが……。
長女であるマリアーナは叔母の外見を、次女のルシアーナは叔母の聡明さを受け継いでいるように思えてならない。
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