(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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出会い 2

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 美月が学園に着くと、時間が早かったのにも関わらず、校門は既に開かれていた。
 
 しかし、門の周りには人がいない。

「意外と不用心?……それでは、早めにお邪魔します」

 美月は首を傾げながらも、何となしに頭を下げて門を通過する。
 その様子を門上に取り付けられたカメラが追っていた。



「わあ~やっぱりこの学園は素敵!」

 敷地内に入って、美月は深呼吸した。学園内、特に庭園から坂を登れば登る程、五月雨学園の所有するという山に近づけば近づく程、澄んだ空気を感じ取れる気がする。

「はっ、いけない、いけない。今日は散策してる場合じゃなかった……。昨日の失態を挽回すべく、少しでも勉強しないと」

 翠との待ち合わせ場所である校門から離れ過ぎず、かと言って登校する生徒達に見られすぎない適度に落ち着く場所はないかと、美月がきょろきょろしていると、

「君、そこの君!」といきなり声をかけられる。

「ずいぶん早く来たんだね。ここの学生かな?」
「は、はい!乗り継ぎの都合上、早く着きすぎちゃって……あの、ダメでしたか?」

 警備員の制服を着た男に美月が恐る恐る尋ねると、男は笑って首を振った。

「いや、いいよ。あと十分もすれば、試験会場となる講堂も開けられると思うけど。講堂はあっちだよ?」
「いえ!……実は友達と八時に校門で待ち合わせしているので。それで、時間までどこか近くで勉強しようかと思っていました」

 美月が実情を明かすと、男はああ、といった感じで頷き、右手の植木の向こうを指さした。

「あちらに小道があって、少し行くと日当たりの良いベンチがあるよ」

 思いがけない情報に目を輝かせて美月がお礼を言うと、男は照れたように、では、と手を振って歩いて行った。



 警備員に教えられた通りに歩き、居心地の良さそうな空間に辿り着いた美月は歓声を上げた。

「すごい、すごい!理想的~!警備員さん、ありがとう~!」

 ここに来る途中、注意深く周りを見渡せば、何台ものカメラが設置してあるのに美月は気づいた。
 流石天下の五月雨学園、防犯対策はばっちりだ。人目のつかない場所には、必ずさりげなくカメラがある。
 現にこの場所にも、一台。

「これなら、安心、安心~」と鼻歌を歌いながら、美月が問題集を広げようとした時、イチゴの甘いにおいが辺りに漂った。と、同時に美月のお腹もぐぅっと鳴る……。

 美月はお腹に手をやって、そうだ!イチゴをもらってた、……イチゴはやっぱり摘み立てが一番だよね、と呟いた。

 誘惑?に勝てなかった美月は、問題集と共に摘まめるよう、イチゴをセッティングする。
 
 けれども、さあ頂きまぁす、と口を開けた美月の視界が急に黒く欠けた。

「きゃあぁぁ、眼鏡に虫が!」

 美月は慌てて伊達眼鏡を外し、虫を追い払おうと、両手で眼鏡を揺さぶった――が、し、しぶとい!小指の先位のその虫は、むんずと眼鏡にしがみつき、なかなか取れない。

 むむむ、と美月は何かないかと辺りを見渡し、ふと奥まった所に祀られている小さな祠に気がついた。

「こんな所に祠が――」

 美月は眼鏡をベンチに置き、惹き付けられるように祠の前に立つ。
 見れば、その小さな祠の前には、お供え物が何もない。
 それに気づいた美月は、あ、そうだ、と小さく呟くと、ベンチに戻り、食べようとしていたイチゴを半分ハンカチにくるんだ。

「――どうぞ、お受け取り下さい」

 山の上の爺達に教わった作法にのっとり、美月は祠の主にお供え物を供えた。
 そのとき、やわらかな春風が吹き、その心地よさに思わず美月はにっこりと微笑む。

「……さあて、続きを頑張りましょうか」

 美月がベンチに戻ると、眼鏡の虫はいつの間にか何処かへ飛んで行ったようだ。

 美月は嬉しくなってさらににっこり笑うと、眼鏡を元通りにかけ、それから、のんびりとイチゴを頬張りながら問題を解き始めた。
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