(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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出会い 1

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「……いつもながら、よく躾けられてるな。ありゃ、黒のゴールデンリトリバー?いや、違うか?種類は何だい?」

 お互いの姿が見えなくなるまで、お互いに手と尻尾を振り合っている美月とクロを見て、運転手が話しかけてくる。
 ちょうど山道のカーブでクロの姿が見えなくなった美月は、運転手に向き直った。

「クロの犬種は、分かりません。……でも、クロは、クロです」

 美月の脳裏に、出会った頃の小さくてコロコロしたクロが浮かぶ――

 四年前、小さなクロを一番最初に見つけたのは、美月だった。

 五月晴れだったあの日、父と一緒に近所の川辺をサイクリングしていた時、美月は小さな鳴き声を聴いた。
 美月はその時、何故か自分が呼ばれた、と感じた。

 当時の美月が不思議に思いつつも自転車を降り、川の反対側に生い茂る草むらを覗くと、大きな段ボールの中に小さな黒い毛玉のような子犬が居た。

 美月は思わず子犬を抱き上げ――お互いの目が合った瞬間、このままこの子を連れて帰ろう、と固く決意した。

 いつの間にか自転車から降り、自分から離れている娘に気がつき、慌てて戻って来た美月の父は、ひろってください、と書かれた大きな段ボールの前で、子犬を抱きしめて離さない娘を見て、破顔した。

 そして、実はお父さんも犬を飼ってみたかったんだ~、といきなり言い出し、真っ黒な子犬を覗き込み、何だ、こいつ、額に星を持っているから、星野家にぴったりだ、と額の十字を嬉しそうに撫でたことを、美月は今でも鮮明に覚えている。

 散歩に出かけた筈なのに、嬉しそうに予定外の子犬を連れて帰って来た父娘を見て、母は呆れた顔をしたが、毛玉のような子犬にすぐ相好を崩して受け入れた。

 穏やかで優しい、美月の大事な思い出――――そしてそれから、かけがいのない大事な家族となった、クロ。

 そのまま物思いにふけったように黙り込んでしまった美月を、運転手はちらりと横目で見た。
 そして、美月のその表情を見た途端、口早に語り出す。

「いや~あんなに立派で賢い犬なら、血統書付きだと思ったんだ~。けど、やっぱ血筋は関係ないな。血統書だろうとダメなもんはダメだし、例え雑種だろうと賢いヤツは賢い。うん、これは人にも当てはまるもんだけどな。でも、犬は良い。特に良い犬は、忠実で誠実で……」

 意外と犬好きだったことが判明した運転手は、それから美月が降りるまで、延々と犬について語っていた……。

 ようやく目的の駅近くのバス停に着き、バスから降りた美月はほっと息を吐く。

「あのおじさん、あんなに犬好きだったんだ~。……さてと、これからどうしようかな?」

 昨日と同じように、予定通り一本前のバスに乗ったため、翠との待ち合わせの時間までは、まだかなり余裕がある。
 昨日はあまりにも桜が綺麗で、余った時間は並木に沿って電車には乗らずに学園まで歩いてしまったのだが、…………

「昨日のこともあるし、……今日は早めに学園へ行って勉強した方がいいよね、きっと」

 そういえば、あの学園には勉強がはかどりそうな庭園のベンチがたくさんあった、とそのことを思い出した美月は、一つ頷いた後、軽やかに駅の改札を通り抜けていった。
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