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闇の中で
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(おねえちゃん、こっち。……こっちだよ――?)
闇の中、美月はその声に導かれるようにふらふらと歩いていく――
美月の心は、三年と少し前の悪夢のような当時に囚われたまま。
大切な人達を失ったばかりの頃の、大きくて抱えきれない程の喪失感、悲しみに押しつぶされそうになりながらも、自らを呼ぶ幼い声を辿らずにはいられない――
(おねちゃんもいっしょ…………ぼくといっしょだね?)
闇に響く幼い声は、美月に一生懸命に語りかけてくる。
(ぼくも、……ぼくもなの。おとうさん、おかあさん、そしてきょうだいたち――たくさん、たくさんいたんだよ?)
美月の脳裏にも、穏やかで優しい日々――家族で笑いあって暮らしていた頃がよみがえる。
束の間の安らぎを与えられ、美月の顔つきは穏やかになった。が、すぐに、闇の声に引き戻される――――
(……さいしょは、おとうさんだった。つぎは、おかあさん。そして、……うえて、よわっていくきょうだいたち。――ぼくには、だれも、だぁれもいなくなっちゃった)
そして、美月の心もまた三つの棺に取り縋り、持って行かないで!置いて行かないで!と泣き叫んだあの時へと引き戻されていた。
やがて、その声も嗄れ、声もなく泣き続けた当時のように、闇の中をさ迷う美月の頬も冷たく濡れている。
(――――憎い。恨めしい。自らの欲のみで動き、僕の大切な家族を奪った、人間が――――!)
突如闇の声の調子が変わり、美月の心にも弱った心や境遇に付けこみ、ありとあらゆるものを貪っていった憎むべき人達、特に父の会社の上司の顔が浮かぶ――――けれども、…………
あの時、冷たい頬を舐めて美月の凍えそうな心を温めてくれた存在は、いなかった――――?
美月と同じように、最愛の者達を失い嘆きつつも、凍り付いたように動かない美月の身体を抱きしめ、温めてくれた存在は――――?
ひとたび美月が疑問に思えば、そこからは数々の思い出が溢れるように押し寄せてくる――――
泣き疲れ、心身共に弱り切った美月と祖母を、ずっとずっと何日もあの山道のバス停で待ち続けていたクロ。
何度連れて帰ろうとしても、頑として動かんのよ、と大らかにそれを見守ってくれていた山の上の隣人達。
追い打ちをかけるように、だまされ傷ついた美月と祖母を、親身になって支えてくれた人達。
父母が憧れていた五月雨学園に入れたのは、美月の家庭の事情を黙って汲んでサポートしてくれた、翠のおかげ。
そして、何より――――
「……ごめんね。わたし、……わたしも人間なんだ」
美月は目の前にいる、凝った闇の塊のような何かに語りかけた。
あまりにも暗くて、その中は見通せない。
けれども、美月には何故か、傷つき嘆くその存在は人外である――そのことが分かってしまったから……。
そのまま、立ち止まってしまった美月に、
(おねえちゃん、……どうして?)
と、まるで差し出した手を振り払われたかのような、呆然とした声で、ソレは問いかける。
(――――憎いでしょ?許せないでしょ?……君だって、独りぼっちになって、そして人に酷いことをされたんでしょ?きっと、そうだ。そうに違いない!!)
その後はまた、人が変わったかのように激しい口調で美月に話しかけてくるソレ。
(――――分かってる。君は人だって。……だけど、きっと君はこちら寄りの人。憎いんだ。一人は、辛いんだ。寂しくて、寂しくて――――だから、ねぇ君、こちらへおいでよ?)
闇に響くその声は、とろりとした重みを持って、美月の心に押し迫ってきていた――――
闇の中、美月はその声に導かれるようにふらふらと歩いていく――
美月の心は、三年と少し前の悪夢のような当時に囚われたまま。
大切な人達を失ったばかりの頃の、大きくて抱えきれない程の喪失感、悲しみに押しつぶされそうになりながらも、自らを呼ぶ幼い声を辿らずにはいられない――
(おねちゃんもいっしょ…………ぼくといっしょだね?)
闇に響く幼い声は、美月に一生懸命に語りかけてくる。
(ぼくも、……ぼくもなの。おとうさん、おかあさん、そしてきょうだいたち――たくさん、たくさんいたんだよ?)
美月の脳裏にも、穏やかで優しい日々――家族で笑いあって暮らしていた頃がよみがえる。
束の間の安らぎを与えられ、美月の顔つきは穏やかになった。が、すぐに、闇の声に引き戻される――――
(……さいしょは、おとうさんだった。つぎは、おかあさん。そして、……うえて、よわっていくきょうだいたち。――ぼくには、だれも、だぁれもいなくなっちゃった)
そして、美月の心もまた三つの棺に取り縋り、持って行かないで!置いて行かないで!と泣き叫んだあの時へと引き戻されていた。
やがて、その声も嗄れ、声もなく泣き続けた当時のように、闇の中をさ迷う美月の頬も冷たく濡れている。
(――――憎い。恨めしい。自らの欲のみで動き、僕の大切な家族を奪った、人間が――――!)
突如闇の声の調子が変わり、美月の心にも弱った心や境遇に付けこみ、ありとあらゆるものを貪っていった憎むべき人達、特に父の会社の上司の顔が浮かぶ――――けれども、…………
あの時、冷たい頬を舐めて美月の凍えそうな心を温めてくれた存在は、いなかった――――?
美月と同じように、最愛の者達を失い嘆きつつも、凍り付いたように動かない美月の身体を抱きしめ、温めてくれた存在は――――?
ひとたび美月が疑問に思えば、そこからは数々の思い出が溢れるように押し寄せてくる――――
泣き疲れ、心身共に弱り切った美月と祖母を、ずっとずっと何日もあの山道のバス停で待ち続けていたクロ。
何度連れて帰ろうとしても、頑として動かんのよ、と大らかにそれを見守ってくれていた山の上の隣人達。
追い打ちをかけるように、だまされ傷ついた美月と祖母を、親身になって支えてくれた人達。
父母が憧れていた五月雨学園に入れたのは、美月の家庭の事情を黙って汲んでサポートしてくれた、翠のおかげ。
そして、何より――――
「……ごめんね。わたし、……わたしも人間なんだ」
美月は目の前にいる、凝った闇の塊のような何かに語りかけた。
あまりにも暗くて、その中は見通せない。
けれども、美月には何故か、傷つき嘆くその存在は人外である――そのことが分かってしまったから……。
そのまま、立ち止まってしまった美月に、
(おねえちゃん、……どうして?)
と、まるで差し出した手を振り払われたかのような、呆然とした声で、ソレは問いかける。
(――――憎いでしょ?許せないでしょ?……君だって、独りぼっちになって、そして人に酷いことをされたんでしょ?きっと、そうだ。そうに違いない!!)
その後はまた、人が変わったかのように激しい口調で美月に話しかけてくるソレ。
(――――分かってる。君は人だって。……だけど、きっと君はこちら寄りの人。憎いんだ。一人は、辛いんだ。寂しくて、寂しくて――――だから、ねぇ君、こちらへおいでよ?)
闇に響くその声は、とろりとした重みを持って、美月の心に押し迫ってきていた――――
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