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一角鬼の三つ目
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(巫女殿、今そちらへ行きますからな!お気をしっかりと――!)
大音声でなだれ込んできた妖しどもの先頭に居た巨体の鬼は、そういって美月に声をかけつつ、一目散にこちらへ来ようとする。
しかし、それをどういうわけか、他のあやかしどもが必死に留めようとしていた。
(一角の――!其方、ここの探索は、もう二度目じゃぞ?!)
(妖し第一班と六~九班まで、其方以外は壊滅じゃ……そもそもこの狭間に二度も入ること自体、無謀すぎる!)
(皆の犠牲の上に築かれた、導きの道筋を追ったわしら十班も、此処までたどり着くのがやっと……もう余力はほとんどないわい)
(ほれ見い――!如何に其方とはいえ、二度目ともなると、流石にもうあちこちと暗く染まりつつあるわ……)
(そのような状態であそこへ入れば、もう取り返しはつかぬぞ?)
(――其方があの闇に呑まれたら、巫女様の救出どころか、全滅じゃ!)
(やめろ!)(やめんか!)(現実を見い!かえって巫女様にご迷惑をかける……)
けれども、その巨体の鬼は全く聞く耳を持たない様子で丸太のような両腕を振るい、自分を留めようと束になってかかって来るあやかしどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、じりじりと美月の方へと近寄って来る――――
(ええい――!うるさいわい!この一角鬼の三つ目が、これしきのことで、巫女殿の期待を裏切ると思うてか?!――ええい、主ら、邪魔だ、邪魔だ!)
ついに、最後の妖しを投げ飛ばし、ためらいなく闇の中に飛び込んできたその鬼は、美月を見ると嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑った。
(やや――?!流石は、巫女殿!……この深い闇の中でも、しっかりと己をお持ちだ!やれ、良かった、良かった。後はこの、一角鬼の三つ目にお任せあれ!――必ず、巫女殿をお救い致すゆえ)
そういって、明るくガハハハッと笑い、手を指し伸ばしてくる鬼を、美月はもう怖いとは思わなかった――――
一方的に鬼ごっこを仕掛けられ、大勢の異形に追いかけ回された時は、怖くて怖くてどうしようもなくなり、パニックに陥っていた美月だったが、こう立て続けに非日常体験をこれでもかと押し付けられると、段々とより鋭く感覚が研ぎ澄まされてくる。
今思えば、……あのあやかし達は初めから美月に対し好意的で、親身になって相談に乗ってくれていた――――?……かもしれない。
そして、美月が死ぬ思いをしたあの鬼ごっこでさえも、彼らは心底楽しんでいた――――ならば、本当に悪気はなかった?……のかも、しれない。
だって、今、美月を見つめる彼らは皆、美月を案じ心配している目だ――――
それらのことが、すとんと胸の中に落ちてきた美月は、もはや鬼に逆らわず、むしろ進んで素直にツキを抱えていない右手を指し伸ばした。
何の躊躇もなく、自分の方へと伸ばされたその手に、三つ目は感動し打ち震えつつも、しっかりと握りしめる。
(おお、おお――――!我を信じ、その手を預けて下さるか。ならば、我、身命を賭して――――ややっ?!これは、どうしたことか……?)
美月を傷つけぬよう、やさしく慎重に、だが精一杯の力で引っ張った三つ目は、驚愕の声を上げる。
(我の剛力をもってしても、ビクともせず……?)
三つ目は困惑した表情で、立ち尽くした。
しかし、すぐにううむ、早う原因を確かねばなるまい、と唸りつつ、渋々と額に手を当て、ぶつぶつと何やら呟く。
すると、その下にあった三つ目の由来である、第三の目が開いていた。
そして、三つ目はその目でもって、暗闇に佇む美月の方をじっと見つめる――
(この深い闇の中でも、巫女殿は全く染まらず、全身が白く輝いておられる――――闇に毒された様子は微塵もない。ならば、何故――――?)
訳が分からず、呆然と美月を眺めていた三つ目は、急にはっと何かに気付いたかのように大声で叫んだ。
(み、巫女殿!貴女は左手に、その左手に、一体何を抱えておいでか?!)
大音声でなだれ込んできた妖しどもの先頭に居た巨体の鬼は、そういって美月に声をかけつつ、一目散にこちらへ来ようとする。
しかし、それをどういうわけか、他のあやかしどもが必死に留めようとしていた。
(一角の――!其方、ここの探索は、もう二度目じゃぞ?!)
(妖し第一班と六~九班まで、其方以外は壊滅じゃ……そもそもこの狭間に二度も入ること自体、無謀すぎる!)
(皆の犠牲の上に築かれた、導きの道筋を追ったわしら十班も、此処までたどり着くのがやっと……もう余力はほとんどないわい)
(ほれ見い――!如何に其方とはいえ、二度目ともなると、流石にもうあちこちと暗く染まりつつあるわ……)
(そのような状態であそこへ入れば、もう取り返しはつかぬぞ?)
(――其方があの闇に呑まれたら、巫女様の救出どころか、全滅じゃ!)
(やめろ!)(やめんか!)(現実を見い!かえって巫女様にご迷惑をかける……)
けれども、その巨体の鬼は全く聞く耳を持たない様子で丸太のような両腕を振るい、自分を留めようと束になってかかって来るあやかしどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、じりじりと美月の方へと近寄って来る――――
(ええい――!うるさいわい!この一角鬼の三つ目が、これしきのことで、巫女殿の期待を裏切ると思うてか?!――ええい、主ら、邪魔だ、邪魔だ!)
ついに、最後の妖しを投げ飛ばし、ためらいなく闇の中に飛び込んできたその鬼は、美月を見ると嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑った。
(やや――?!流石は、巫女殿!……この深い闇の中でも、しっかりと己をお持ちだ!やれ、良かった、良かった。後はこの、一角鬼の三つ目にお任せあれ!――必ず、巫女殿をお救い致すゆえ)
そういって、明るくガハハハッと笑い、手を指し伸ばしてくる鬼を、美月はもう怖いとは思わなかった――――
一方的に鬼ごっこを仕掛けられ、大勢の異形に追いかけ回された時は、怖くて怖くてどうしようもなくなり、パニックに陥っていた美月だったが、こう立て続けに非日常体験をこれでもかと押し付けられると、段々とより鋭く感覚が研ぎ澄まされてくる。
今思えば、……あのあやかし達は初めから美月に対し好意的で、親身になって相談に乗ってくれていた――――?……かもしれない。
そして、美月が死ぬ思いをしたあの鬼ごっこでさえも、彼らは心底楽しんでいた――――ならば、本当に悪気はなかった?……のかも、しれない。
だって、今、美月を見つめる彼らは皆、美月を案じ心配している目だ――――
それらのことが、すとんと胸の中に落ちてきた美月は、もはや鬼に逆らわず、むしろ進んで素直にツキを抱えていない右手を指し伸ばした。
何の躊躇もなく、自分の方へと伸ばされたその手に、三つ目は感動し打ち震えつつも、しっかりと握りしめる。
(おお、おお――――!我を信じ、その手を預けて下さるか。ならば、我、身命を賭して――――ややっ?!これは、どうしたことか……?)
美月を傷つけぬよう、やさしく慎重に、だが精一杯の力で引っ張った三つ目は、驚愕の声を上げる。
(我の剛力をもってしても、ビクともせず……?)
三つ目は困惑した表情で、立ち尽くした。
しかし、すぐにううむ、早う原因を確かねばなるまい、と唸りつつ、渋々と額に手を当て、ぶつぶつと何やら呟く。
すると、その下にあった三つ目の由来である、第三の目が開いていた。
そして、三つ目はその目でもって、暗闇に佇む美月の方をじっと見つめる――
(この深い闇の中でも、巫女殿は全く染まらず、全身が白く輝いておられる――――闇に毒された様子は微塵もない。ならば、何故――――?)
訳が分からず、呆然と美月を眺めていた三つ目は、急にはっと何かに気付いたかのように大声で叫んだ。
(み、巫女殿!貴女は左手に、その左手に、一体何を抱えておいでか?!)
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