(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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新たな芽生え 2

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 湊の問いに美月は首を傾げ、右手で後ろへと回っていた自分のカバンを引き寄せ、息を飲んだ。

「…………光ってる?何で――――?」

 美月が言葉を発したのと同時に、周りも思わず息を飲む。
 何故なら、美月がカバンを動かすのに合わせ、周囲の闇もまた、ぞろり、と大きく波打ち動いたから――――

「――――星野さん!今すぐ、そのカバンを手放せ……!」

 本能的に危険を察し切羽詰まった声で湊が叫ぶも、危機感のない美月は、不思議そうに湊を見返すのみ――――それを見るや否や、湊は鋭く口笛を吹く。
 すると、美月のカバンの中から何かが飛び出し、肩かけ用の紐を切り裂いた後、美月の手からカバンを叩き落とし、湊の手へと戻って来る。

「…………一体いつの間に、自分の式を彼女のカバンへと仕込んだのですか?」

 いつと問われたのならば、庭園で初めて会話と交わした時だが――、と心の中で答えつつも、やはり霖雨教師には構わず、湊は叫ぶ。

「星野さん、そのカバンから、出来るだけ早く離れろ――――!」

 その声と共に、それらを後ろで見守っていた三つ目が手を伸ばし、ツキを抱えた美月ごと自らの頭上高く持ち上げた。

 地に落ちた美月のカバンは闇の凝りの中でも淡く光り、それに惹き付けられるかのように、周囲の闇は少しずつそちらへと流れていく――――三つ目を縛る闇の鎖でさえも。

 三つ目の胸まで達していた闇の鎖は、徐々に美月のカバンの方へとその鎖を伸ばし、少しずつ、少しずつそちらへの方と移動を開始する。
 そして今では、三つ目はその腰の辺りまで、逆に解放されていた。

(おお――――!)
(この狭間が、次代を――――!)
(次の主を、自ら選択した――――?!)
(そ、そんなことが、在り得るのか――――?!)
(よ、……余程、一角のが、口に合わんかったか――――?)
(阿呆――!…………その様なこと、例え思っていても口にするな)
(そういうお主も、そう思ったのじゃろう?)
(……そりゃあ、闇に落ちたとはいえ、純粋無垢な山の子と一角の、とはねぇ…………)
(ワハハハッ――!ち、違いない――!!――――じゃが、)
(じゃが、これは――――千載一遇の、チャンスじゃ!)
(チャンスだ――――!)(絶好の、チャンス――――!!)
(おおーーい、一角のーー!!)
(早う、早う巫女様とツキと共にこちらへ来~~~い~~ーーー!!!)

 流石は巫女様、巫女様のカバン様万歳~!と、先程とは打って変わり、はしゃぎまわるあやかし第十班。
 それを、ぐぬぬぬ、あやつら後でよぉく覚えておけよ、と悔しげに低く唸る三つ目だったが、……闇の鎖の外れた後も、彼の身体は暗く染まったまま――――そして、未だ足元は闇の鎖に囚われたままだった。

 それに気づいた霖雨教師の、これは……ヤバいですね、という呟きを拾ったあやかし達は、今度は口々に叫び始める。

(い、一角の――!早う、こちらへ――――!)
(不味い、不味いの……!闇の鎖に縛られた後は、闇に染められるのか――?)
(――――そういえば、山の子も真っ黒なままじゃ!)
(え――?あれは、元々黒かったのでは――?)
(ど阿呆――!そんな訳、あるかい!――――じゃが、黒う染まっておっても、山の子は正気じゃ)
(一角の――!気を、気を確かにな――――!)
(先程の言を忘れるな!巫女様の期待は裏切らぬのじゃろう――――?!)

 必死に声掛けをする仲間を見て、三つ目は抜かせ、とやり返すが、その声の調子は今までとは違い、張りがない。
 余裕そうな三つ目の態度の裏を垣間見た美月は、逆に右手を伸ばし、三つ目の首辺りに抱きつきながら、真剣に願う――――

 ――――どうか、お願い。お願いします。
 そこにあるわたしのカバンとその中身なら、…………全部、全部此処に捧げますから――――!

 とある事情、此処と共鳴する原因の一因ともなった、財産巻き上げ事件により、美月と祖母はけっして裕福ではなくなった。
 むしろ、経済的には、厳しい。
 その中でコツコツと吟味し、集められたモノ達――――裕福、若しくは一般的な家庭では例えなくしたとしても、顧みられることもない程度のモノだが、……美月にとっては大切なモノ達だった。

 けれども、美月は知っている。
 
 生命はかけがえのないもので、失われてしまったら、決して取り返しのつかないものだ、ということを――――
 ……例え、少し前には見知らぬモノ、そして、今まで関わることのなかったあやかしモノだったとしても。

 美月の心からの願いを受けたのか、その瞬間、美月のカバンがひと際大きく輝く――――それと同時に、辺りにはおよそ此処に似つかわしくない、思いもよらぬ甘い、甘い香りが漂った。



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