片想われ ~in two world~

佐倉 みゆ

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第1章 ー始まりー

1夢 *不本意な出会い*

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朝起きて、ファミレスでバイトして、家に帰る。私は、そんな日々を過ごしていた。
今日も同じように、朝起きて、バイトに行っていた。





バイトの帰り、金曜日の今日はいつもより、激務の1日だった。今にも眠気で倒れそうな中、何とか家が見えて来た。


「あともうちょっと・・・」


じぶんを元気づけながら、重い1歩を踏み出そう・・・とした時、目の前に人影が出てきた。


「すいませんっ!」

「いえいえ。悪いのはこちらです。
初めまして、朝日奈さん」



・・・ん?ちょっと待って。最初の方は分かるけど・・・誰?何で名前知ってるの?何者?

きっと顔に出ていたのだろう。
目の前の人は、少し笑ってから私に話しかけた。


「僕はフィリール・ミィと申します。本名です。」

「は、はい・・・?」

「突然ですが・・・少しお手伝いを頼んでいいですか?」

「ほ、本当に突然ですね・・・えっと、内容によりますけど・・・
というか、何で私の名前を?
はっ、もしや不審者か何かですか?」


私はゆっくり3歩程後退した。


「えっ・・・まず不審者とかじゃないです!朝日奈さんの名前については、お手伝いして頂けたら全て話します。」


怪しさ満点だけど・・・普通にしてればかっこいいし、目を見る限り悪い人じゃ無さそう・・・まぁお手伝いしてあげてもいいかな・・・
今のも伝わったのか、お手伝いについて話し出した。


「では、お手伝いの内容をお話しますね。
僕の住む世界に来て、あるお店で働いて頂きたい。」


・・・僕の住む世界?あるお店で働いてほしい?

これは・・・新手のナンパか?いや、犯罪の線もある。
とりあえずこの場から逃げよう。本能的にそう思った。


「すいません。疲れてるので帰ります。さっきはぶつかりそうになっちゃって、すいませんでした。」




そう立ち去ろうとした時、数秒、体が数cm浮いた。


「・・・・・!!」

(なにこれ・・!)

言葉は発せなかった。


「言い忘れていましたが、僕は魔法が使えます。これで僕が違う世界の住民だということ、分かってもらえました?」

「・・・・・・・」

「僕の住む世界と言っても、地獄の様な世界ではないので御安心を。
逆に天国の様な場所ですが・・・
いかがです?」


明らかに怪しい。


「えっと・・・幽霊とかの類ですか?」

「いえ、魔法が使えるだけです。」

「・・・じゃあもしも私が、その・・・異世界?に行ったとして、ここ人間界での生活はどうなるんですか?」


行こうとか1ミリも思ってない。事実確認したいだけ。
そう頭の中で呟きながら訊いた。


「その点は大丈夫です。こちら人間界の世界で生活して、眠っている間に僕の住む世界へと来てもらいます。」

「・・・夢の世界、みたいなこと?」

「そうです」


興味が湧いていない訳じゃない。ただ、心のどこかが拒否している。


「なんか変なこととかさせられないよね?」

「もちろんです。」


見る分には、嘘はついなさそうだ。これでも心理学は少しだけ勉強していた。
そして私は「物は試し」と、決断した。


「・・・じゃあやります。でも1回だけです。働いたら、絶対に私の名前の事、説明してくださいね?」

「ありがとうございます。では今夜、夢の世界に繋がるようにしておきます。」


よく分からないが、取り敢えず「どうも」とだけ答えた。



「ではまた、夢の世界で。」



それだけ言うと、段々身体の色が薄れてゆき、やがて消えていった。


「何あれ。王子様気取り?イケメンってあんなもの?
・・・取り敢えず、早く家に帰りたい!
夢の世界がどーのこーのは、また明日にしよ・・・」





やっとの事で家に帰った私は、泥のようにベットに倒れた。


「うぅ、おやすみなさい・・・Zzz」


倒れた勢いで、そのままぐっすり寝てしまった。
そして私はすっかり忘れていた。




眠ると”夢の世界”と繋がっていたことをーーーー・・・




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