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第1章 ー始まりー
1夢 *不本意な出会い*
しおりを挟む朝起きて、ファミレスでバイトして、家に帰る。私は、そんな日々を過ごしていた。
今日も同じように、朝起きて、バイトに行っていた。
*
バイトの帰り、金曜日の今日はいつもより、激務の1日だった。今にも眠気で倒れそうな中、何とか家が見えて来た。
「あともうちょっと・・・」
じぶんを元気づけながら、重い1歩を踏み出そう・・・とした時、目の前に人影が出てきた。
「すいませんっ!」
「いえいえ。悪いのはこちらです。
初めまして、朝日奈さん」
・・・ん?ちょっと待って。最初の方は分かるけど・・・誰?何で名前知ってるの?何者?
きっと顔に出ていたのだろう。
目の前の人は、少し笑ってから私に話しかけた。
「僕はフィリール・ミィと申します。本名です。」
「は、はい・・・?」
「突然ですが・・・少しお手伝いを頼んでいいですか?」
「ほ、本当に突然ですね・・・えっと、内容によりますけど・・・
というか、何で私の名前を?
はっ、もしや不審者か何かですか?」
私はゆっくり3歩程後退した。
「えっ・・・まず不審者とかじゃないです!朝日奈さんの名前については、お手伝いして頂けたら全て話します。」
怪しさ満点だけど・・・普通にしてればかっこいいし、目を見る限り悪い人じゃ無さそう・・・まぁお手伝いしてあげてもいいかな・・・
今のも伝わったのか、お手伝いについて話し出した。
「では、お手伝いの内容をお話しますね。
僕の住む世界に来て、あるお店で働いて頂きたい。」
・・・僕の住む世界?あるお店で働いてほしい?
これは・・・新手のナンパか?いや、犯罪の線もある。
とりあえずこの場から逃げよう。本能的にそう思った。
「すいません。疲れてるので帰ります。さっきはぶつかりそうになっちゃって、すいませんでした。」
そう立ち去ろうとした時、数秒、体が数cm浮いた。
「・・・・・!!」
(なにこれ・・!)
言葉は発せなかった。
「言い忘れていましたが、僕は魔法が使えます。これで僕が違う世界の住民だということ、分かってもらえました?」
「・・・・・・・」
「僕の住む世界と言っても、地獄の様な世界ではないので御安心を。
逆に天国の様な場所ですが・・・
いかがです?」
明らかに怪しい。
「えっと・・・幽霊とかの類ですか?」
「いえ、魔法が使えるだけです。」
「・・・じゃあもしも私が、その・・・異世界?に行ったとして、ここでの生活はどうなるんですか?」
行こうとか1ミリも思ってない。事実確認したいだけ。
そう頭の中で呟きながら訊いた。
「その点は大丈夫です。こちらの世界で生活して、眠っている間に僕の住む世界へと来てもらいます。」
「・・・夢の世界、みたいなこと?」
「そうです」
興味が湧いていない訳じゃない。ただ、心のどこかが拒否している。
「なんか変なこととかさせられないよね?」
「もちろんです。」
見る分には、嘘はついなさそうだ。これでも心理学は少しだけ勉強していた。
そして私は「物は試し」と、決断した。
「・・・じゃあやります。でも1回だけです。働いたら、絶対に私の名前の事、説明してくださいね?」
「ありがとうございます。では今夜、夢の世界に繋がるようにしておきます。」
よく分からないが、取り敢えず「どうも」とだけ答えた。
「ではまた、夢の世界で。」
それだけ言うと、段々身体の色が薄れてゆき、やがて消えていった。
「何あれ。王子様気取り?イケメンってあんなもの?
・・・取り敢えず、早く家に帰りたい!
夢の世界がどーのこーのは、また明日にしよ・・・」
*
やっとの事で家に帰った私は、泥のようにベットに倒れた。
「うぅ、おやすみなさい・・・Zzz」
倒れた勢いで、そのままぐっすり寝てしまった。
そして私はすっかり忘れていた。
眠ると”夢の世界”と繋がっていたことをーーーー・・・
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