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小犬の気持ち
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しおりを挟む二人の間に、一瞬の静寂がただよう。
那月は、今まで少しも気が付かなかった、部活をする生徒達の声や、吹奏楽部の楽器の音が、している事に気がついた。
窓から入ってきた風が気持ち良くて、那月の熱くなった顔を冷やしてくれる。
それに、自分でも気が付かないうちに、ほんの僅かだけ口角が上がった。
すると、その時突然、九条が両肩を掴んできて、ビクッと驚く。そして、あっ、と思った時にはキスされていた。
さっきまで聞こえていた、色々な音がまったくわからない。
九条はすぐに離れたけれど、突然の事に、那月は目を丸くし、ポカンとするしかできなかった。
びっくりし過ぎて、すぐ近くにある九条の顔を、ただただ見つめる。
そうすると、九条の瞳の色が、薄い事に気が付き、綺麗だなあと少し見惚れた。
ぼんやりとしていた那月が、ふと我に返ると、静かな廊下を、九条に手を引かれて歩いていた。
しっかりカバンも持っているし、帰り支度をして、二人で昇降口に向かっているらしい。
でも、ちょっと待って、
なんで手なんか繋いでるの。
こんなの誰かに見られたら……。
それに、さっきのキスって……。
那月が震えながら慌てて、そっと手を離そうとするけれど、ギュッと、しっかり握りしめられていて出来そうにもない。
でも、そんな那月の反応に気が付いたのか、九条は背後へ振り返った。
しかもニッコリと笑いかけられて、那月はまた固まりそうになる。
でも、このままじゃまずいと一度息を整え、思い切って口を開く。
「…………九条君! ……手をっ
「君が、すごくボンヤリしていたから、繋いだんだ。一緒に帰ろうと言っても、反応が無いし。それに、一人にしておいたら、危ないからね」
いや、今の方がダメだと思う!
自分の事は、そのまま教室に、
放置しといてくれてよかったのに……。
その方がたぶん全然危なくない……。
「…………っ誰かに……み、見られたりしたら!……っそれに…………は、恥ずかしい……」
ちらりと見上げながら、那月が言うと、九条は一度瞬きをして、少し悲しそうな顔をした。
その顔を見ると、なんだか那月は、自分が悪い様な気がしてしまう。
「他に誰もいないから、恥ずかしくないよ。それに恋人とは、手を繋いで歩きたい。……君は嫌なのかな?」
「っうぅ……」
「……君は本当に可愛い。ボンヤリした君も可愛かったけど、恥ずかしがる君も可愛い。そうやってすぐ震えて、赤くなって、目が潤んで……。本当に可愛い!」
可愛いが過ぎる……。
もはや、誰の事を言っているのか、理解できない。
九条が話しているのは、自分の事なのか……。
自分は平凡だ。
平凡中の平凡だ!!
でも、九条の顔を見ると那月は、笑う事も出来なくて、必死になって、首を振るしかなかった。
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