小犬の気持ち

はづき惣

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小犬の気持ち

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 ここで待つと言った那月のことを、九条は少し寂しそうに見つめている。

 でも、少しの間そうして、那月が本当に疲れている様に見えたのか、名残惜しそうにその手を離した。

 
 い、言ってよかったあ……。


「……じゃあ行くけど、斉木、那月をあまりからかわないで」

「は~い、了解で~す」

「那月、斉木にいじめられたら、すぐ逃げるんだよ」

「いじめないよ、人聞き悪いな~。仲良く待ってるよ~」


 斉木はニンマリ笑いながら、九条の腕をペシっと叩く。

 
 でも、そうは言ってるけど、
 斉木君の笑顔ちょっと怖いんだよな……。

 
 少し気にはなったけど、とりあえず那月は急いで頷く。

 もう何でもいいから、早く落ち着きたくて。


「すぐに帰って来るから、ここで少し、待っていてね」


 九条はそう言って、小さくため息を吐くと、癖のない那月の髪を、優しくサラリと撫でて歩きだした。





 颯爽と立ち去る、九条の背中を見つめながら、那月はほっと安心する。

 やっと緊張から解放されて、ここで座り込みたいくらいだった。


 でも問題は、何も解決してない……。


 那月はここ数十分で、本当に疲れていた。

 九条の姿が見えなくなると、壁に寄りかかり身体の力を抜き、大きく大きく息を吐く。

 だけどその時、斉木が那月の肩を、トントンと軽く叩いた。


「小犬くんさ~」

「ブッッ!!」


 力を抜いていただけに、那月は思い切り吹き出す。


 斉木君……。
 待ってるって言ってくれたのは、
 ホントに助かったけど……。

 …………でも…………小犬って


 また斉木は、ニンマリ楽しげに笑っている。


「ふふふ~、小犬くんさ~、九条と付き合ってあげるんだね~」


 さっき言っていた、九条の言葉を忘れたみたいに、斉木はからかい混じりに、那月に話しかける。

 だけど少し言い方が変だった。

 那月はあれ? と思う。

 あの言い方だと、那月から告白した事にはならない。

 斉木は、那月が九条を好きで、告白したと思っているはず。

 だったら斉木は、那月が告白したから、九条が付き合ってあげる、と言わないと変だ。


 もしかして、斉木君って、何か知ってる?


「オレは~、九条が小犬くんを好きなの知ってるし~、付き合えて嬉しそうだから、いいけど~。小犬くんはいいのかな~?」

「…………」

「それにあの手紙って~、小犬くん書いてないよね~」

「!!」


 那月は本当にびっくりした。
 今日だけで、もう何回驚いたか分からない。


 斉木君は、手紙の人も知ってるのかも。


「それでも九条と、付き合うの~?」


 やっぱり、絶対、そうだ!


 那月は、斉木の顔から目を逸らし考える。

 斉木は分かっているのだ、那月が九条を好きじゃない事を。


 もう今が誤解を解く、
 最後のチャンスなんじゃない?


 九条が本当の事を知って怒ったらと思うと、ものすごく怖いけど、手紙の人にも悪いし、と那月はキリリと斉木を見上げた。


「…………っさ、斉木君、あのっ」


斉木の口角が、ニンマリと上がる。


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