11 / 33
小犬の気持ち
11
しおりを挟む…………もう………無理。
…………おれには何も言える気がしない。
…………もう全部、諦めようかな……。
一番最初に、本当の事を言えなかったばかりにと、放心した那月は、ボーっと何処か遠くを見る。
だんだんと那月の気持ちは、諦める方へと少しずつ少しずつ傾いていた。
…………誰かと付き合うの初めてだけど、
…………九条君すごく、おれを好きみたいだし。
…………ある意味、幸せかも?
…………好きと嘘をつく事になるけど。
そもそも、嘘の原因は斉木君だし……。
那月はぐるぐると考える、自分達は男同士だし、色々考えるとちょっと怖い。それに付き合ったとして、これから九条の事を好きになれるかなと。
「那月、帰ろうか」
「…………」
優しい声で九条はそう言い、那月の手を引き歩き始めた。
でも、放心している那月に反応はない。
九条に連れられるままに、ふらりふらりと足を動かしている。
「いいな~、オレも恋人とラブラブしたいな~。手なんか繋いじゃってさ~、オレだって繋ぎたい~。ずるい~」
「いくら可愛くても、那月とは駄目だ」
「それは分かってるって~! も~! 誰も、小……白井くんと繋ぎたいなんて、言ってないでしょ~。それにオレって猫派だし~」
「猫? それはいいけど。斉木、いくら那月が可愛いからって、那月を好きになったら……、どうなるか分かるよね……?」
低く厳しい声で、九条は斉木に念押しをする。
それに斉木は、ブルリと身体を震わせて大きく頷いた。
「友達の恋人、取るわけないでしょ! それも、九条が大好きな、小……白井くんの事なんて、間違ってもないから~!」
「……斉木、その言葉、忘れないようにね。…………それにしても、さっきから時々、那月の名前を間違えるけど。小白井じゃなくて白井だから、間違えるなんて那月に失礼だろ」
「あ、ああ! あはは~! ごめ~ん! すぐ、どっちだったか忘れちゃうんだよね~。これからは、ちゃんと間違えない様にするから~。白井くんも、ごめんね~」
「まったく斉木は……。那月は優しいから、斉木の事、許してしまうかもしれないけど、嫌なら斉木の事なんて、許さなくてもいいんだからね」
……うん、許さない。
……斉木君の事は、絶対に許さない!
違う意味で那月は、固く固く決意する。
たぶんもう那月には、この流れから自分で抜け出すことは出来そうにもない。
九条だけでも無理だったのに、更に斉木まで加わって、那月は何も話せないままに、あっという間に話が進んでしまった。
…………とりあえず、今は、もう諦めよう。
本当はおれが、九条君の事を好きじゃ無い
ってバレたら、ものすごく怖いけど……。
おれ九条君の事、好きになれるかな……?
そうして那月は、九条と手を繋いだまま、本当に本当に途方に暮れるのだった。
小犬(那月)の気持ち おしまい
1
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる