小犬の気持ち

はづき惣

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小犬の気持ち

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 …………もう………無理。 
 
 …………おれには何も言える気がしない。
 
 …………もう全部、諦めようかな……。


 一番最初に、本当の事を言えなかったばかりにと、放心した那月は、ボーっと何処か遠くを見る。

 だんだんと那月の気持ちは、諦める方へと少しずつ少しずつ傾いていた。
 

 …………誰かと付き合うの初めてだけど、

 …………九条君すごく、おれを好きみたいだし。
 
 …………ある意味、幸せかも?
 
 …………好きと嘘をつく事になるけど。

 そもそも、嘘の原因は斉木君だし……。
 

 那月はぐるぐると考える、自分達は男同士だし、色々考えるとちょっと怖い。それに付き合ったとして、これから九条の事を好きになれるかなと。


「那月、帰ろうか」

「…………」

 
 優しい声で九条はそう言い、那月の手を引き歩き始めた。 

 でも、放心している那月に反応はない。

 九条に連れられるままに、ふらりふらりと足を動かしている。


「いいな~、オレも恋人とラブラブしたいな~。手なんか繋いじゃってさ~、オレだって繋ぎたい~。ずるい~」

「いくら可愛くても、那月とは駄目だ」

「それは分かってるって~! も~! 誰も、小……白井くんと繋ぎたいなんて、言ってないでしょ~。それにオレって猫派だし~」

「猫? それはいいけど。斉木、いくら那月が可愛いからって、那月を好きになったら……、どうなるか分かるよね……?」


 低く厳しい声で、九条は斉木に念押しをする。

 それに斉木は、ブルリと身体を震わせて大きく頷いた。


「友達の恋人、取るわけないでしょ! それも、九条が大好きな、小……白井くんの事なんて、間違ってもないから~!」

「……斉木、その言葉、忘れないようにね。…………それにしても、さっきから時々、那月の名前を間違えるけど。小白井じゃなくて白井だから、間違えるなんて那月に失礼だろ」

「あ、ああ! あはは~! ごめ~ん! すぐ、どっちだったか忘れちゃうんだよね~。これからは、ちゃんと間違えない様にするから~。白井くんも、ごめんね~」

「まったく斉木は……。那月は優しいから、斉木の事、許してしまうかもしれないけど、嫌なら斉木の事なんて、許さなくてもいいんだからね」


 ……うん、許さない。
 
 ……斉木君の事は、絶対に許さない!


 違う意味で那月は、固く固く決意する。

 たぶんもう那月には、この流れから自分で抜け出すことは出来そうにもない。

 九条だけでも無理だったのに、更に斉木まで加わって、那月は何も話せないままに、あっという間に話が進んでしまった。


 …………とりあえず、今は、もう諦めよう。
 
 本当はおれが、九条君の事を好きじゃ無い
 ってバレたら、ものすごく怖いけど……。
 
 
 おれ九条君の事、好きになれるかな……?
 

 そうして那月は、九条と手を繋いだまま、本当に本当に途方に暮れるのだった。




    小犬(那月)の気持ち  おしまい
 


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