小犬の気持ち

はづき惣

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そのまた後の小犬

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 那月は別に怒っていて無言なわけではない。

 ただ九条との距離が近過ぎると、まだどうすればいいのか分からずに戸惑ってしまうだけで。

 
 九条君にはあれくらいは
 普通の事なのかもしれないけど……。


「それじゃあ俺、お昼は持ってきているから席を取っておくよ」


 人で混み合う学食に着くと、そう言って九条は空いている席を探しに行ってくれた。

 それに那月は少しだけホッとして、急いで食券を買いに向かう。


 おれが意識しすぎなのかなあ……?

 
 順番待ちの行列に並びながら、那月は小さくため息をこぼす。

 そんな那月の肩を、誰かが後ろからツンツンと突いた。


 この感じは……。


「小犬くんみっけ~」

「斉木君」

「オレも今からお昼なんだ~。ふふふ~、見たよ~。今日もラブラブだね~。二人で仲良くランチデートですか~。ふふふ~」

「斉木君……」


 振り返った那月は、案の定の斉木に更に大きなため気を吐く。

 今日もいつものニンマリ笑顔でとても機嫌が良さそうだ。


「なんでため息つくの~?! ほんと小犬くんはオレに冷たいな~」 


 斉木は那月の態度に文句を言う。けれどそれは斉木が二人のことをなんだかんだと一番揶揄うからだ。

 一応、二人の関係を秘密にしてる事は斉木も知っているのに、すぐこうやって揶揄ってくる。そうすると周りも便乗して騒ぎ立てるので本当に困る。

 悪意がない事は分かるけど、那月はいつかポロッと斉木の口が滑りそうでヒヤヒヤするのだ。


「あんまり人前で、そういうこと言わないでって前にも言ったよね?」

「え~? これくらい大丈夫でしょ~?」

「……斉木君!」

「……は~い」


 那月がジトーっとした目で斉木を見ると、九条が怖いのか口だけはいい返事をしてくれる。

 最近那月はちょっとだけ斉木の扱いを覚えた。

 それに那月も、これくらいの事でバレるとは思っていない。それでも一応斉木には釘は刺しておかないと。


 だけど最近は九条君がすぐにくっついてくるから、
 余計にそれも揶揄われる原因なんだよね……。


「小犬くん、難しい顔~。まあ大丈夫だって! 気にしない、気にしない~」

 斉木君にはもうちょっと気にして欲しいけど……。




 そうして、やっと昼ご飯を買えた那月は急いで九条を探す。結構混んでいたので時間が掛かってしまった。

 そんな那月の後を斉木も着いてくる。


「今日は~、九条が席確保してくれてるから、余裕だな~。小犬くん様々だね~」

「……斉木君」


 斉木君の分の席はあるのかなあと密かに思ったけど、那月は口にはしなかった。


「那月、こっちだよ」


 那月が辺りを見渡していると、すぐに気が付いた九条が席を立ち微笑みながらヒラヒラと手を振っている。


「遅くなっちゃってごめんね。席ありがとう」

「大丈夫、そんなに遅くないよ。……それより」

「小……白井くんに会ったから一緒に来ちゃった~。だ、け、ど、オレってお邪魔だったかな~?」

「そんなことより斉木、……また那月に何か言って揶揄ってたよね?」


 そう言いながら九条の微笑みはだんだんと消えていく。

 こうやって自分が揶揄われると怒ってくれるくせに、じゃあなんで九条はくっついてくるんだろうと那月は少し不思議に思った。

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