16 / 24
第16章「クーデターの夜」
しおりを挟む
偵察部隊は、十人で編成された。
建吾、ゴルド、シルヴァ。そして、人類連合軍から選抜された七人の精鋭。
彼らは、夜陰に紛れて王都を出発した。
目的地は、北の荒野にある魔王城。
片道で、約二週間の行程だ。
道中、建吾は偵察部隊のメンバーと親交を深めた。
隊長のヴァルター。四十代の歴戦の騎士で、魔王軍との戦いを何度も経験していた。
「魔王城を見に行くのは、初めてじゃない」
焚き火を囲みながら、ヴァルターは言った。
「五年前にも、偵察任務に参加した。あの時は、城の外観を観察するだけで精一杯だった」
「どんな城だった」
「異様だった。外から見ると、普通の城に見える。だが、よく見ると、おかしい。窓の位置がずれている。塔の高さが合わない。まるで、複数の城を無理やり繋ぎ合わせたような……」
「複数の城を繋ぎ合わせた……」
建吾は、その言葉を頭の中で反芻した。
元の世界でも、増築を繰り返した建物は、構造的に不安定になることがあった。
もし、魔王城がそういった建物なら、弱点を見つけられるかもしれない。
「城の図面は、残っていないのか」
「ない。魔王城は、魔王自身が魔法で作り上げたと言われている。人間の建築家が設計したものじゃない」
「魔法で作った……」
「ああ。だから、通常の攻城戦では落とせない。城自体が、魔法で守られている」
建吾は、考え込んだ。
魔法で作られた城。魔法で守られた城。
だが、どんな魔法にも、限界がある。
建物を維持するには、エネルギーが必要だ。それが魔力であれ、物理的な力であれ。
そのエネルギーの源を断てば、城は崩壊するはずだ。
「魔法の源を、見つければいい」
「魔法の源?」
「ああ。城を維持している魔法の核。それを破壊すれば、城は崩れる」
ヴァルターは、懐疑的な顔をした。
「そんな簡単な話じゃないだろう。魔法の核を見つけるのも、破壊するのも、至難の業だ」
「簡単じゃないのは、わかっている。だが、可能性はある」
建吾は、焚き火を見つめた。
炎が、夜の闘に揺れている。
「俺の仕事は、建物の構造を見ることだ。魔法で作られた城でも、構造はある。構造があれば、弱点もある」
「……そうか」
ヴァルターは、建吾を見つめた。
「あなたは、面白い人だ。内装工が、魔王城を攻略する。誰も考えたことがない発想だ」
「内装工だからこそ、できることがある」
建吾は、静かに言った。
「壁を立てる者は、壁を崩す方法も知っている」
◇ ◇ ◇
二週間後。
偵察部隊は、魔王城を視認できる位置に到達した。
荒野の只中に、それは聳えていた。
黒い城。
空に向かって伸びる、無数の塔。歪んだ城壁。不規則な窓。
ヴァルターの言った通り、それは複数の城を無理やり繋ぎ合わせたように見えた。
「あれが、魔王城か……」
ゴルドが、呆然と呟いた。
「なんて……不気味な城だ」
シルヴァも、眉をひそめていた。
「あの城には、強力な魔法が込められています。近づくだけで、体が重くなる……」
建吾は、城を観察していた。
目を細め、構造を読み取ろうとする。
外壁の材質。塔の配置。窓の位置関係。
そして——
「見えた」
「何が見えた」
「パターンだ」
建吾は、城を指差した。
「あの城、でたらめに見えるが、実際には規則性がある。塔の配置、窓の位置、すべてがある一点を中心に配置されている」
「一点……?」
「あそこだ」
建吾は、城の中央部分を指差した。
そこには、一際大きな塔がある。他の塔より高く、他の塔より太い。
「あの塔が、城の中心だ。おそらく、魔法の核もあそこにある」
ヴァルターが、目を見開いた。
「そこまで、わかるのか」
「建物の構造を見れば、わかる。あの塔に、すべての荷重が集中している。あそこを崩せば、城全体が崩壊する」
「だが、どうやって……」
「まだわからない。だが、近づいて調べれば、方法は見つかるはずだ」
建吾は、城を見つめ続けた。
答えは、きっとあそこにある。
内装工の目で、魔王城の弱点を見つけ出す。
それが、建吾の使命だった。
建吾、ゴルド、シルヴァ。そして、人類連合軍から選抜された七人の精鋭。
彼らは、夜陰に紛れて王都を出発した。
目的地は、北の荒野にある魔王城。
片道で、約二週間の行程だ。
道中、建吾は偵察部隊のメンバーと親交を深めた。
隊長のヴァルター。四十代の歴戦の騎士で、魔王軍との戦いを何度も経験していた。
「魔王城を見に行くのは、初めてじゃない」
焚き火を囲みながら、ヴァルターは言った。
「五年前にも、偵察任務に参加した。あの時は、城の外観を観察するだけで精一杯だった」
「どんな城だった」
「異様だった。外から見ると、普通の城に見える。だが、よく見ると、おかしい。窓の位置がずれている。塔の高さが合わない。まるで、複数の城を無理やり繋ぎ合わせたような……」
「複数の城を繋ぎ合わせた……」
建吾は、その言葉を頭の中で反芻した。
元の世界でも、増築を繰り返した建物は、構造的に不安定になることがあった。
もし、魔王城がそういった建物なら、弱点を見つけられるかもしれない。
「城の図面は、残っていないのか」
「ない。魔王城は、魔王自身が魔法で作り上げたと言われている。人間の建築家が設計したものじゃない」
「魔法で作った……」
「ああ。だから、通常の攻城戦では落とせない。城自体が、魔法で守られている」
建吾は、考え込んだ。
魔法で作られた城。魔法で守られた城。
だが、どんな魔法にも、限界がある。
建物を維持するには、エネルギーが必要だ。それが魔力であれ、物理的な力であれ。
そのエネルギーの源を断てば、城は崩壊するはずだ。
「魔法の源を、見つければいい」
「魔法の源?」
「ああ。城を維持している魔法の核。それを破壊すれば、城は崩れる」
ヴァルターは、懐疑的な顔をした。
「そんな簡単な話じゃないだろう。魔法の核を見つけるのも、破壊するのも、至難の業だ」
「簡単じゃないのは、わかっている。だが、可能性はある」
建吾は、焚き火を見つめた。
炎が、夜の闘に揺れている。
「俺の仕事は、建物の構造を見ることだ。魔法で作られた城でも、構造はある。構造があれば、弱点もある」
「……そうか」
ヴァルターは、建吾を見つめた。
「あなたは、面白い人だ。内装工が、魔王城を攻略する。誰も考えたことがない発想だ」
「内装工だからこそ、できることがある」
建吾は、静かに言った。
「壁を立てる者は、壁を崩す方法も知っている」
◇ ◇ ◇
二週間後。
偵察部隊は、魔王城を視認できる位置に到達した。
荒野の只中に、それは聳えていた。
黒い城。
空に向かって伸びる、無数の塔。歪んだ城壁。不規則な窓。
ヴァルターの言った通り、それは複数の城を無理やり繋ぎ合わせたように見えた。
「あれが、魔王城か……」
ゴルドが、呆然と呟いた。
「なんて……不気味な城だ」
シルヴァも、眉をひそめていた。
「あの城には、強力な魔法が込められています。近づくだけで、体が重くなる……」
建吾は、城を観察していた。
目を細め、構造を読み取ろうとする。
外壁の材質。塔の配置。窓の位置関係。
そして——
「見えた」
「何が見えた」
「パターンだ」
建吾は、城を指差した。
「あの城、でたらめに見えるが、実際には規則性がある。塔の配置、窓の位置、すべてがある一点を中心に配置されている」
「一点……?」
「あそこだ」
建吾は、城の中央部分を指差した。
そこには、一際大きな塔がある。他の塔より高く、他の塔より太い。
「あの塔が、城の中心だ。おそらく、魔法の核もあそこにある」
ヴァルターが、目を見開いた。
「そこまで、わかるのか」
「建物の構造を見れば、わかる。あの塔に、すべての荷重が集中している。あそこを崩せば、城全体が崩壊する」
「だが、どうやって……」
「まだわからない。だが、近づいて調べれば、方法は見つかるはずだ」
建吾は、城を見つめ続けた。
答えは、きっとあそこにある。
内装工の目で、魔王城の弱点を見つけ出す。
それが、建吾の使命だった。
0
あなたにおすすめの小説
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった
風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」
王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。
しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。
追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。
一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。
「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」
これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる