異世界転生したら内装工だった件 ~壁を立てて国を救う職人無双~

もしもノベリスト

文字の大きさ
17 / 24

第17章「王城防衛戦」

しおりを挟む
偵察から帰還した建吾は、すぐに国王に報告した。

「魔王城の弱点を、見つけました」

 玉座の間で、建吾は図面を広げた。

 偵察中に描いた、魔王城の概略図だ。

「城の中央にある大塔。ここに、魔法の核があります」

「魔法の核……」

 国王は、図面を見つめた。

「それを破壊すれば、城は崩壊する」

「はい。ただし、問題があります」

「問題とは」

「核は、塔の内部にあるはずです。外からは見えない場所——おそらく、壁の裏側か、地下です」

 建吾は、図面を指差した。

「内装工の用語で、『隠蔽部』と呼びます。配管や配線を通すための、見えない空間。魔法の核も、そういった場所に隠されている可能性が高い」

「隠蔽部……」

 国王は、その言葉を噛みしめるように呟いた。

「見つけることは、できるのか」

「できます。俺の目には、隠蔽部が見えます」

「どうやって」

「建物の構造を理解していれば、どこに隠蔽部があるかはわかります。壁の厚さ、柱の位置、床の傾斜。すべてが、ヒントになります」

 国王は、しばらく考え込んでいた。

 それから、顔を上げた。

「建吾。そなたに、新たな任務を与える」

「はい」

「魔王城に潜入し、魔法の核を破壊せよ。そのための部隊を編成し、指揮を執れ」

 建吾は、深く頷いた。

「承知しました」

      ◇  ◇  ◇

 潜入部隊は、二十人で編成された。

 建吾、ゴルド、シルヴァ。そして、偵察で行動を共にしたヴァルターと、彼の部下たち。

 リーゼロッテも、参加を志願した。

「私も、行きます」

「危険だ」

「承知しています。でも、私は領主です。民を守るために、戦う義務があります」

 建吾は、リーゼロッテの目を見た。

 そこには、揺るぎない決意があった。

「……わかった。だが、俺の指示には従ってもらう」

「はい」

 マルコは、王都に残った。

 防衛工事の指揮を続けるためだ。

「師匠」

 出発の前、マルコが建吾に近づいてきた。

「必ず、戻ってきてください」

「ああ」

「俺……師匠に教わったこと、全部覚えてます。だから、ここは任せてください」

「頼んだぞ」

 建吾は、マルコの肩を叩いた。

 弟子の成長が、嬉しかった。

      ◇  ◇  ◇

 潜入部隊は、夜陰に紛れて魔王城に接近した。

 前回の偵察で確認したルートを辿り、城壁の下に到達する。

 ここからが、本番だ。

「城内への侵入ルートは、三つある」

 建吾は、小声で説明した。

「正門、裏門、そして下水道。今回は、下水道を使う」

「下水道?」

 ヴァルターが、眉をひそめた。

「魔王城に、下水道があるのか」

「ある。どんな城にも、排水システムがある。魔法で作られた城でも、それは変わらない」

 建吾は、城壁の根元を指差した。

 そこには、小さな開口部があった。排水用の穴だ。

「あそこから入る。狭いが、人が通れる程度の幅はある」

 部隊は、一人ずつ排水口に潜り込んでいった。

 暗い。臭い。狭い。

 だが、誰も文句を言わなかった。

 任務の重要性を、全員が理解していた。

      ◇  ◇  ◇

 下水道を進むこと、一時間。

 建吾たちは、城の地下に到達した。

「ここからは、慎重に行く」

 建吾は、周囲を見回した。

 石造りの通路。天井は低く、横幅も狭い。

 だが、建吾の目には、別のものが見えていた。

 壁の構造。支持材の配置。空洞の位置。

「こっちだ」

 建吾は、仲間たちを導いた。

 通路を曲がり、階段を上り、さらに奥へ進む。

 途中、何度か魔物の気配を感じたが、うまく避けることができた。

 そして——

「ここだ」

 建吾は、ある壁の前で足を止めた。

「この壁の向こうに、魔法の核がある」

「どうしてわかる」

「壁の構造が、他と違う。厚さが異常に厚い。何かを隠すために、わざと厚くしている」

 ゴルドが、壁に触れた。

「確かに……普通の壁とは、質感が違うな」

「魔法が込められている」

 シルヴァが、目を細めた。

「強力な封印の魔法です。普通の方法では、破壊できません」

「普通の方法なら、な」

 建吾は、壁を見つめた。

「魔法を破る必要はない。壁を支えている下地を壊せばいい」

「下地……?」

「この壁は、魔法で強化されている。だが、壁自体を支えているのは、石と漆喰だ。その下地を崩せば、壁は倒れる」

 建吾は、道具袋から鑿(のみ)と槌(つち)を取り出した。

「俺が壁を崩す。お前たちは、見張りを頼む」

 ゴルドが頷いた。

「任せろ」

 建吾は、壁に向かった。

 まず、壁の構造を確認する。

 表面の石。その下の漆喰。さらに下の、支持材。

 弱点は——ここだ。

 建吾は、壁の一点に鑿を当てた。

 そして、槌で叩いた。

 コンコン。コンコン。

 静かに、だが確実に、壁を崩していく。

 これが、建吾の戦い方だ。

 剣や魔法ではなく、知識と技術で、敵を倒す。

 内装工としての、最後の施工が始まった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...