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名前しか知らない
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──ごめん、もう会えないんだよ。
高校の卒業式
俺は、3年間思い続けた親友にこう告げた。
その時の彼の顔はみないようにしていたから、どんな顔をしていたのかもわからない。
それからの俺は、彼のことを忘れるためにそういうサイトで相手を探しては欲望を発散していた。
でも、忘れることなんかできなくて、今も俺の好きな人はただ1人。
他の人なんか好きになったことすらない。
「莉央って、いつもどこか他を見てる感じするよな。そこがいーんだけどさ」
サイトで知り合って、身体の関係になってもう二年になる相手の隼。
俺は、隼との関係には居心地の良さを感じていた。
べつに、想い人ともう会えなくたって隼がいればそれでよかった。
ただ、それは隼がアイツに似てるからだと思う。
あとくされない関係を築いていた俺が唯一、一度だけじゃなくて、もっとって思った相手が隼だ。
お互いに、莉央と隼という名前しか知らない。
それすら本名なのかどうかもわからない。
年齢も職業もわからない。
ただ、わかるのはお互いお互いに男か好きだったということだけ。
会うのは水曜日と日曜日の週二回、俺の家で。
だから、隼の家も知らない。
それでも俺は隼と会う曜日が大好きだった。
ひとつ、習慣といえば隼の買ってくるスイーツを一緒に食べること。
毎回来る度に、色んなお店でスイーツを買ってくることが俺の密かな楽しみだったりする。
1度も同じ店のスイーツを買ってきたことがないから、隼はよっぽどそういうお店を知り尽くしていることになる。
なら、隼は女の子にモテそうなのに「もったいないな」と以前言ったら「莉央こそ女の子が好きそうな顔してるじゃん」と逆に言われた。
たしかに俺は「可愛い」と女の子に言われることが多いうえに、女の子とは比較的仲良くなれてしまうからか、告白されることも多かった。
でも、それは女の子が好きなんじゃなくて、女の子の気持ちが分かってしまうからなのに。
だからたとえ「もったいない」としても、俺の恋愛の好きは男にしか向かないから。
「.......あっ、隼.......っ」
「莉央.......っ、やべ.......イキそ.......」
「いいよ。一緒に.......いこ」
俺は隼とこうして一緒にイク瞬間が好きだ。
俺の中で隼のモノが一際大きくなって、ピクンと震える。
あぁ、俺は必要とされていると思えてしまう。
「莉央、キスしよう」
普段、こんなことを言わない隼が珍しく俺に抱きついてくる。
「隼?どうしたんだよ」
「キス.......ダメ?」
「ダメなわけないよ」
どちらからともなく、唇を重ねてどんどんと深くなる口付け。
「.......んっ、はぁっ」
身体を繋げるのとはまた違う、でもお互いの舌が絡まりあって、やめることなんかできなかった。
「俺、しばらく来れないかもしれない」
唇が離れて、一息ついたあとに隼から告げられた言葉は俺の頭を真っ白にするには十分だった。
「.......え?」
結構ショックを受けていることに気づきながらも、あえてそう見えないように振舞った。
「ちょっと仕事でな。ひと段落ついたらまた来るよ」
ポンポンっと俺の頭を撫でて、立ち上がる。
「お、おう.......」
「じゃ、また来るな」
名残惜しい様子もなく、服を着た隼はこの家をでていった。
ぽっかりと穴が空いたように感じるのは、隼が好きだった親友に似ているからだろうか。
そんな隼に会えないのは、親友に重ねて身体を繋げることができないからだろうか。
どちらにしても、俺はいま寂しいと思っている。
ただ、それを言うことができないのは、俺と隼の間にはなにもないから。
そもそも、俺と隼は名前しかお互いのことを知らないんだから。
高校の卒業式
俺は、3年間思い続けた親友にこう告げた。
その時の彼の顔はみないようにしていたから、どんな顔をしていたのかもわからない。
それからの俺は、彼のことを忘れるためにそういうサイトで相手を探しては欲望を発散していた。
でも、忘れることなんかできなくて、今も俺の好きな人はただ1人。
他の人なんか好きになったことすらない。
「莉央って、いつもどこか他を見てる感じするよな。そこがいーんだけどさ」
サイトで知り合って、身体の関係になってもう二年になる相手の隼。
俺は、隼との関係には居心地の良さを感じていた。
べつに、想い人ともう会えなくたって隼がいればそれでよかった。
ただ、それは隼がアイツに似てるからだと思う。
あとくされない関係を築いていた俺が唯一、一度だけじゃなくて、もっとって思った相手が隼だ。
お互いに、莉央と隼という名前しか知らない。
それすら本名なのかどうかもわからない。
年齢も職業もわからない。
ただ、わかるのはお互いお互いに男か好きだったということだけ。
会うのは水曜日と日曜日の週二回、俺の家で。
だから、隼の家も知らない。
それでも俺は隼と会う曜日が大好きだった。
ひとつ、習慣といえば隼の買ってくるスイーツを一緒に食べること。
毎回来る度に、色んなお店でスイーツを買ってくることが俺の密かな楽しみだったりする。
1度も同じ店のスイーツを買ってきたことがないから、隼はよっぽどそういうお店を知り尽くしていることになる。
なら、隼は女の子にモテそうなのに「もったいないな」と以前言ったら「莉央こそ女の子が好きそうな顔してるじゃん」と逆に言われた。
たしかに俺は「可愛い」と女の子に言われることが多いうえに、女の子とは比較的仲良くなれてしまうからか、告白されることも多かった。
でも、それは女の子が好きなんじゃなくて、女の子の気持ちが分かってしまうからなのに。
だからたとえ「もったいない」としても、俺の恋愛の好きは男にしか向かないから。
「.......あっ、隼.......っ」
「莉央.......っ、やべ.......イキそ.......」
「いいよ。一緒に.......いこ」
俺は隼とこうして一緒にイク瞬間が好きだ。
俺の中で隼のモノが一際大きくなって、ピクンと震える。
あぁ、俺は必要とされていると思えてしまう。
「莉央、キスしよう」
普段、こんなことを言わない隼が珍しく俺に抱きついてくる。
「隼?どうしたんだよ」
「キス.......ダメ?」
「ダメなわけないよ」
どちらからともなく、唇を重ねてどんどんと深くなる口付け。
「.......んっ、はぁっ」
身体を繋げるのとはまた違う、でもお互いの舌が絡まりあって、やめることなんかできなかった。
「俺、しばらく来れないかもしれない」
唇が離れて、一息ついたあとに隼から告げられた言葉は俺の頭を真っ白にするには十分だった。
「.......え?」
結構ショックを受けていることに気づきながらも、あえてそう見えないように振舞った。
「ちょっと仕事でな。ひと段落ついたらまた来るよ」
ポンポンっと俺の頭を撫でて、立ち上がる。
「お、おう.......」
「じゃ、また来るな」
名残惜しい様子もなく、服を着た隼はこの家をでていった。
ぽっかりと穴が空いたように感じるのは、隼が好きだった親友に似ているからだろうか。
そんな隼に会えないのは、親友に重ねて身体を繋げることができないからだろうか。
どちらにしても、俺はいま寂しいと思っている。
ただ、それを言うことができないのは、俺と隼の間にはなにもないから。
そもそも、俺と隼は名前しかお互いのことを知らないんだから。
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