俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ

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第二章~悪魔のことが好きなあたし~

親父の考え

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「暁」



俺の大学の休みを見計らってか、親父が家にやってきた。
心海のいない平日の休みを狙ってくるとか、計画性ばっちりだよな。



「……親父」


「ここで、茅ヶ崎さんと暮らしてるのか?」


「そうだけど」



心海は、この前親父に離れるように言われたと聞いた。



「また意味のないことをしてるのか?」


「意味のない……?」


「どうせずっと一緒にいることなんてできない。それなのにいま一緒にいることは意味のないことだとは思わないか?」


「……っ……ざけんな!俺は望まない結婚なんてするつもりはねぇよ!」



俺はもう高校三年だったあの頃とはちがう。
もう、親父の言いなりになるしかないと思ってた18のガキじゃねぇんだ。



「どうしたら分かるんだ……。萌香ちゃんと結婚してくれないといつかはうちの会社に影響が出るんだぞ?」


「そんなの知らねぇよ!俺は自分の立場なんてどうなってもいい!心海と一緒にいたいんだよ」



親父にとってはそんなの戯言にしか聞こえないのかもしれない。
でも、心海といることが今の俺のすべてだから。



「茅ヶ崎さんに被害が及ぶとしてもか?」


「は……?」


「茅ヶ崎さんの親について調べて、仕掛けることはできるんだよ」


「またそんなことっ!なんで親父は俺の幸せとかそういうのを考えてくれねぇんだよ!大事なのはあくまでも会社かよ!だから母さんだって……!」



あのころのことを思い出すと胸が苦しくなる。

アイツの手を離した俺と、親父のことを第1に考えて行動してきた母親の死。
すべてか重なって、俺は殻に閉じこもった。



「暁のことは大事にしたいと思ってる」


「ならっ!」


「でも、この結婚は暁のためにもなるから譲れないんだ。頼むから分かってくれ」



俺に対して深々と頭をさげる。



「俺は俺のすきなやつと一緒にいるのが幸せだよ」


「好きだけがすべてじゃないんだ、考えてくれ」



俺の肩をポンっと叩いて、リビングから出ていく。



「親父!」



親父の背中に呼びかける。



「……なんだ?」


「萌香さんも俺もお互い結婚したいとは思ってない。萌香さんのためにも頼むよ、親父」


「萌香ちゃんは、泰治だろう」


「あぁ……」



小さい頃は親父が大好きだった。
まだお爺様が生きてて、親父は専務だったかな。
お爺様が死んで、親父が社長になってから生活が一変した。

毎週日曜恒例になってた親父と出かけることもなくなり、親父は家に帰らなくなった。

母さんはそんな親父のために、食べてもくれないのに夕食も夜食も作り続けた。

俺が幼心に、親父のぶんも食べなきゃってなって必死に食べてめっちゃ太ったんだよな。



「こうしてワガママを言うのは高校生の時の腹いせか?」


「そんなんじゃねぇよ……」



いつか仕返してやろうと思ってた。
母さんをかえりみず、家に帰ってこないであげくには別の女に執着した親父。

精神的なストレスが溜まって、倒れた母さんは気づいたときには病に蝕まれてた。



「あの時お前に辛い思いをさせたのは悪いと思ってる」


「なら……」



同じことをまた繰り返すのは、おかしいのではないだろうか。



「でも、どうしてもこれは譲れない」


「……っ」



親父の気持ちもわからないわけではない。
会社が大事なのもわかる。

俺だって将来継ぐために、経営学を学んでる身だからどういうふうにするのが経営のためかなんてわかる。



「あの時みたいに、嘘をつかなくてもいいから……」


「……あの時」



あの時すごい好きだったのに、自ら手を離した。



「あの時は、こちらの都合で暁が好きだった彼女を傷つける言葉を言わせた。でも、今回はそんな言葉を告げる必要はないから」


「だから、心海に言ったっていうのかよ……」



傷つけるとか傷つけないとかじゃない。
ただ、俺が心海から離れたくないだけなんだ。



「そうしたらもう誰も傷つけないだろう。茅ヶ崎さんも事情をわかってくれてれば」
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