Observer ー観測者ー

selen

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砂漠の宝石

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惑星メルシダ。5000年前、この星に定められた人類生存確率ランクはCだった。
当時の故郷に比べれば極寒で酸素も薄い。そして、故郷にはあった“空”というものが、メルシダには無いらしい。
空は、“天”と違って様々な色をしたという。暗闇と他の光星に照らされた砂しか見たことの無い私には想像することすら出来ない。
他にも“自然”、というものが存在したという。
時が流れるとその姿、形、色を自在に変える仕組みで何よりも優しく、厳しい。時にあの偉大な科学力を持った先祖すらも太刀打ちできないような強大な力を持っていたんだとか。
何度も絶滅の危機を迎えながらも子孫を残し、この星に適応できるニンゲンへと進化を遂げた。
メルシダの気温に耐えられる体に。そして酸素が薄いため、徐々に呼吸を必要としなくなり肺と呼ばれた器官は稼働しなくなっていった。
そして、幾度の進化を繰り返し、メルシダ人は不完全な不死の身体を手に入れた。
ある程度成長すると容姿の劣化は止まる。不完全というのは、メルシダ人の死とは体から出現するクリスタルが体全体を覆ってしまうことだ。一度クリスタルが現れると、進行速度に個人差はあるものの、進行を完全に止めることは出来ない。
そしてクリスタルに包まれた体は、二度と日の目を浴びることはできない。これがメルシダ人にとっての“眠り”だ。
個体によってクリスタルが出現するタイミングは全く異なる。
生後すぐに出現する者もいれば、何百年もたった後に出現する者もいる。
どうしてか、そのクリスタルは私の体には出てこない。
生まれてから、かれこれ1000年近く経つのに。
「眠りたいな。私もクリスタルの中で。」
ソラフィリスにいるかもしれない仲間に夢を抱いていたあの子が眠って、なんの夢も希望もない私がまだ起きているんだろう。
砂の上に寝転んでいた私はごろりと寝返りを打った。
膝の裏まである金髪に砂が絡まる。
5000年前の先祖がこの星へやってくる時に乗っていた宇宙船が、ふと目に止まった。
過去の先祖が、私たちでは到底理解することも出来ない力で作った宇宙船だから、5000年たってもその物質が朽ちることはなかった。
砂まみれになりながらでも、依然としてその形を保っていた。
ただ、いつもと違う。
すぐに分かった。アンテナの部分が、微かに点滅を繰り返している。
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