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彼の正体とは①
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「もう自己紹介はすんでいるのかな」所長の山路はうきうきとした声で言った。
「いえ、これからですよ」彼はこちらに歩み寄ってきた。逆光の中でも際立っていた長身でスタイルのいいシルエットのほかに、人を射るようなまなざしを持つ整った顔立ちが現れた。今朝、駅の階段でカレンを抱き留めて助けた彼に間違いなかった。
「あらためて初めまして。佐々木 拓未と言います」
偶然?同じ苗字だ。カレンは続けて自分の名前を名乗った。
「じゃあ、座って話そうか」山路は嬉しそうに3人をソファーにすすめる。カレンは父誠一の隣で、拓未とは向かいあう形で座った。
「私から話すのでいいのかな?」所長の山路は父誠一に了解をとるように問う。
「ああ……」誠一はあきらめたような表情だった。
「カレンくん。ここに来るまでに簡単に私の研究内容を話したよね。ここの研究所では時間軸を移動させる研究を行っている。そして、装置ができかけたところに、彼、佐々木拓未くんが現れた。一週間前のことだ」
山路所長はもちろん、佐々木拓未も父誠一もしきりにカレンの様子を気にしている。
「は、はい……」カレンはちゃんと聞いていると相づちをうった。
「でね、彼はね……、君の子孫だということがわかった」
「シソン?」
「そう、子孫」
「シソンって?」カレンは頭の中でシソンの漢字を当てはめてみようとするが思いつかない。何かの専門用語かなにかなの?
「子孫は子孫。200年後に存在する君の孫の孫の孫…ってことだよ」
人を射るような目とは裏腹に佐々木拓未はやさしくカレンに言った。
「えっ?」
「びっくりするよね。こんなにいきなり言われても。私たちも1週間前彼が現れた時はそれはもうパニクッってしまってね。佐々木の子孫だというから慌てて佐々木を呼び出して……、なあ?」山路所長に同意を求められた誠一は疲れたように目頭を押さえた。
カレンはまじまじと佐々木拓未を見た。今の話が本当なら、目の前の彼とは血がつながっているということになる。しかし、整った顔立ちの彼と自分は悲しいくらいに似ているとおもわれる個所がない。
次にカレンは誠一を見た。とても信じられない話に父はどう思っているのか?
「証拠があったんだ」誠一は静かに言った。
「いくつか証拠を示してくれた。その一つは……カレンは今朝、駅の階段で転びそうになっただろう?」
あっ、とカレンは思った。今朝佐々木拓未に助けられたときの違和感。彼はカレンがつまづいて階段から落ちる直前に振り向き、そしてカレンを抱き留めた。まるで、カレンが階段から落ちてくるのを予見していたかのように。
「いえ、これからですよ」彼はこちらに歩み寄ってきた。逆光の中でも際立っていた長身でスタイルのいいシルエットのほかに、人を射るようなまなざしを持つ整った顔立ちが現れた。今朝、駅の階段でカレンを抱き留めて助けた彼に間違いなかった。
「あらためて初めまして。佐々木 拓未と言います」
偶然?同じ苗字だ。カレンは続けて自分の名前を名乗った。
「じゃあ、座って話そうか」山路は嬉しそうに3人をソファーにすすめる。カレンは父誠一の隣で、拓未とは向かいあう形で座った。
「私から話すのでいいのかな?」所長の山路は父誠一に了解をとるように問う。
「ああ……」誠一はあきらめたような表情だった。
「カレンくん。ここに来るまでに簡単に私の研究内容を話したよね。ここの研究所では時間軸を移動させる研究を行っている。そして、装置ができかけたところに、彼、佐々木拓未くんが現れた。一週間前のことだ」
山路所長はもちろん、佐々木拓未も父誠一もしきりにカレンの様子を気にしている。
「は、はい……」カレンはちゃんと聞いていると相づちをうった。
「でね、彼はね……、君の子孫だということがわかった」
「シソン?」
「そう、子孫」
「シソンって?」カレンは頭の中でシソンの漢字を当てはめてみようとするが思いつかない。何かの専門用語かなにかなの?
「子孫は子孫。200年後に存在する君の孫の孫の孫…ってことだよ」
人を射るような目とは裏腹に佐々木拓未はやさしくカレンに言った。
「えっ?」
「びっくりするよね。こんなにいきなり言われても。私たちも1週間前彼が現れた時はそれはもうパニクッってしまってね。佐々木の子孫だというから慌てて佐々木を呼び出して……、なあ?」山路所長に同意を求められた誠一は疲れたように目頭を押さえた。
カレンはまじまじと佐々木拓未を見た。今の話が本当なら、目の前の彼とは血がつながっているということになる。しかし、整った顔立ちの彼と自分は悲しいくらいに似ているとおもわれる個所がない。
次にカレンは誠一を見た。とても信じられない話に父はどう思っているのか?
「証拠があったんだ」誠一は静かに言った。
「いくつか証拠を示してくれた。その一つは……カレンは今朝、駅の階段で転びそうになっただろう?」
あっ、とカレンは思った。今朝佐々木拓未に助けられたときの違和感。彼はカレンがつまづいて階段から落ちる直前に振り向き、そしてカレンを抱き留めた。まるで、カレンが階段から落ちてくるのを予見していたかのように。
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