俺のことだけを見てればいいのに。

とらまーる

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第三章

修学旅行二日目 2

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「――起きて。着いたよ」
「……ん。」

 誰かの声に起こされ、隼人か、と思いながら目を開けると、目の前にいたのは萩田さん。
 なんで? と思うと同時に、納得する。

 俺は隼人にとってただの幼馴染だから。隼人には、別に好きな人ができたんだから。俺にそんな構ってられないよな。

「……っ」
「藤山君、泣いてたよ。
……どうしたの?」
「大丈夫、だから。」

 萩田さんに「泣いていた」と言われ、くしゃっと前髪をつかみながら小さく告げた。
 本当は全く大丈夫じゃない。むしろ、今すぐにでも号泣してしまいそうだ。けど、必死でそれを我慢して立ち上がり、バスを降りた。


 降りてからもうつむいたまま、フラフラしながらみんなについていく。何度も声を掛けられたが、すべてに「大丈夫」と返し足を動かす。

「藤山君、休んだ方が……」
「大丈夫。」
「いやでも……」
「そうだぞ、休まないと倒れるかもしれねーぞ」
「大丈夫。」
「……こういう時の早乙女のはずなんだが……」

 隼人の名前が出てきて、思わず視線で探してしまった。顔を上げてないので周りにはバレていないけど、俺が見たのは嫌な現実で。
 隼人は、たくさんの男女に囲まれながら楽しそうに話していた。あの中に、隼人の好きな人がいるのだろうか。ふと自然に考えてしまい、立ち止まった。

「ライライ?」
「藤山君?」
「ッ大丈夫。」

 声を掛けられて我に返り、また足を動かす。
 けれど、さっき考えてしまったことから逃げたくて。目の前の隼人を囲む軍団を視界に入れたくなくて。下を向いたまますたすたとわきの方に向かって歩いた。

「っわ、おい!」
「危ないよ!」

 前を見ていなかったので、男の人にぶつかりそうになる。しかし、それをぎりぎり翔に腕を引かれることで免れた。
 ぼふっと翔の腕の中に納まり、また隼人を思い出す。隼人を思い出したくなくて、ぐりぐりと翔の胸に頭をこすりつける。

「お、おい? ライライ?」

 それでも頭から隼人が出ていかなくて。
 ――ついに、俺は泣いてしまった。

「っうぅ、ひくっ……!」
「はあ!? なんで泣くんだよ!?」
「藤山君!? 今日なんかおかしいよ!」

 周りから視線を感じるも、泣き止むことはできない。ガキか、と自分に突っ込んでも止められない。

 結局、午前中の歩きは全て翔に運ばれた。
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