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第2章・君がくれたきっかけと、後悔の意味
第7話
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食事を終えて部屋に戻ると、カーディガンを持って外へ出た。言われたとおり、少し散歩をしようと思ったのだ。
宛もなく歩いていると、例の神社――紫之宮神社の通りにつく。道の先に神社が見えた。鳥居の下にあの日見た黒猫を見つけ、足を止める。
黒猫は僕を見て、「よお」とでもいうようにひとつ鳴くと、そのままてんてんと跳ねるような歩きかたで神社の奥へと入っていく。
鳥居を見る。
紫之宮ではなく紫之宮と読むらしい。
「縁結びか……」
この前来たときはお参りはしなかったし、せっかくだから寄っていこうかな。
僕は鳥居をくぐった。
石畳が敷かれた参道の両脇には、淡い色の葉をつけた銀杏並木。銀杏の木漏れ日が落ちる参道を抜けると、静けさの落ちた境内が広がっている。
お賽銭を投げ入れて、鈴を鳴らす。
「…………」
お参りを済ませて来た道を戻ろうと回れ右をすると、能舞台が見えた。
あの日満開だった桜は、今や風が吹くたびに花びらを散らしている。見上げると、だいぶ散ってしまっているが、まだまだ美しい。桜の花は、散り際のほうが美しいと思うのは、僕だけだろうか。
「にゃあ」
黒猫の声がした。見ると、黒猫が舞台の上で我が物顔で毛繕いをしている。
そっと近付くと、幻想的な光景が僕の目を焼いた。
「わ……」
能の舞台の床には桜の花びらが広がっている。薄紅色の絨毯のなかに落ちる木漏れ日は、まるでそういう模様のようだ。
しばらくその光景を楽しんだあと、不意に気になって周囲を見回す。前にここで会ったあの子はいないようだ。
いや、べつに会いたいわけじゃないし、がっかりなんてしていない。ただ、なんとなくいそうな気がしたから、ちょっと確認しただけだ。
……と、なぜかいいわけめいたセリフが脳内を過ぎって、振り払うように頭を振る。
「にゃあ」
黒猫が鳴いた。
そっと、驚かせないようにそばに寄り、舞台に背を預ける。
黒猫と同じような体勢で、ぼんやりと桜を見上げた。桜を散らせる風は、ほんのり夏の気配を連れている。
もうすぐ、春が終わるのか。そうしたら、ひとりぼっちの夏が来る。
胸のなかの小さな罪悪感を置き去りにしたまま、僕は次の季節に行くのだ。
――帰ろう。
お参りも済ませたし、もうここに用事はない。
その場を去ろうとしたとき、ふと吹いた風が桜の梢を揺らした。
花びらが僕に向かって降り注ぐ。
「……あれ」
その光景に、僕はなぜか強い既視感を覚えた。
なんだろう。なんかこの光景、前にもどこかで見たような気がする……。
降り落ちる花びらを見上げていると、背後でざりっと砂利を踏み締める音がした。
「あーっ!! 汐風くんだっ!」
振り向きざま、弾けるような声が聞こえた。
「君……」
千鳥さんだ。千鳥さんは、初めて会ったあの日と同じ、ノースリーブの白いワンピースを着ている。
「……あの、前も思ったんだけど、その格好、寒くないの?」
「え? ぜんぜん?」
ふつうじゃない? ケロッと返され、僕は「そうなんだ」としか返せなくなる。
陽は暖かいが、まだまだ長袖は手放せない気候だ。特に今日みたいな風がある日は。
「まさかまたここで会えるなんてすごくない!? 汐風くんって、もしかしてここの近くに住んでるの?」
「え……」
一瞬だけ、言葉につまってしまう。名前で呼ばれたことに驚いたのだ。同年代の子に下の名前で呼ばれるのなんて、久しぶりすぎて。
「……まぁ、この通りの先に家がある」
「へぇ! そうなんだ! 奇遇だね。私もだよ!」
「え、そうなの?」
「うん! 街中に結賀大学附属病院ってあるでしょ。ほら、あそこ!」
千鳥さんはそう言って、銀杏の木の先のほうを指さした。
「……え、君、病院に住んでるの?」
ということはつまり、彼女は入院しているということだ。しかし入院しているなら、ふつう外には出られないのではなかろうか。そう思った矢先、彼女は先回りするように言った。
「でもね、十時は抜け出していい時間なんだよ!」
「……いや、抜け出していい時間ってなんだよ」
外来患者ならまだしも、入院患者にそんな時間はぜったいにないと思うんだが。
「だって病院って、退屈なんだもん」
てへ、と、千鳥さんはペロッと舌を出して笑った。
「いや……それぜったいまずいでしょ。主治医の先生とか知ってるの?」
「いいんだよ! 私、どこも悪くないもん!」
「どこも悪くなかったら、入院なんてしないでしょ」
「おぉ、鋭い!」
「いいから、早く戻りなよ」
「大丈夫! 先生には最近は安定してるからどんどんしたいことしなさいって言われてるし!」
「……えぇ……」
「それより見て、この子! 今日もここにいるの。昨日も一昨日もここにいたんだよね。もしかしたら、この辺に住んでるのかな?」
と、千鳥さんは舞台の上に転がっている黒猫を見て、無邪気に言った。
というか今、どさくさに紛れて昨日も一昨日も抜け出したと言わなかったか、この子。
「さぁ、野良かどうかも分からないし。この子、まだ仔猫だから母猫も近くにいるかもだし」
「え? この子、仔猫なの?」
見れば分かるだろう、と言いたくなったが、前回会ったとき、猫を初めて見ると言っていたことを思い出し、それを呑み込む。
「……そういえば、猫見たことなかったんだっけ」
「うん」
「この子は小さいから、仔猫だと思うよ」
「へぇーそうなんだ」
素直に感心しているようなその横顔を、少し不憫に思った。
ただの仔猫すら見たことがないなんて、彼女はこれまでいったいどんな人生を送ってきたのだろうか。
「辛くない?」
口走ってから、ハッとした。聞いてはいけないことだったかもしれない。
ちらりと千鳥さんを見ると、彼女は僕の言葉に特段気を悪くしたふうでもなく、首を傾げた。
「どういう意味?」
「……あ、いや、その……僕は、入院ってしたことないから分からないけど、いろいろ制限とかされるんでしょ?」
千鳥さんは顎の辺りに手をやって、のんびりと空を見上げた。
「うーん、そうなのかなぁ? 私、生まれたときからずっとこの生活だから、これが私にとっての当たり前だし。よく分かんないや」
のんびりとした声で言う千鳥さんを、僕はやはり不憫に思った。
この子には、自身の生活を悲しむ余地すらないんだ、と。
「これが私の日常だもの! お姉ちゃんはすごく優しいし、先生も看護師さんも優しくていろいろ教えてくれるから大好き!」
「……お姉さんがいるんだ?」
「うん! お姉ちゃんが私の名前を付けてくれたんだ」
千鳥さんは、桜を見上げながら言った。
「へぇ……」
お姉さんが名付け親ということは、千鳥さんとは歳が離れているんだろうか。
「あのね、ソメイヨシノってね、もとは一本の木から生まれたんだって」
「え?」
「桜ってすごくきれいだけど、実を結ばないから子種を増やせないんだって。でも、世界中のどの花より有名で、人種を越えて愛されてるでしょ? それってすごいことだと思わない!?」
「まぁ……」
「桜は、じぶんを愛してくれるたったひとりのひとと巡り会ったことで、世界中に広がっていったんだよ。こういうのを、運命の出会いって言うんだと思うんだ!」
そう言われてハッとする。
僕は、この話をどこかで聞いたことがある。だけど、どこだっけ……?
「私もね、そうなりたいって思ってるんだ」
「……え、増殖したいってこと?」
我に返って訊ねると、彼女はぷはっと息を吐いて笑った。
「あははっ! まさか! 違うよ。そうじゃなくて、役割がなくても、みんなから愛されるひとになりたいってこと」
そう言って、千鳥さんは桜を見上げる。つられるように、僕も桜へ視線を流した。
「……桜になりたい。実を結ばなくてもいいから、たったひとりでいいから、だれかに愛される花に」
「……それって、どういう……」
彼女の言葉の意味が分からず訊ねるが、千鳥さんはただ静かに笑って桜を見上げている。
「私ね、病院には桜がないから、桜が見たくなったらいつもここに来るの。この花を見たら、この世に必要のないものなんてないんだって思えるから。だれかが私を見つけてくれる気がするから」
その言い回しは、やはりどこか引っかかって、僕は再び千鳥さんを見た。
桜を見上げる千鳥さんの瞳には、どことなく寂寥感が滲んでいるように思えた。
「意味があるの、ぜったい。どんなものにも、どんなことにも」
意味、か。そうなのだろうか。
宛もなく歩いていると、例の神社――紫之宮神社の通りにつく。道の先に神社が見えた。鳥居の下にあの日見た黒猫を見つけ、足を止める。
黒猫は僕を見て、「よお」とでもいうようにひとつ鳴くと、そのままてんてんと跳ねるような歩きかたで神社の奥へと入っていく。
鳥居を見る。
紫之宮ではなく紫之宮と読むらしい。
「縁結びか……」
この前来たときはお参りはしなかったし、せっかくだから寄っていこうかな。
僕は鳥居をくぐった。
石畳が敷かれた参道の両脇には、淡い色の葉をつけた銀杏並木。銀杏の木漏れ日が落ちる参道を抜けると、静けさの落ちた境内が広がっている。
お賽銭を投げ入れて、鈴を鳴らす。
「…………」
お参りを済ませて来た道を戻ろうと回れ右をすると、能舞台が見えた。
あの日満開だった桜は、今や風が吹くたびに花びらを散らしている。見上げると、だいぶ散ってしまっているが、まだまだ美しい。桜の花は、散り際のほうが美しいと思うのは、僕だけだろうか。
「にゃあ」
黒猫の声がした。見ると、黒猫が舞台の上で我が物顔で毛繕いをしている。
そっと近付くと、幻想的な光景が僕の目を焼いた。
「わ……」
能の舞台の床には桜の花びらが広がっている。薄紅色の絨毯のなかに落ちる木漏れ日は、まるでそういう模様のようだ。
しばらくその光景を楽しんだあと、不意に気になって周囲を見回す。前にここで会ったあの子はいないようだ。
いや、べつに会いたいわけじゃないし、がっかりなんてしていない。ただ、なんとなくいそうな気がしたから、ちょっと確認しただけだ。
……と、なぜかいいわけめいたセリフが脳内を過ぎって、振り払うように頭を振る。
「にゃあ」
黒猫が鳴いた。
そっと、驚かせないようにそばに寄り、舞台に背を預ける。
黒猫と同じような体勢で、ぼんやりと桜を見上げた。桜を散らせる風は、ほんのり夏の気配を連れている。
もうすぐ、春が終わるのか。そうしたら、ひとりぼっちの夏が来る。
胸のなかの小さな罪悪感を置き去りにしたまま、僕は次の季節に行くのだ。
――帰ろう。
お参りも済ませたし、もうここに用事はない。
その場を去ろうとしたとき、ふと吹いた風が桜の梢を揺らした。
花びらが僕に向かって降り注ぐ。
「……あれ」
その光景に、僕はなぜか強い既視感を覚えた。
なんだろう。なんかこの光景、前にもどこかで見たような気がする……。
降り落ちる花びらを見上げていると、背後でざりっと砂利を踏み締める音がした。
「あーっ!! 汐風くんだっ!」
振り向きざま、弾けるような声が聞こえた。
「君……」
千鳥さんだ。千鳥さんは、初めて会ったあの日と同じ、ノースリーブの白いワンピースを着ている。
「……あの、前も思ったんだけど、その格好、寒くないの?」
「え? ぜんぜん?」
ふつうじゃない? ケロッと返され、僕は「そうなんだ」としか返せなくなる。
陽は暖かいが、まだまだ長袖は手放せない気候だ。特に今日みたいな風がある日は。
「まさかまたここで会えるなんてすごくない!? 汐風くんって、もしかしてここの近くに住んでるの?」
「え……」
一瞬だけ、言葉につまってしまう。名前で呼ばれたことに驚いたのだ。同年代の子に下の名前で呼ばれるのなんて、久しぶりすぎて。
「……まぁ、この通りの先に家がある」
「へぇ! そうなんだ! 奇遇だね。私もだよ!」
「え、そうなの?」
「うん! 街中に結賀大学附属病院ってあるでしょ。ほら、あそこ!」
千鳥さんはそう言って、銀杏の木の先のほうを指さした。
「……え、君、病院に住んでるの?」
ということはつまり、彼女は入院しているということだ。しかし入院しているなら、ふつう外には出られないのではなかろうか。そう思った矢先、彼女は先回りするように言った。
「でもね、十時は抜け出していい時間なんだよ!」
「……いや、抜け出していい時間ってなんだよ」
外来患者ならまだしも、入院患者にそんな時間はぜったいにないと思うんだが。
「だって病院って、退屈なんだもん」
てへ、と、千鳥さんはペロッと舌を出して笑った。
「いや……それぜったいまずいでしょ。主治医の先生とか知ってるの?」
「いいんだよ! 私、どこも悪くないもん!」
「どこも悪くなかったら、入院なんてしないでしょ」
「おぉ、鋭い!」
「いいから、早く戻りなよ」
「大丈夫! 先生には最近は安定してるからどんどんしたいことしなさいって言われてるし!」
「……えぇ……」
「それより見て、この子! 今日もここにいるの。昨日も一昨日もここにいたんだよね。もしかしたら、この辺に住んでるのかな?」
と、千鳥さんは舞台の上に転がっている黒猫を見て、無邪気に言った。
というか今、どさくさに紛れて昨日も一昨日も抜け出したと言わなかったか、この子。
「さぁ、野良かどうかも分からないし。この子、まだ仔猫だから母猫も近くにいるかもだし」
「え? この子、仔猫なの?」
見れば分かるだろう、と言いたくなったが、前回会ったとき、猫を初めて見ると言っていたことを思い出し、それを呑み込む。
「……そういえば、猫見たことなかったんだっけ」
「うん」
「この子は小さいから、仔猫だと思うよ」
「へぇーそうなんだ」
素直に感心しているようなその横顔を、少し不憫に思った。
ただの仔猫すら見たことがないなんて、彼女はこれまでいったいどんな人生を送ってきたのだろうか。
「辛くない?」
口走ってから、ハッとした。聞いてはいけないことだったかもしれない。
ちらりと千鳥さんを見ると、彼女は僕の言葉に特段気を悪くしたふうでもなく、首を傾げた。
「どういう意味?」
「……あ、いや、その……僕は、入院ってしたことないから分からないけど、いろいろ制限とかされるんでしょ?」
千鳥さんは顎の辺りに手をやって、のんびりと空を見上げた。
「うーん、そうなのかなぁ? 私、生まれたときからずっとこの生活だから、これが私にとっての当たり前だし。よく分かんないや」
のんびりとした声で言う千鳥さんを、僕はやはり不憫に思った。
この子には、自身の生活を悲しむ余地すらないんだ、と。
「これが私の日常だもの! お姉ちゃんはすごく優しいし、先生も看護師さんも優しくていろいろ教えてくれるから大好き!」
「……お姉さんがいるんだ?」
「うん! お姉ちゃんが私の名前を付けてくれたんだ」
千鳥さんは、桜を見上げながら言った。
「へぇ……」
お姉さんが名付け親ということは、千鳥さんとは歳が離れているんだろうか。
「あのね、ソメイヨシノってね、もとは一本の木から生まれたんだって」
「え?」
「桜ってすごくきれいだけど、実を結ばないから子種を増やせないんだって。でも、世界中のどの花より有名で、人種を越えて愛されてるでしょ? それってすごいことだと思わない!?」
「まぁ……」
「桜は、じぶんを愛してくれるたったひとりのひとと巡り会ったことで、世界中に広がっていったんだよ。こういうのを、運命の出会いって言うんだと思うんだ!」
そう言われてハッとする。
僕は、この話をどこかで聞いたことがある。だけど、どこだっけ……?
「私もね、そうなりたいって思ってるんだ」
「……え、増殖したいってこと?」
我に返って訊ねると、彼女はぷはっと息を吐いて笑った。
「あははっ! まさか! 違うよ。そうじゃなくて、役割がなくても、みんなから愛されるひとになりたいってこと」
そう言って、千鳥さんは桜を見上げる。つられるように、僕も桜へ視線を流した。
「……桜になりたい。実を結ばなくてもいいから、たったひとりでいいから、だれかに愛される花に」
「……それって、どういう……」
彼女の言葉の意味が分からず訊ねるが、千鳥さんはただ静かに笑って桜を見上げている。
「私ね、病院には桜がないから、桜が見たくなったらいつもここに来るの。この花を見たら、この世に必要のないものなんてないんだって思えるから。だれかが私を見つけてくれる気がするから」
その言い回しは、やはりどこか引っかかって、僕は再び千鳥さんを見た。
桜を見上げる千鳥さんの瞳には、どことなく寂寥感が滲んでいるように思えた。
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意味、か。そうなのだろうか。
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