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第6章
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「あ、そだ。ここ、お土産コーナーのとなりにカフェあったよね! ショーケースのほかに焼き菓子も置いてあったし、なんかご当地お菓子とか売ってないかな?」
「どうだろう……」
「行ってみない?」
「いいね!」
「今日もお菓子パーティーしたいしね! ね、水波ちゃんも行こうよ!」
「……私は、いいや」
短く言って再び黙り込む。
「……そっか。じゃ、私たちが代表して行ってくるね! 水波は帰りを待つべし。朝香も行こ」
「あ……うん」
朝香は気が進まなそうにしながらも、琴音ちゃんと歩果ちゃんに連れられて出ていった。
ひとりきりになった部屋で、私は途方に暮れた。
ベッドに身を投げ出し、シーツの海に埋もれる。
無機質な天井やライトを見上げ、私は今まで、彼のなにを見ていたのだろうと考える。
思えば私は、彼のなにも知らなかった。住んでいる場所も、どこから来ているのかも。聞こうと思えば、タイミングはいくらでもあったはずなのに……。
たぶん、無意識のうちに避けてたのだ。恐ろしかったのだ。この現実を突きつけられるのが。
胸が苦しい。でも、綺瀬くんはきっと、もっと苦しい。
私は、命を懸けて助けてくれた人の前で、なにをした?
『私の命、どうしようが私の勝手でしょ』
そう吐き捨てたのだ。私のせいで命を落とした綺瀬くんの前で。
どうして忘れていたのだろう。どうして忘れられたのだろう。
たったひとりの好きな人を……命の恩人を。
「有り得ない……」
私はどれだけ綺瀬くんを失望させたら気が済むのだろう。
『俺さ、大好きな人がいるんだ』
初めて会った日、綺瀬くんは言っていた。
『でもね、その人はもうどうやったって俺の手が届かないところにいる』
悲しいくらい綺麗な顔で、綺瀬くんは私をまっすぐに見つめていた。
あの顔は……ぜんぶ、私に向けてくれていた言葉だったのだ。
『生きててよかったよ』
綺瀬くんの笑顔が蘇る。息ができないくらいに胸が締め付けられた。
綺瀬くんはずっと、私に会いに来てくれていたのだ。また死のうとした私を、助けるために。生きろと伝えに。
じぶんは、遺体すら引きあげてもらえていないのに……。
『本当は、ひとりが寂しかったんだ』
綺瀬くんはいつも寂しそうにしていた。当たり前だ。広くて深い海の底に、ひとりぼっちなのだから。
『俺が水波を助けたのは、俺のため。ちょっとでいいから、そばにいてほしいって思ったんだ。……寂しくて、死にそうだったから』
震えが止まらない。
私はなんて愚かなのだろう。どれだけ綺瀬くんの気持ちを踏みにじれば気が済むのだろう。
最後に告白までして……あれじゃ、綺瀬くんにただ縋っただけだ。助けて、と、みっともなく縋っただけだ。
「私……バカだ……」
ベッドの上で小さくなって泣いていると、部屋の扉が開く音がした。ハッとして、両手のひらで乱雑に涙を拭う。
「……水波」
「どうだろう……」
「行ってみない?」
「いいね!」
「今日もお菓子パーティーしたいしね! ね、水波ちゃんも行こうよ!」
「……私は、いいや」
短く言って再び黙り込む。
「……そっか。じゃ、私たちが代表して行ってくるね! 水波は帰りを待つべし。朝香も行こ」
「あ……うん」
朝香は気が進まなそうにしながらも、琴音ちゃんと歩果ちゃんに連れられて出ていった。
ひとりきりになった部屋で、私は途方に暮れた。
ベッドに身を投げ出し、シーツの海に埋もれる。
無機質な天井やライトを見上げ、私は今まで、彼のなにを見ていたのだろうと考える。
思えば私は、彼のなにも知らなかった。住んでいる場所も、どこから来ているのかも。聞こうと思えば、タイミングはいくらでもあったはずなのに……。
たぶん、無意識のうちに避けてたのだ。恐ろしかったのだ。この現実を突きつけられるのが。
胸が苦しい。でも、綺瀬くんはきっと、もっと苦しい。
私は、命を懸けて助けてくれた人の前で、なにをした?
『私の命、どうしようが私の勝手でしょ』
そう吐き捨てたのだ。私のせいで命を落とした綺瀬くんの前で。
どうして忘れていたのだろう。どうして忘れられたのだろう。
たったひとりの好きな人を……命の恩人を。
「有り得ない……」
私はどれだけ綺瀬くんを失望させたら気が済むのだろう。
『俺さ、大好きな人がいるんだ』
初めて会った日、綺瀬くんは言っていた。
『でもね、その人はもうどうやったって俺の手が届かないところにいる』
悲しいくらい綺麗な顔で、綺瀬くんは私をまっすぐに見つめていた。
あの顔は……ぜんぶ、私に向けてくれていた言葉だったのだ。
『生きててよかったよ』
綺瀬くんの笑顔が蘇る。息ができないくらいに胸が締め付けられた。
綺瀬くんはずっと、私に会いに来てくれていたのだ。また死のうとした私を、助けるために。生きろと伝えに。
じぶんは、遺体すら引きあげてもらえていないのに……。
『本当は、ひとりが寂しかったんだ』
綺瀬くんはいつも寂しそうにしていた。当たり前だ。広くて深い海の底に、ひとりぼっちなのだから。
『俺が水波を助けたのは、俺のため。ちょっとでいいから、そばにいてほしいって思ったんだ。……寂しくて、死にそうだったから』
震えが止まらない。
私はなんて愚かなのだろう。どれだけ綺瀬くんの気持ちを踏みにじれば気が済むのだろう。
最後に告白までして……あれじゃ、綺瀬くんにただ縋っただけだ。助けて、と、みっともなく縋っただけだ。
「私……バカだ……」
ベッドの上で小さくなって泣いていると、部屋の扉が開く音がした。ハッとして、両手のひらで乱雑に涙を拭う。
「……水波」
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