素直になれない平凡はイケメン同僚にメスイキ調教される

天野カンナ

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75.敦のせいだ

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 近くの公園のベンチで缶コーヒーを飲み終えてから、そのまま敦の家へと帰る。
 扉の前に立つと、中からまた騒がしい声が聞こえてきた。
 今度は何を揉めているのだろうと、旭は呆れながら、ゆっくり扉を開けて中へと入ると、そのまま靴を脱いでキッチンへと向かった。
 そこでは、三人が立って明を挟みながら、出来上がった海苔巻きを食べさせあっていた。

「ほら、俺の作った海苔巻きの方が美味いだろ」

 新が海苔巻きを明の口元に持っていくと、そのままもぐもぐと美味しそうに食べていく。
 その光景を見た旭は、敦が明に食べさせる姿を思い浮かべてしまい、嫉妬で目眩がした。

「旭、お帰り。マヨネーズありがとな!旭!?」

 敦が呼びかけているのにも気が付かずに、放心状態になっていた旭は、我に返ると持っていた買い物袋を敦に震えながら渡した。

「俺、用事思い出したから帰る」

 敦と目線を合わせずに、買い物袋を受け取ったのを確認すると、そのまま玄関へと走って向かい、踵を踏んだまま靴を履いて急いで玄関から外へと出る。
 そして、駅へと向かってそのまま走った。

 以前ならこんなに嫉妬する事なんてなかったのに、全て敦のせいだ。敦が自分の事ばかり考えて行動するから、敦が自分だけを見てないと耐えられない体になってしまったんだ……。
 旭は電車の中で俯いて座席に座りながら、これからどうすればいいのか分からず、泣きそうな顔をして家の最寄駅へと向かった。

 最寄り駅へと着くと、真っ直ぐに家へと向かう。
 きっと、三人とも心配していて、今頃LINEと着信がかなりきているだろう。
 自分の事をそれほど思っていてくれている人がいるのに、素直に気持ちが言えずに敦の家を飛び出してしまうなんて……。
 それに、敦にまだ好きだとも言えてない。こんな自分が恋人で敦は本当にいいのだろうか。
 自分がとても情け無いやつに思えた旭は、帰り道の途中で泣き出してしまった。
 大粒の涙が頬を伝っていく。
 こんなに泣いたのは、敦と両思いになった日以来だと、その日の事を思い出してまた大粒の涙を流してしまう。

 手で涙を拭いながら、マンションのエレベーターへと乗り、部屋の階数のボタンを押す。
 帰ったらまず、敦に電話を掛けて謝ろう。そして、素直に気持ちを伝えようと、旭は心に決めた。
 目的階に着きエレベーターが止まると、涙を拭いて前を向く。
 すると、家の前に見知った人影が見えた。

「敦!?」

 その人影は明らかに、敦のだった。
 向こうも旭の人影を確認すると、エレベーターへと駆け寄ってくる。
 扉が開く数秒すら、待ち遠しい。
 扉が開きエレベーターから出ると、駆け寄ってきた敦にキツく抱きしめられる。
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