人生イージーモードになるはずだった俺!!

抹茶ごはん

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第二章

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現在は放課後。団体戦のための作戦会議中だ。
「みんなの得意な戦い方は分かりました。ではこの地形のことも踏まえて提案なのですが──」
エクスブロー先輩を中心に皆で意見を出し合い陣形や戦闘開始後の動きを詰めていく。問題児たちイヴァとグレイが黙っていることもあってか、スムーズに話し合いは進んでいった。
しばらくして続きはまた明日、という事になり解散した。大まかな作戦は立ったから後は細かい部分を詰めるだけだ。といっても相手選手の見当がつがないので、かなり大雑把な作戦なのだが。
「二人ともずっと黙ってたね、どうかした?」
単純な好奇心で尋ねてみる。
「アー、まアなんだ、正直かったりィから作戦その辺は適当に考えてくれりゃイイと思ってな。」
なるほど納得である。グレイらしい。
「その男と意見が被るのは不愉快だが、俺も概ね同じだ。」
団体行動が不得手なイヴァングらしいな、こちらも納得だ。しかし何故イヴァングはグレイに喧嘩腰なんだ?
「そっか。」
「レオンはよくあの輪に加わろうとか思うよなア。俺様ああいう一致団結とか嫌いだね。」
不良だもんな。一匹狼気質でもあるみたいだし。こいつ俺より友達いないんじゃないか?
…自分で言っててちょっと悲しくなってきた。お、俺だって本気出せば友達の十人、二十人…!
「ああいうのは参加しようとすることが大事なんだよ。やる気が無いって思われるのは心外だし。」
「真面目なんだか不真面目なんだか。お前、結構裏表あるタイプだろ。」
「失礼だな、僕は自分に素直に生きてるよ。」
多少・・猫かぶりはしているが、俺はいつだって自分の欲のために生きている。嘘じゃないぞ?
「クク、そりゃよかった。ところで皇子殿下のお守りはいつ終わるんだ?俺様レオンの作ったメシが食いてェ。」
あっ。
「レオンの…作った飯、だと?」
イヴァングがギロリとグレイを睨み付ける。ヤバい。
「ア?まさか殿下に言ってなかったのか?」
言ってるわけないだろう!余計な火種を作ってどうする!?
「いや、別に報告するまでもないかなって。と、とにかく犯人が見つかるまで警護は終わらないから、この話はこれでおしまい。ね?」
精一杯媚びた笑顔でイヴァに笑いかける。こちとら部屋に戻ってからもずっと一緒なんだぞ、不機嫌になられたら俺が困る。
「…レオン。心底愛らしい笑みを向けても誤魔化されんぞ、後で覚えておけ。」
なんで俺が怒られる流れになっているんだ…。

イヴァングの部屋に戻った後、俺がいかに魅力的で手料理が美味しくて、グレイと密室で二人きりという状況がどれだけ危険かなどグチグチと説教された。
何故か詫びに手料理を作らされオムライスにイヴァ大好きと書かされる羞恥プレイ、本当に勘弁してくれ…。

翌日の放課後、団体戦の話し合いもそこそこに、個人戦の同じ部門同士での対策会議の時間となった。
というのも去年や一昨年の親善大会の資料が残っているらしく、そこからある程度競技の内容などが分かるのだ。
学術部門は大抵ペーパーテストで、大学レベルの問題が出され点数の高い方が優勝だ。地味だが仕方あるまい。
魔術部門は魔力の総量と威力の高さ、見た目の三点から評価され得点の高い方が優勝だ。毎年見ごたえがあって人気らしい。俺、魔術部門が良かった…。
剣術部門は単純にお互いの獲物(刃物に限る)を使って戦い、勝った方が優勝だ。こちらも人気だが観客は八割男だ、羨ましくない。
過去の問題の傾向からどういった分野の問題が出されるか、どの問題の点が高いかなどを確認し、学術部門の三人で勉強会のようなものをすることとなった。
「エクスブロー先輩、この魔術式における空間的錯綜の論文なんですが、この魔術式のβ点に使われている式ってどういった公式を当てはめればいいのでしょうか?」
「もう最新の論文ですか、流石に優秀ですね。それは確か…ありました、この公式です。」
「ありがとうございます。先輩が博識で助かりました。」
少し躓いてもすぐに教えてもらえるから勉強も楽なものだ。ちなみに今は最近賞を取った論文について学んでいる。時事問題枠で出てくるかもしれないからな!
「どういたしまして。他にも分からないところがあればすぐに言ってくださいね。」
微笑む先輩は儚げで非常に絵になる。どうしてこの学園にはイケメンが多いんだ…。
「それじゃレインドル先輩、ベルテにもココ、教えてもらえませんか?どうしても術式のイメージがかなくてぇ。」
「いいですよ。この魔術式は…こうですね。」
目の前でエクスブロー先輩が魔術式を組んでゆく。器用なもんだな。
お、先輩の術式の癖見っけ。俺ってば目が良いからな~。
「ありがとうございます、先輩♡」
ベルテ先輩あざとい…可愛い…。
「…そういえば、第八魔法の記述は出るのでしょうか。」
第八魔法。滅多に使える人間のいない八個目の属性のことだ。
所謂幻覚や幻聴を引き起こし、悪夢や予知夢を見せることのできる夢幻属性、それが第八魔法である。
「僕は一応復習しておきますが、出る確率は低いと思いますよ。ここ数十年は誰も使い手が現れていませんし。」
「ベルテもレオン君に賛成ですっ。」
つややかな紫の髪をいじりながら肯定するベルテ先輩は本当に愛らしい。俺の恋人になってくれないかな…。
「そうですね、軽く復習する程度にしておきましょう。」
和やかに勉強会は進んでいく。魔術、剣術組はグラウンドへ移動しているため静かだ。
「スティルヤード君、ちょっといいですか。」
勉強会が終わり解散となった時、急に呼び止められた。なんだ?
「何でしょうか、エクスブロー先輩。」
「いや…。」
先輩は周りに人がいないことを確かめると、意を決したように口を開いた。
「その、模擬決闘大会の時のことですが…今更ながら、お礼がまだだったと思いまして。杖を拾っていただいてありがとうございました。」
優雅な礼だ。躾が行き届いている。
「そんな、わざわざお礼なんて。当然のことをしたまでですよ。」
「あなたは…いえ、本当にありがとう。言いたいことはそれだけです、呼び止めてしまってすみません。」
「いえいえ。それでは先輩、また明日。」
「はい、スティルヤード君。また明日。」
どうやらあの杖…いや、あの膨大な魔力を隠さなければならない理由があるらしい。しかしそれは俺には関係のないことだ。触らぬ神に祟りなし、この話は無かった事にしよう。
俺はイヴァングの待つ寮室へ歩き出した。
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