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先輩編2
しおりを挟むそれから学園で先輩に会うたび絡まれるようになった。
例えば第一王子生誕祝いのパーティが終わって最初の登校日、たまたま中庭で会った時は、「あ、ミレクシアくーん!また会えるなんて奇遇だね!キミが俺のことフっちゃうから俺、あの日は一人で寂しい思いしたんだよ?」とか声を掛けられた。
その時はなんとアダムも一緒にいたのだ。よく婚約者の前でそんなこと言えるな、と感心した。
ちなみに先輩が去ったあとアダムには散々問い詰められた。そんなに気になるなら次からパーティに着いて来れば?と言うと頷かれて酷く驚いたのを覚えている。
そして現在、図書室でアダムの用事が終わるのを待っていたところ、意外にも先輩と遭遇した。
「あれ?ミレクシアくんじゃん。キミの王子様はどうしたの?」
「アダムはちょっと先生に呼ばれていて。先輩こそどうしたんですか?」
「俺?実は俺って読書家でさ、俺の好きな作家先生の本が入ったから読みに来たの。買ってもいいんだけどかさばるからねー。」
「本当に意外ですね。…もしかしてそれ、ミスカトニック先生の本ですか?」
手に持っている本を指させば、先輩は嬉しそうに笑った。
「あれ、もしかしてミレクシアくんもファン?」
「アダムが先生の本を持っていて読んだんですけど、面白くって。それ以来ファンです。」
「嬉しいなあ、あんまり本の話が合う子がいなくてさ。ちょっとだけお喋りしない?」
まあ他に生徒もいないようだし、どうせ暇だったからいいだろう。俺は了承した。
「で、まさかの展開に驚いて思わず最初から読み返してしまって…」
「わかる!俺は三回読んだもん。」
「それでさあ、犯人が自供するシーンで思わず泣いちゃって…」
「俺もです。まさかあんな過去があるなんて思わなくて…」
そうしてかれこれ一時間は語り合った。アダムも遅いが俺達も熱くなり過ぎた。
「あはは、結構長いこと話してたね。ね、また今度新刊の話しよ?キミとは良い読書友達になれそう。」
「同感です。それではまた。」
健全な交友関係を築けそうで安心した。先輩は軽薄だが噂と違って良い人みたいだ。
「あー楽しかった。…誰かとああやってお喋りするの、いつぶりかな。次が待ち遠しいなあ…。」
先輩の独り言は、誰にも聞かれることは無かった。
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