田舎生活 ~農業、海、山、そして異世界人!?~

蛍 伊織

文字の大きさ
27 / 43
第一部 

・・・お元気で。

しおりを挟む
騎士に案内された屋敷の中は様々な装飾がなされており持ち主の性格をよく現していた。

派手で自慢げ、リリーナとは正反対だ。目がチカチカする。

「公爵様はこちらです。ですが、今は誰も入れるなと言われておりまして。」

「そう、じゃあ『入らなければ』いいのよね。」

そう言うとリリーナは扉に耳を当てた。そして「ほら、みんなも。」と催促する。

アナログだなぁ。思わずクスッと笑ってしまう。

俺達は困惑する騎士の前で扉に張り付き聞き耳を立てていた。

――――――
「見ての通り野菜の栽培は順調だ。予定通り出荷できる。値段は好きに付けてくれ。代わりに新しい技術を手に入れるのを忘れないように。」

「お任せください。ロバート公爵。」

「よろしい。これでこの1年準備してきたことがようやく実行に移せるわけだ。満田君、君が召喚されてくれたお陰だよ。」

中で公爵と話をしているのは満田らしい。あいつが異世界に召喚されてたなんて。

「店で1日に必要な野菜の種類と量はこれに書いておきました。鍾乳洞の入り口まで運んでもらえれば後はこっちでやります。それで、次に欲しい技術は何かありますか?」

「この前話してくれた銃というものは手に入らないかな?」

「じゅ、銃ですか。えと、ちょっと難しいかもしれません。日本は銃の取り扱いに厳しいですから。」

「ふ~む、そうか。メイザース領へと攻め込む際に銃があれば楽に制圧できると思ったのだが。」

どうやら公爵はクーデターを計画しているらしい。まさか、満田を使って田舎で野菜を売る話がそんなことに繋がっているとは思わなかった。

それを聞いたユイが「姫様!聞き捨てなりません。」と言う。リリーナも真剣な顔で頷いた。

そして制止する騎士を振り切って部屋の扉を勢いよく開けるのだった。


バンッ!!!(扉を開ける音)


「「!?」」

公爵は「誰だ!」と怒って叫びながら振り返った。しかし、部屋に入って来た人物が誰かわかると怒りを忘れ驚愕する。

「ひ、姫様・・・。まさか、生きてらっしゃったのですか。それにユイ殿も。・・・皆で探しておりましたよ。いやぁ、ご無事でよかった。」

公爵は露骨に愛想笑いを浮かべ、手をすり合わせる。明らかに喜んでいるフリだ。そんな公爵を見てリリーナは首を振る。

「私のことよりも、あなたが先ほど言っていた『メイザース領へ攻め込む』という話を詳しく聞きたいですね。」

一瞬キョトンとした公爵だったが、すぐに肩を震わせ笑い出した。

「ふ、ふはは。・・・そのままの意味ですよ。メイザース家を倒して私が頂点に立つ。いけませんか?」

「公爵様!馬鹿なことはおやめください。」

ユイが叫ぶ。しかし公爵は答えない。横では満田がそれをニタニタしながら見ていた。

「おい満田。お前、そんなことに肩入れしていたのかよ。」

公爵が満田に向かって「ご友人ですか?」と問いかける。あいつは「ええ、昔なじみです。」と答えた。

「俺はこの世界で公爵から地位と名誉、金をもらって楽しく過ごすのさ。」

・・・!?馬鹿野郎、お前の身勝手な行動で農家はみんな困ってるんだぞ。婆ちゃんなんか農業やめようとしたんだ。

「満田君は賢者と呼ばれるにふさわしい。私の考えを理解しこの世界にない知識と技術で富や力を与えてくれる。」

公爵は満田の肩をポンと叩く。満田は満足気だ。

「ロバート公爵、あなたは異世界の協力者と行く方法を手に入れた。それを利用してこの国を奪おうと言うのですね?このイロリナを手に入れたのも民のために開発する気はなく、そのためだった。」

「その通り。あなたがユイ殿を助けた時から思いついた計画です。」

ユイはカァっと顔を赤らめ下を向く。自分が利用されていたことへの怒りからか震えているのがわかった。

「き、貴様ぁ。」

「おっと、剣は抜かない方がいい。」

公爵がパチンッと指を鳴らすとどこに隠れていたのか騎士たちがワラワラと現れ俺達を取り囲む。

「くっ。」

多勢に無勢過ぎてユイは行動に移せない。彼女はチラッとプリムを見たが「急には無理。」と小声で返事をした。

「私は暴力は嫌いです。フェアな話し合いでないとね。」

「・・・どの口がそんなこと言うのかしら。」

「姫様、どうか私に協力してもらえませんか?あなたに裏方として働いてもらえれば心強い。幸い今は行方不明になっていることですし。」

リリーナは首を振る。公爵は「残念です。」と言った。

「ならば全員拘留させてもらいますよ?邪魔はされたくないものでね。」

公爵は兵士に「連れて行け。」と命令する。その時、満田が「待ってください!」と叫んだ。

「公爵様、その男とガキは任せてもらえませんか?こちらの世界の人間ですので。」

満田が俺を助けるメリットは何だ?奴に善意なんかあるはずがない。それにプリムが俺達の世界の人間だと勘違いしている。

「ふむ。」と考え込む公爵。そして満田に向かって言った。

「いいでしょう。こちらの世界に干渉しないよう念押ししておいて欲しいですな。」

「もちろんです。さぁ、黒崎、とそこのガキ。帰るぞ。」

ここで帰っていいはずがない。ためらう俺を満田が「早くしろ。」と催促する。

俺は困り果ててリリーナを見た。彼女はじっとこちらを見て、そしてニコッと笑った。

「雄太さん。今までありがとう。・・・お元気で。」

――――――
鍾乳洞の来た道を満田の後ろについて歩いていた。リリーナが最後に言ったことと、その時の顔を思い出しながら。

「何であんなところまで来るんだよ。つけたのか?まったく・・・。俺に感謝するんだな。あのままだとこっちに帰って来れなかったぞ。」

確かにこいつがいなかったらここに戻って来れなかったかもしれない。

「どうしてこの子も連れて来たんだ?」

「そのガキはお前の親戚だろ?服、お前が昔着てたやつだし。」

こいつプリムが俺のパーカーとスーツのジャケットを着ているのを見て親戚と勘違いしたんだな。

「・・・なぁ、黒崎。お前、俺を手伝わないか?」

満田は立ち止まると急にそんなことを言い出した。

「これから公爵の事業は拡大する。それに乗るだけで莫大な金が手に入るんだ。つまんない農業や仕事をするよりいいだろ?面白おかしく暮そうぜ。」

「・・・。」

俺は答えなかった。しびれを切らした満田は「ちっ。」と舌打ちをすると再び歩き出す。

鍾乳洞を出て俺達の世界に戻ると、辺りは暗く夜になっていた。

「おい、満田。」

満田は不機嫌そうな顔でこちらを向く。そんな奴の前に俺は右手を差し出した。

「・・・。やる気になったんだな。」

満田はニヤッと笑い、握手をするため自分の手を出す。

その瞬間、俺は奴の手を思いっきり引っ張りその場に転ばせた。

「ぐぅ。な、何しやがる!」

怒りで顔を真っ赤にした満田が叫ぶ。さっきのでわかった。こいつは俺を利用するため公爵から助けたんだ。善意なんてこれっぽっちもない。

つまんない農業や仕事だと?そんなこと、ここ最近思った事ねぇよ!

「俺が面白おかしく暮したい相手は決まってる!!」

俺は拳を思いっきり振りかざした。

――――――
「この洞窟の先が異世界で!」

「満田と公爵がそこで悪だくみしてて!」

「リリーナさんとユイさんが捕まっただって!?」

満田をボコボコにして気絶させたところでようやく牛田、玉崎、鳥飼と連絡が取れた。鍾乳洞に呼び寄せると、これまでに起こったことを説明する。3人は自分たちが遅れてしまったことを悔やんだ。

「この車がもう少し早く手配できていれば。2人を守れたかもしれないのに。」

そう言うミートリオの後ろには大型のトラックが止まっている。荷台には巨大な檻が付いており、中で何か巨大な生き物の影が動いていた。

「それで、これからどうする黒崎。」

俺は屋敷を出る前のことをもう一度思い出す。

「・・・お元気で。」とリリーナは言った。しかし、彼女の『顔』を見た俺はその言葉が本心じゃないことはわかっている。

「リリーナはさ、思っていることが顔に出るんだ。その顔が『雄太さんが助けに来るのを信じています』っと言っていた。俺は、俺は大切な『家族、仲間』を助けに行く!」

「「「俺達もだ!農家を怒らせると怖いってこと思い知らせてやろうぜ!」」」

「ボクもボクも!本気出すから!!」

俺達は自然と円陣を組んだ。可愛い女の子が1人いるとはいえ、30を超えたオッサンが4人もいると少し暑苦しい。

「・・・それで、警備している兵隊をどうやって切り抜ける?」

相手は武装した兵士たちだ。気合だけではどうにもならない。

「まずはこれを突入させようか。」

牛田は大型トラックを指差しニヤリと笑った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...