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第8節: 教室の隅で寄り添う二人
しおりを挟む颯太は、妹から借りた本をついに読み終えた。
最初は軽く読める本が欲しかっただけなのに、
気づけばストーリーに夢中になっていた。
戦い、友情、冒険、そして…恋愛。
恋愛部分は物語の一部にすぎないはずだったが、
颯太の心に残ったのは、その恋愛の描写だった。
――なんでだろう?俺、こんなに恋愛部分が気になってるなんて…。
本の中で描かれていた独占欲や執着心。
それは、最近の文也に対する自分の感情と重なるところがあった。
颯太は、文也が他のクラスメイトと話しているのを見ると、
前とは違う気持ちを抱くようになっていた。
最近、文也はクラスメイトからもよく話しかけられるようになっていた。
以前よりも壁を感じさせなくなったからだろう。
颯太と一緒に過ごす時間が増えたことで、
周りの人たちも文也に親しみやすさを感じるようになったのかもしれない。
だけど、その光景を見るたび、颯太の心にはもやもやした感情が湧き上がっていた。
――あれ、俺…嫉妬してる?
文也が他の人と話していると、なぜか寂しくてたまらない。
文也との距離を感じた時の孤独感が蘇り、胸が痛くなる。
自分の気持ちを整理できずに、颯太は文也と話す時、ぎこちなくなってしまった。
そんなある日、文也がふと颯太をじっと見つめ、静かに尋ねた。
「颯太、最近なんか…おかしいよね?僕、何かした?」
その質問に、颯太はドキリとした。まさか文也に気づかれていたなんて。
どうすればいい?正直に話すべきか、誤魔化すべきか?
――いや、ここで誤魔化したら、もっとおかしくなるだけだ。
颯太は意を決して、正直に打ち明けることにした。
「実はさ…あの本を読み終わってから、色々考えちゃって。
恋愛とか独占欲とか、そういう部分が妙に頭に残っててさ…」
文也は黙って颯太の言葉を待っている。颯太は続けた。
「それで、俺が文也に感じてるのは、ただの友達としての気持ちじゃなくて…
恋愛感情なんじゃないかって思うようになったんだ。
文也が他のやつと話してると、なんかモヤモヤするし、
距離を取られた時の寂しさも忘れられなくて…」
颯太は顔を少し赤くしながら、言葉を紡いだ。
「でも、もし文也がそれを迷惑に思ったらどうしようって考えると、
今まで通りに接するのが怖くなって…」
颯太の正直な言葉に、文也はしばらく黙っていた。
しかし、その表情はいつものように穏やかで、
颯太の気持ちを静かに受け止めているようだった。
「颯太…」
文也はゆっくりと口を開いた。
「僕も、颯太と一緒にいる時間が大好きだよ。迷惑なんて、絶対に思わない」
その言葉に、颯太の心は一気に軽くなった。
「ほんとに?」
「うん。颯太と話す時間が一番楽しいんだ。
僕にとっても、颯太は…特別な存在だと思ってる」
その一言で、颯太の胸はいっぱいになった。
文也も自分と同じように、この関係を大切に思ってくれている。
それを確認できたことが何よりも嬉しかった。
二人は、教室の隅でそっと寄り添い合い、笑いあった。
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