神を従えし者たち

真崎 遥也

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第2章 魔姫の救済

第8話 ハルス&魔王VS和葉

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その宣言と共に殺し合いが始まった。魔王は所謂狂人化しているため連携も取れたものじゃない。しかし、ハルスは逆にそれを使い上手く俺に攻撃させている。

「やるな。」

「ふん、その程度か?『虚無の還元者』とは名前負けしてるな。」

俺はその言葉を聞き何も言葉を発さずに魔法を撃つ。普通は無詠唱でも魔法名を言わなければならないが、俺にその常識は関係ない。

魔法はあいつのすぐ真横を通る。今のは俺の固有魔法『虚無魔法』の「ゼロボール」というものだ。普通のボール系魔法とは違い、これだけで当たった部分を消滅させる事が可能である。

「勘違いするなよ?お前はただでは殺さないだけだ。少々痛い目に遭って死んでもらおう。」

それを聞き顔を青くするハルス。しかし、はったりに過ぎないと勘違いし戦闘を開始する。

「そんなはったり、効くか!!!」

「はったりじゃないさ。」

俺は右手に空間魔法の魔法陣、左手に虚無魔法の魔法陣を展開させる。

合成魔法ユニゾン・マジック『無の空間』。」

「な、なんだ!?」

あいつの周りがどんどん黒の影に覆われる。

「一時的に無空間へと誘う魔法だ。30分程度だが、お前の体感で言えば3兆年かな?」

「や、やめろォ!!!」

その叫びは虚しくやつは消えていった。

残ったのは魔王と俺だけだ。人格の残ってないはずの魔王は俺を襲う。

「辛かったよな。」

敢えて俺はその攻撃を受ける。

「お前はほんとうは気付いてたんだろう?」

動きが止まる。

「お前は部下がクーデターを起こす事を気付いていた。だがお前の娘、アルシュの為に敢えて人体実験も受け、そのような姿になった。」

淡々と話し続ける。

「本当は人格も残ってるんだろ?だが俺にそのような姿で会いたくないと思い、敢えて人格が残ってないように振舞った。」

「お主にはバレてたか・・・」

やっと口を開く魔王、アグサ

「お主の言う通りだ。全ては娘の為、我が国民さえも見捨ててしまった。そんな我に王の資格はない。」

悔しそうに話す。だから、せめて、この侵略を止めるためにアルシュを俺の居る学園に送ったのだろう。

「もういいんだよ。俺が止めてやる。だから、せめて安心して逝ってくれ。」

そう言って俺はある魔法を発動する。

「本当はもう長くないんだろう?あと数日、いや、今日中にでも逝くはずだ。」

「そこまで気付いていたとは、誠にあっぱれだ。」

「・・・また、アルシュに会いたくないか?」

「合わせる顔がないさ。」

「転生させてやる。」

アグサは驚きの目でこちらを見る。

「転生は普通、数京分の一の確率、つまりほぼありえない話だ・・・」

「俺にはできるさ。アグサ、俺の使う魔法に違和感を感じないか?」

少し考える素振りを見せた後気づいたように言う。

「よく考えるとおかしい。お主の魔法『虚無魔法』は、何故概念を覆せれる?」

俺は先程当たったものを消すと言ったが、実際はなかったことにする。

「そう。俺の魔法はあったものを無くす。つまり、『無の概念』を司っているのさ。」

またも驚くアグサ。それもその筈、上位神でさえ概念を司っているのは片手で数える程しかいない。ちなみに権能と概念は全くの別のものである。

「つまりお主は、あの伝説の概念魔法を扱えるのか!?」

「その通りだ。簡潔に言うと、俺が概念魔法を使えないという事実を無くす。それにより概念魔法を使える俺という存在へとなっている。」

まぁ『虚無魔法』も概念魔法なんだがな。

「お主には驚かされてばかりだな・・・」

そう言いポロポロと涙を流すアグサ。

「魔王とも言う奴が泣くな。だが、いつの年代に転生するかはこちらは分からない。明日かもしれないし、100年後かもしれない。」

「構わないさ。アルシュはお主が救ってくれるのだろ?」

「当たり前だ。」

では、始めるとするか。

『現世に生まれし子よ。汝は来世も生きる事を望むか?』

「はい。」

『了解した。我は望む。強き思いを持ち、新たな人生を望む者に祝福があらん事を。そなたに来世へと続く切符を授けよう。受け取るがいい!!転生魔法『レインカルナーティオー』!!』

アグサから光が溢れる。

「感謝するぞ。また会おう、我が友よ!」

「当たり前だ。」

そして消えていった。

「元気でな、アグサ。」

今は亡き友へ追悼の言葉を送った。



「次はお前の番だ。」

そこには先程無空間へ送ったハルスがいた。

「た、耐えて、やっ、たぞ・・!!」

「お前はすごいな。だが終わりだ。魔法『覚めることのない虚夢』。」

すると、糸切れた人形のように動かなくなった。

「お前には永遠に夢を見てもらうよ。」

もう死んでいるのに逝くこともできず、ただひたすら悪夢を見続けるだけだ。

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