20 / 169
白銀の国
黒羽鳥に乗って
しおりを挟む
「許可証の記載は済んだようだな、リビ殿」
ヒサメとフブキは黒羽鳥のいる場所で待っていてくれたらしく、私とソラは急いで戻ってきた。
「はい、あの、白銀の国の許可証も頂いたのですが」
「この国の許可証さえあれば、この国の出入りが可能になる。それに、もし国の外で狼の獣人に出くわしてもその許可証を見せれば王であるオレがキミを認識している証明にもなる」
それは確かにありがたいことではあるが、いいのだろうか。
神官でもない一般の私が、この国の出入りを許可したことで反感を買うことになるのでは。
「前王が死んだ今、白銀の国の体制はこれから大きく変化することになるだろう。国を囲う鉱石をどのように扱うか、あの鎖国状態の国をどうしていくのか考えることは山積みだ。だからこそ、狼の獣人以外の人間であるキミに許可証を渡すのは、新たなる体制の一歩目だ。闇魔法を持つリビ殿だからこそ、ふさわしいとオレは思っている」
ふさわしい、それがどういう意味を持つのか分からない。
同じ闇魔法を持つものという意味なのか。
他の者からは恐れられている存在という意味なのか。
「深く考える必要はない。白銀の国に入る許可がある、というだけだ。フブキの命の恩人なのだから、この国に入れないというのはおかしな話だろう」
あいかわらずフブキを中心的に考えているヒサメの言葉に私は曖昧に笑っておいた。
「それではそろそろ太陽の国へ向かう。ソラ殿、準備は良いか」
「キュ!」
ソラはやる気は十分といったように手を振った。
「ソラ殿、あの鉱石はしっかりと体に固定させてもらう。だから、遠慮する必要はない」
ヒサメがソラの背を撫でると、ソラは首を傾げた。
「どれだけ速く飛ぼうと鉱石を落とす心配はない、ということだ。本当はもっと速く飛べるだろう?」
「え、そうなんですか!?」
私の声にソラは困ったような顔をする。
「リビ殿はソラ殿に手綱をつけていない。だからこそ、ソラ殿はリビ殿が落ちない速度でしか飛んでいないわけだ。そうだろう?」
「キュウ」
ソラは戸惑うように肯定している。
「そうだったんだ、私に合わせて飛んでくれていたんだね」
「キュウキュウ」
「うん、それで支障はなかったからね。それに、あれよりもっと速かったら確かに落ちてたかもしれないし、ありがとうね」
「キュ!」
ソラに手綱をつけるなんて発想は今までなかったことだった。
ドラゴンに乗っている人の方が珍しいし、言われたこともなかったから気づかなかったのだ。
「本来ブルームーンドラゴンは争いを好まないぶん、その場から逃げるのは得意なはずだ。ゆえに、もっと速く飛べるだろうと思っていた。だから、ソラ殿。今回はもっとスピードを上げて飛んでみてもらえるか?オレとフブキはソラ殿の速度に合わせて走る。黒羽鳥も同じくらい速く飛べるから問題はない」
「キュ!」
元気よく頷いたソラに鉱石を背負ってもらい、ロープで固定する。
私はさきほどお願いした黒羽鳥に乗せてもらい、空へと舞い上がる。
すると、フブキが下から大声で叫んだ。
「リビ!!ちゃんと手綱を握っておけよ。たぶん、今までソラに乗ってたスピードとは次元が違」
フブキの声が途中でかき消え、私は風力で首が後ろに持っていかれた。
速っっ!!!!?
まるでミサイルのように飛び出した黒羽鳥の上で私は必死に手綱を握りしめた。
風が寒くて痛くて息ができない。
私は身を屈めてできるだけ空気抵抗を受けないように鳥の首が盾になるようにする。
ソラやフブキ、ヒサメの様子を見る余裕すらない。
どれほどの時間が経ったのだろう。
1時間くらい?それとももっとか?
ようやくおそるおそる景色を見た時だ。
前方にソラが飛んでいるのが見える。
明らかにいつも飛んでいるスピードよりも速くこの黒羽鳥よりもすこし速いくらいだ。
そして地面を見れば、ヒサメとフブキが話しながら走っている。
狼の獣人族は一体どれだけの体力と脚力があるのだろう。
そうして、太陽の国が見え始めてようやく私は思い出した。
今日は収穫祭の日だ。
数日にわたって行われる収穫祭だが、私はヴィントに案内をしてもらう約束をしていたのだ。
「もう始まってるのかな、収穫祭。間に合わなかったな」
街中はランタンなどで飾り付けられ、屋台が出ているのが空から見える。
大きなお祭りなのだろう、とても賑やかな声が国の外にも聞こえてくる。
私は門番に事情を説明し、ヒサメとフブキと共に太陽の国に入った。
そこでヒサメが振り返る。
「これから太陽の国王に謁見し、治癒の鉱石の説明をする。その後、採掘者の怪我の治癒にあたることになるだろう」
「はい」
「それまで運搬にソラ殿についてきてもらうが、リビ殿は自由にしてもらってかまわない」
「え、いえ、私もいっしょに」
「魔力の少ないキミが来てもすることがないと言っている」
ヒサメにそう言われ、私は反論の余地がない。
役立たずで辛いなと思う寸前に、ヒサメは柔らかい声で言った。
「収穫祭、約束があったのではないか?」
「え?」
「間に合わなかったと先ほど言っていただろう」
空で呟いたあの小さな声が下で走っていたヒサメたちには聞こえていた訳だ。
「確かに、その、約束をしていたんですがもう始まっていますし。約束してたのはお昼だったので」
「まだ、間に合うんじゃないか?夕方よりも前だし、それに、その、行った方がいいと思う」
フブキが何やら口ごもるので、私は首を傾げるとヒサメは呆れたように笑う。
「収穫祭といえば逢瀬の定番だろう。恋人と街を巡り、美味しいものを共に食す。夜に灯る色とりどりの光の中で共に生きていくと誓うことでずっと一緒にいられる。そんなことが言われるような日だ。そんな日に約束があったのなら、キミも分かるだろう?」
ヒサメにそう言われ、私は慌てて手を横に振った。
「ヴィントさんとはそんなんじゃないです!!」
「いいから早く行ってやれ。相手がフブキじゃない限りは、応援してやろう」
ヒサメとフブキは黒羽鳥のいる場所で待っていてくれたらしく、私とソラは急いで戻ってきた。
「はい、あの、白銀の国の許可証も頂いたのですが」
「この国の許可証さえあれば、この国の出入りが可能になる。それに、もし国の外で狼の獣人に出くわしてもその許可証を見せれば王であるオレがキミを認識している証明にもなる」
それは確かにありがたいことではあるが、いいのだろうか。
神官でもない一般の私が、この国の出入りを許可したことで反感を買うことになるのでは。
「前王が死んだ今、白銀の国の体制はこれから大きく変化することになるだろう。国を囲う鉱石をどのように扱うか、あの鎖国状態の国をどうしていくのか考えることは山積みだ。だからこそ、狼の獣人以外の人間であるキミに許可証を渡すのは、新たなる体制の一歩目だ。闇魔法を持つリビ殿だからこそ、ふさわしいとオレは思っている」
ふさわしい、それがどういう意味を持つのか分からない。
同じ闇魔法を持つものという意味なのか。
他の者からは恐れられている存在という意味なのか。
「深く考える必要はない。白銀の国に入る許可がある、というだけだ。フブキの命の恩人なのだから、この国に入れないというのはおかしな話だろう」
あいかわらずフブキを中心的に考えているヒサメの言葉に私は曖昧に笑っておいた。
「それではそろそろ太陽の国へ向かう。ソラ殿、準備は良いか」
「キュ!」
ソラはやる気は十分といったように手を振った。
「ソラ殿、あの鉱石はしっかりと体に固定させてもらう。だから、遠慮する必要はない」
ヒサメがソラの背を撫でると、ソラは首を傾げた。
「どれだけ速く飛ぼうと鉱石を落とす心配はない、ということだ。本当はもっと速く飛べるだろう?」
「え、そうなんですか!?」
私の声にソラは困ったような顔をする。
「リビ殿はソラ殿に手綱をつけていない。だからこそ、ソラ殿はリビ殿が落ちない速度でしか飛んでいないわけだ。そうだろう?」
「キュウ」
ソラは戸惑うように肯定している。
「そうだったんだ、私に合わせて飛んでくれていたんだね」
「キュウキュウ」
「うん、それで支障はなかったからね。それに、あれよりもっと速かったら確かに落ちてたかもしれないし、ありがとうね」
「キュ!」
ソラに手綱をつけるなんて発想は今までなかったことだった。
ドラゴンに乗っている人の方が珍しいし、言われたこともなかったから気づかなかったのだ。
「本来ブルームーンドラゴンは争いを好まないぶん、その場から逃げるのは得意なはずだ。ゆえに、もっと速く飛べるだろうと思っていた。だから、ソラ殿。今回はもっとスピードを上げて飛んでみてもらえるか?オレとフブキはソラ殿の速度に合わせて走る。黒羽鳥も同じくらい速く飛べるから問題はない」
「キュ!」
元気よく頷いたソラに鉱石を背負ってもらい、ロープで固定する。
私はさきほどお願いした黒羽鳥に乗せてもらい、空へと舞い上がる。
すると、フブキが下から大声で叫んだ。
「リビ!!ちゃんと手綱を握っておけよ。たぶん、今までソラに乗ってたスピードとは次元が違」
フブキの声が途中でかき消え、私は風力で首が後ろに持っていかれた。
速っっ!!!!?
まるでミサイルのように飛び出した黒羽鳥の上で私は必死に手綱を握りしめた。
風が寒くて痛くて息ができない。
私は身を屈めてできるだけ空気抵抗を受けないように鳥の首が盾になるようにする。
ソラやフブキ、ヒサメの様子を見る余裕すらない。
どれほどの時間が経ったのだろう。
1時間くらい?それとももっとか?
ようやくおそるおそる景色を見た時だ。
前方にソラが飛んでいるのが見える。
明らかにいつも飛んでいるスピードよりも速くこの黒羽鳥よりもすこし速いくらいだ。
そして地面を見れば、ヒサメとフブキが話しながら走っている。
狼の獣人族は一体どれだけの体力と脚力があるのだろう。
そうして、太陽の国が見え始めてようやく私は思い出した。
今日は収穫祭の日だ。
数日にわたって行われる収穫祭だが、私はヴィントに案内をしてもらう約束をしていたのだ。
「もう始まってるのかな、収穫祭。間に合わなかったな」
街中はランタンなどで飾り付けられ、屋台が出ているのが空から見える。
大きなお祭りなのだろう、とても賑やかな声が国の外にも聞こえてくる。
私は門番に事情を説明し、ヒサメとフブキと共に太陽の国に入った。
そこでヒサメが振り返る。
「これから太陽の国王に謁見し、治癒の鉱石の説明をする。その後、採掘者の怪我の治癒にあたることになるだろう」
「はい」
「それまで運搬にソラ殿についてきてもらうが、リビ殿は自由にしてもらってかまわない」
「え、いえ、私もいっしょに」
「魔力の少ないキミが来てもすることがないと言っている」
ヒサメにそう言われ、私は反論の余地がない。
役立たずで辛いなと思う寸前に、ヒサメは柔らかい声で言った。
「収穫祭、約束があったのではないか?」
「え?」
「間に合わなかったと先ほど言っていただろう」
空で呟いたあの小さな声が下で走っていたヒサメたちには聞こえていた訳だ。
「確かに、その、約束をしていたんですがもう始まっていますし。約束してたのはお昼だったので」
「まだ、間に合うんじゃないか?夕方よりも前だし、それに、その、行った方がいいと思う」
フブキが何やら口ごもるので、私は首を傾げるとヒサメは呆れたように笑う。
「収穫祭といえば逢瀬の定番だろう。恋人と街を巡り、美味しいものを共に食す。夜に灯る色とりどりの光の中で共に生きていくと誓うことでずっと一緒にいられる。そんなことが言われるような日だ。そんな日に約束があったのなら、キミも分かるだろう?」
ヒサメにそう言われ、私は慌てて手を横に振った。
「ヴィントさんとはそんなんじゃないです!!」
「いいから早く行ってやれ。相手がフブキじゃない限りは、応援してやろう」
22
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜
自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる