【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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白銀の国

黒羽鳥に乗って

「許可証の記載は済んだようだな、リビ殿」
ヒサメとフブキは黒羽鳥のいる場所で待っていてくれたらしく、私とソラは急いで戻ってきた。
「はい、あの、白銀の国の許可証も頂いたのですが」
「この国の許可証さえあれば、この国の出入りが可能になる。それに、もし国の外で狼の獣人に出くわしてもその許可証を見せれば王であるオレがキミを認識している証明にもなる」
それは確かにありがたいことではあるが、いいのだろうか。
神官でもない一般の私が、この国の出入りを許可したことで反感を買うことになるのでは。
「前王が死んだ今、白銀の国の体制はこれから大きく変化することになるだろう。国を囲う鉱石をどのように扱うか、あの鎖国状態の国をどうしていくのか考えることは山積みだ。だからこそ、狼の獣人以外の人間であるキミに許可証を渡すのは、新たなる体制の一歩目だ。闇魔法を持つリビ殿だからこそ、ふさわしいとオレは思っている」
ふさわしい、それがどういう意味を持つのか分からない。
同じ闇魔法を持つものという意味なのか。
他の者からは恐れられている存在という意味なのか。
「深く考える必要はない。白銀の国に入る許可がある、というだけだ。フブキの命の恩人なのだから、この国に入れないというのはおかしな話だろう」
あいかわらずフブキを中心的に考えているヒサメの言葉に私は曖昧に笑っておいた。
「それではそろそろ太陽の国へ向かう。ソラ殿、準備は良いか」
「キュ!」
ソラはやる気は十分といったように手を振った。
「ソラ殿、あの鉱石はしっかりと体に固定させてもらう。だから、遠慮する必要はない」
ヒサメがソラの背を撫でると、ソラは首を傾げた。
「どれだけ速く飛ぼうと鉱石を落とす心配はない、ということだ。本当はもっと速く飛べるだろう?」
「え、そうなんですか!?」
私の声にソラは困ったような顔をする。
「リビ殿はソラ殿に手綱をつけていない。だからこそ、ソラ殿はリビ殿が落ちない速度でしか飛んでいないわけだ。そうだろう?」
「キュウ」
ソラは戸惑うように肯定している。
「そうだったんだ、私に合わせて飛んでくれていたんだね」
「キュウキュウ」
「うん、それで支障はなかったからね。それに、あれよりもっと速かったら確かに落ちてたかもしれないし、ありがとうね」
「キュ!」

ソラに手綱をつけるなんて発想は今までなかったことだった。
ドラゴンに乗っている人の方が珍しいし、言われたこともなかったから気づかなかったのだ。
「本来ブルームーンドラゴンは争いを好まないぶん、その場から逃げるのは得意なはずだ。ゆえに、もっと速く飛べるだろうと思っていた。だから、ソラ殿。今回はもっとスピードを上げて飛んでみてもらえるか?オレとフブキはソラ殿の速度に合わせて走る。黒羽鳥も同じくらい速く飛べるから問題はない」
「キュ!」
元気よく頷いたソラに鉱石を背負ってもらい、ロープで固定する。
私はさきほどお願いした黒羽鳥に乗せてもらい、空へと舞い上がる。
すると、フブキが下から大声で叫んだ。
「リビ!!ちゃんと手綱を握っておけよ。たぶん、今までソラに乗ってたスピードとは次元が違」
フブキの声が途中でかき消え、私は風力で首が後ろに持っていかれた。


速っっ!!!!?


まるでミサイルのように飛び出した黒羽鳥の上で私は必死に手綱を握りしめた。
風が寒くて痛くて息ができない。
私は身を屈めてできるだけ空気抵抗を受けないように鳥の首が盾になるようにする。
ソラやフブキ、ヒサメの様子を見る余裕すらない。


どれほどの時間が経ったのだろう。
1時間くらい?それとももっとか?
ようやくおそるおそる景色を見た時だ。
前方にソラが飛んでいるのが見える。
明らかにいつも飛んでいるスピードよりも速くこの黒羽鳥よりもすこし速いくらいだ。
そして地面を見れば、ヒサメとフブキが話しながら走っている。
狼の獣人族は一体どれだけの体力と脚力があるのだろう。
そうして、太陽の国が見え始めてようやく私は思い出した。

今日は収穫祭の日だ。

数日にわたって行われる収穫祭だが、私はヴィントに案内をしてもらう約束をしていたのだ。
「もう始まってるのかな、収穫祭。間に合わなかったな」
街中はランタンなどで飾り付けられ、屋台が出ているのが空から見える。
大きなお祭りなのだろう、とても賑やかな声が国の外にも聞こえてくる。


私は門番に事情を説明し、ヒサメとフブキと共に太陽の国に入った。
そこでヒサメが振り返る。
「これから太陽の国王に謁見し、治癒の鉱石の説明をする。その後、採掘者の怪我の治癒にあたることになるだろう」
「はい」
「それまで運搬にソラ殿についてきてもらうが、リビ殿は自由にしてもらってかまわない」
「え、いえ、私もいっしょに」
「魔力の少ないキミが来てもすることがないと言っている」
ヒサメにそう言われ、私は反論の余地がない。
役立たずで辛いなと思う寸前に、ヒサメは柔らかい声で言った。
「収穫祭、約束があったのではないか?」
「え?」
「間に合わなかったと先ほど言っていただろう」
空で呟いたあの小さな声が下で走っていたヒサメたちには聞こえていた訳だ。
「確かに、その、約束をしていたんですがもう始まっていますし。約束してたのはお昼だったので」
「まだ、間に合うんじゃないか?夕方よりも前だし、それに、その、行った方がいいと思う」
フブキが何やら口ごもるので、私は首を傾げるとヒサメは呆れたように笑う。
「収穫祭といえば逢瀬の定番だろう。恋人と街を巡り、美味しいものを共に食す。夜に灯る色とりどりの光の中で共に生きていくと誓うことでずっと一緒にいられる。そんなことが言われるような日だ。そんな日に約束があったのなら、キミも分かるだろう?」
ヒサメにそう言われ、私は慌てて手を横に振った。
「ヴィントさんとはそんなんじゃないです!!」
「いいから早く行ってやれ。相手がフブキじゃない限りは、応援してやろう」

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