【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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泉の谷

交渉人

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私は交渉人が外から戻ってくるとアワン族長に教えてもらい会うことになった。
今回もしも、白銀の国との仕事が決まれば交渉をすることになるエルフらしい。
アワン族長の家で待っているとそこにはビルが来た。
「あれ?ビルさんも交渉人の方に用事ですか」
「用事、というか本当なら私も一緒に行かなきゃいけなかったんです」
ビルは伏し目がちにそう言ったが、ということはつまり。
「ビルさんのお仕事って、交渉人だったんですか!」
「はい…すみません、言ってませんでしたねすみません」
「いえそれは全然。」
確かに人見知りとか言ってたな。
そこにアワン族長と一人の美少女が入ってきた。
ビルに似ているが、また種類の違う美人だ。
ビルが儚げ美人なら、この子は男勝りな美人ってところか。
「お兄ちゃんおかえり…」
私はビルの言葉に驚いて二度見した。
「え、お兄ちゃん?」
そのビルの兄だと言う人はビルの元へ真っ直ぐ行くと頭を撫でる。
「ただいま、体調平気か」
「え、うん、あのごめんなさい。仕事、休んじゃって」
「気にすんな、俺の手腕で丸め込んできたから」
そう言うとくるりと振り返り私をじっと見た。
「あんたが闇魔法の人?」
そう言った瞬間アワン族長が杖で頭をコツンと殴った。
「これトゥア!!挨拶が先じゃろうがこの馬鹿孫!」
「痛ってぇなババア、これからすんだよ!!」
トゥアは私をまじまじと見ると軽く頭を下げた。
「交渉人のトゥア、ビルの兄。あんた案外フツーだな」
「これトゥア!!」
「痛いっての!ドラゴンと旅してるだの、精霊様と喋れるだの聞いたからもっとかっけぇ人想像してたんだよ!」
トゥアは頭をさすっている。
「えと、リビです。普通の人です」
「ふーん、精霊様ってどんな感じだった?」
美しい顔面からハスキーなボイスが聞こえてくる。
いや、これはこれで似合うな。
「精霊様は皆と遊びたいし、賑やかな方が好きらしいです」
「それは俺も思ってたわ。帰ろうとすると寂しそうにするもんな。決まりがあったから遊んだことはねぇけど。よし、行こうぜ」
トゥアは突然私の腕を引っ張りこの家を出ようとする。
「トゥア、どこ行くんじゃ!」
「精霊様と遊んでやるんだよ、ご要望は叶えてやらねぇとな。リビは通訳として借りるわ」
「トゥア、精霊様にもリビにも失礼なことは!」
「分かってるっつーの!」



そうして泉に向かうなかトゥアは腕を離してくれない。
「あの、逃げないんで離してもらっても」
「ここらへん足元不安定なんだよ、ビルがよく転ぶんだ」
なるほど、お兄ちゃんらしい一面がある。
手を引かれながら私は、身長があまり変わらないことに気づく。
今までヴィントさんやフブキさん、ヒサメ様、そしてシグレさんが高身長男性だったため新鮮だ。
「…まだ成長期だ」
「え」
「ちっせぇ、って顔してんだろ。顔色をうかがう交渉人なめんなよ」
むすっ、としてしまったので私は慌てて謝る。
「すみません、成長期ってことは若いんですね」
「俺もビルも正真正銘17。まだまだ伸びるわ」
「ビルさん、連れてこなくて良かったんですか」
トゥアの足が止まり、ようやく手を離した。
「それじゃあ、連れ出した意味ねぇだろ」
トゥアが手を叩くと泉の中から精霊様が顔を出した。
「精霊様、いつもありがとうございます」
『トゥアおかえりー。リビやっほー』
ヒレを振りながら精霊様は近づいてくる。
「精霊様はトゥアさんにおかえりって言ってます」
「へぇ、精霊様は俺の仕事もちゃんと知ってくれてるわけね。ただいまです」
トゥアは精霊様と握手すると私に向き直る。
「ビルは度々この泉に来て精霊様に相談してる。本人は隠れて来てたみたいだがバレバレなんだよ。俺はその相談内容を知りたい。だから翻訳してくれ」
『ビルに直接聞けばいいじゃん、お兄ちゃんなんだから』
「と、精霊様は言ってますが」
トゥアはため息をつくとその場にあぐらをかいた。
「言うわけねぇだろ、ビルだぞ」
『たしかにそれもそうだね』
精霊様は激しく頷いている。
『ビルの悩みはだいたい仕事だよー。人と喋るの苦手なんだって』
それを翻訳して伝えればトゥアは頭をがしがしと乱す。
「そんなこと知ってる。だからいつもビルにはいるだけでいいって言ってる。喋りは俺がなんとかしてるし、あいつは黙ってたって商売人がこっちに有利になるような魅力があるんだからな」

「…ブラコン、ですか?美人なのは分かりますけど」

「そういう意味じゃねぇよ。あいつの持ってる魔力が魅了する力があるってこと。魔力には光属性と闇属性以外の付加価値が付くことがあんだよ。知らねぇの?」
ああ、また知らない情報が増えていく。
私は首を横に振る。
「あいつの魔力は周りを魅了する力があって、それと同時にあの顔面だろ?だからこの谷の連中は交渉人に最適だってビルを推した。俺は人見知りのビルを補助するために交渉人をやってる」
「…お母様も、それを望んだんですか」
「なに、なんか聞いたの?母さんはビルが交渉人に選ばれたことにかなり喜んではいたな。ビルは友達作るのも下手だし、引きこもりがちで、そんな時に交渉人に選ばれたから何かのきっかけになればいいと思ったんじゃねぇかな。仕事のためにこの泉の谷から出るだけでもビルにとってはかなりの勇気だ。だから、働きに出るビルを嬉しそうに見送ってた」
ビルさんはそんなお母様のことを思うと仕事をやめられないのかもしれない。
「俺はビルが何か言いたいのを我慢してるって分かってるんだ。それが分かんねぇから精霊様に聞こうとしたんだよ」
『教えてもいいけど、それって意味あるのかな?』
「…どういう意味」
『ビルの言いたいことをボクから聞いたからって現状何か変わるとは思えないってこと。ビルが変わろうとして、ビルがトゥアに言うって決めないと駄目じゃない?』
「うわ、まともなこと言うじゃん。精霊様ってそんな感じなんだ」
私も思ったよ、見た目イルカなのにね。
『もうちょっと待ってみたら?今まさにこの泉の谷に変化が起こってるじゃん。ビルも心境に変化があるかもよ』
「変化?」
『リビ達が来たことによって何もかも変わっていく。変わらなかった日常が変わり始めているんだよ。ボクがトゥアと話せているのがその証拠。変化は連鎖していくものなんだ』 
ゆらゆらと泳ぐ精霊様にトゥアは複雑な表情を浮かべてる。
「リビ、精霊様の言葉に従うのは合ってると思うか?疑う訳じゃねえけど、あの可愛い見た目で言われるとなんか腹立つな」
「まぁ、私達より長生きしてるはずなので言ってることはあながち間違いでもないのではと思います」
「…そうかよ」
トゥアは立ち上がると泉に背を向ける。
「帰るんですか」
「とりあえずはビルが話すのを待つ。俺に言うか分かんねぇけど、ここで精霊様に聞いたところで駄目な気がしてきた。ありがとうございました、精霊様」
私も精霊様にお辞儀をしてトゥアを追いかける。
『次来るときはボールで遊ぼうよ!』
「って、言ってますよ」
「はいはい、俺が忙しくないときに持ってきますよ」
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