【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

文字の大きさ
71 / 169
組織の調査1

記憶の喪失

レビンの部屋を出てから私は向かわなければならない場所があった。
早足になる私の隣をヒサメが普通の速度で歩んでいる。
足の長さの問題だが今はどうでもいい。
「どこへ向かうつもりだ、リビ殿。あまり、学校内をうろつくことはできないぞ。」
確かに、私たちは学校関係者でないのであまり歩き回ることはできないだろう。
でも、どうしても会わなければならない。
「ヒカルさんに話をきかなければいけないんです。」
「ああ、ユニコーンと共にいた女性か?確か、キミと同じ世界から来た者だったか。」
先ほどのレビンと私の会話で察してくれたのだろう。
「はい、彼女は私と同じ時期にこちらの世界に来た者です。私とは違い光魔法を持っています。将来は聖女になるらしいです。」
「なるほど、同じ時期に来たのにも関わらず異なる面が多々ある者ということか。」



そんな話をしながら私とヒサメは空中庭園に来た。
レビンの言ってたようにそこには、道端ではなかなかみかけない植物が植えられている。
それにファンタジー感満載の生物がちらほら見える。
様々な種族と会っておいてなんだが、やはり物語に出てくるような魔獣を見ると気分が高揚する。
その奥に大理石のような椅子とテーブルがあり、ヒカルはそこで本を読んでいた。

「ヒカルさん」

そう声を掛けるとヒカルは顔をあげて、それから立ち上がる。
その表情はなんだか暗く、どこか壊れそうなそんな雰囲気で私は戸惑った。
「リビさん、太陽に国にいつ戻ったんですか。いつもいないから、私、どうやったら会えるかなって思ってて」
ゆっくりとこちらに来るヒカルはどこか様子がおかしくて、そうしてヒカルは私の服の裾を力なく掴んだ。
まるで、迷子にならないように母親の手を掴むかのように。

「リビさん、どうしよう、私、記憶が消えていっているんです。もう、お母さんの顔も、お父さんの顔も思い出せないの!!」

小さな子供のように泣き出したヒカルを私は思わず抱きしめていた。
周りにいた生徒はその光景に驚いて近寄ろうとするが、ヒサメがそれを制すると誰も動けない。
「元居た世界の記憶が、どんどん無くなってるんです、友達のことも、自分がどんな風に生活をしていたのかも、思い出せなくなって。日本語すら、あやふやになってる。これって、どうしたらいいんですか。誰にも言えないの、誰も分かってくれない。」
泣きじゃくるヒカルの頭を撫でながら、私は両親の顔を思い浮かべる。

まだ、思い出せる。

ほっとしつつも、ヒカルの様子にそんなことを思うことが申し訳なくなる。
「ヒカルさん、いつから記憶が無くなってきているんですか?」
「はじめに気づいたのは、半年ほど前です。今まで日本語を話していたはずなのに、いつの間にかこの世界の言語で会話していることに気づきました。日本語を話そうとしてみたのに、どんな言葉があったのか出てこなくて。」
私はそんなことを言われて日本語で話しかけてみた。
「《ヒカルさん、日本での生活を思い出せますか》」
「・・・名前を呼ばれているのは分かります。だけど、なんだか知らない言葉が並んでいるみたいな、そんな感じがします。母国語を忘れるなんて、そんなのおかしいですよね。」
私もこの世界に来て、自分の名前を思い出すことが出来ない。
それはルリビを食べているせいだと言われていたが、どうやら違うようだ。
致死の毒であるルリビをヒカルが食べることはできない。
だとしたら、記憶を失うのは別の理由があるはず。
私は後ろに立っているヒサメに声をかける。
「ヒサメ様、以前別世界の話をしたとき、光魔法を持つ者は重宝されるから文献もあると言ってましたよね。内容は覚えていますか。」
「ああ、全てではないがな。〈別世界から来た光魔法の人間は心の美しい者が多く、その魔力の高さゆえに神官や聖女になることが多い。彼らは他者を慈しみ、それを癒すことに長けている。しかし、己の苦悩を理解されることはなく、彼らを癒すことが出来るのは神だけである。神への祈りを捧げ続けることが、彼らの悩みを解決する最短の方法なのだろう。〉これは、その文献で有名な部分だ。記憶が消えているというのは聞いたことがないが、もしかすると、わざと記載されていないのかもしれない。」
ヒサメの言葉にヒカルが顔をあげる。
「どういう、意味ですか。」
「この文献は大きな国ならばおそらく持っているはずだ。神官や聖女はその大きな国で守られることが多い。つまり、別世界から来た神官や聖女の目に触れても問題のない内容しか書いていない可能性がある。記憶が消えるなんて書いてあれば不安を煽ることにもなる。己の苦悩を理解されない、とぼかしているがそれが記憶に関することかもしれない。」
「そんな・・・。」
ヒカルは絶望した表情で、私を見上げる。
「この世界に来たら記憶が消えてしまうということなのでしょうか。リビさんも名前を思い出せないんですよね?他の記憶はどうですか、日本語で思い出せないことは?家族は?友達は?」
「私は、名前を思い出せないこと、以外は・・・。」
「私とリビさんは同じ時期にこの世界に来たはずです!!私とリビさんの何が違うの!?どうして私は、両親の顔すら思い出せないの?何がだめなの、怖いの、このまま私、全て忘れちゃうの?」
ヒカルを抱きしめたままの私は何も答えられなかった。

記憶を失う原因が何なのか分からない今、かける言葉が見つけられなかった。

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん
ファンタジー
「攻撃力ゼロのポーターなんて、配信の邪魔なんだよ!」  3年尽くしたパーティから、手切れ金の1万円と共に追放された探索者・天野蓮(アマノ・レン)。  絶望する彼が目にしたのは、ダンジョン深層で孤立し、「お腹すいた……」と涙を流すS級美少女『氷姫』カグヤの緊急生放送だった。  その瞬間、レンの死にスキルが真の姿を見せる。  目的地と受取人さえあれば、壁も魔物も最短距離でブチ抜く神速の移動スキル――【絶対配送(デリバリー・ロード)】。 「お待たせしました! ご注文の揚げたてコロッケ(22,500円)お届けです!」  地獄の戦場にママチャリで乱入し、絶品グルメを届けるレンの姿は、50万人の視聴者に衝撃を与え、瞬く間に世界ランク1位へバズり散らかしていく!  一方、彼を捨てた元パーティは補給不足でボロボロ。 「戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう知らん。俺は、高ランク冒険者の依頼で忙しいんだ!