【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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黄金の国

王との謁見

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時は遡ってほんの少し前。

私とソラは黄金の国に到着するなり、国王に謁見することになった。
太陽の国同様、騎士は端の方に並んでおり、ローザたちもその列に並ぶ。
私とソラは指定された場所まで進み、それからお辞儀をした。
「お初にお目にかかります、国王様。私はリビ、こちらはソラと申します。」
「ああ、知っているとも。本当にブルームーンドラゴンを連れているとはなぁ。」
黄金の国王はなんだかこちらをじっと見ていて緊張する。
「私はこの国の王グウル。そなたたちがいつも見ている国とは違って随分と小さい国だろう?だが、安心してくれ。この国は加護を受けるための設備は万全で、国の財政も安定している。そなたたちをもてなすには十分だと思ってくれてかまわない。」
グウル国王の言葉になんと返したらいいか分からないが、お礼が無難だろうか。
「お心遣い感謝致します。」
「そういえばその方、闇魔法を持っている人間という噂だったが、まことか?ドラゴンと会話できると聞いているが、珍しい魔法を持っているなぁ。」
疑われているというよりかは、それを吟味されているようなそんな気がする。
あまり魔法に関して話したくはないが、最低限の受け答えはしなくてはならない。
「はい、ソラと話すことが出来ます。」
「他には?どんな種族と話せるんだ?」
私はその質問に間を置かずに答える。
「私の魔法はまだ未熟ゆえ、今可能性を広げるために鍛錬の最中でございます。」
答えながら背中に冷や汗が伝う。
相手がどんな人物か図りかねる今、こちらからの情報をあまりさらけ出す訳にはいかない。
「まぁ、よい。ソラ、だったか。こちらに来て、姿をよく見せてくれないか。」
グウル国王にそう言われたソラは、いっそう強く私の腕を掴んだ。

その様子にグウルは声を出して豪快に笑った。

「そのドラゴンはまだまだ子供のようだなぁ。実はドラゴンのためにたくさん貴重な果実を用意している。大人同士の話もあるし、どうだろう。ドラゴンは隣の部屋でもてなしをさせてくれないか。」
私とソラを離れさせる気満々の言葉にため息が出そうだ。
「いえ、大人の話だとしてもソラは理解できます。話ならいっしょに」
「金で売り飛ばすそなたの顔を見られたくないだろうという配慮だったんだが、理解してもらえないみたいだなぁ。」
グウル国王の目がなんだかうつろで恐怖感が増してくる。

「誰が誰を金で売り飛ばすんですか。私はそんなことしません。」

私がそう言って啖呵を切ると、グウル国王はまた、高らかに笑う。
「人間は最初、いつもそう言うんだ。自分はそうはならない、自分だけは違うとな。分かってない、みーんな同じだよ。かわいいのは自分自身、誰しも大切なのは我が身なんだ。私はね、最大限の優しさを持ってそなたに聞いている。金で解決できるのなら安いものじゃないか。」

それが至極当然のように言ってのけるグウル国王はどこかおかしい。
いや、普段を知らないけれど、でも何かがおかしい。
私は騎士が並ぶ方を見たが、騎士全員下を向いている。
ローザも私の顔も国王の顔も、見ようとしない。

「私の国でドラゴンは丁重に扱われる。好きなものを好きなだけ与えることが出来る。それの何が不満なのだ?なに不自由ない生活が手に入り、どれだけ大きく成長しようとも素晴らしい部屋を与えてやれる。そなたは莫大な金を手に入れて、ブルームーンドラゴンを連れた有名な闇魔法の女などと呼ばれなくなる。目立つこともない、平穏な暮らしが送れる。だれも不幸にはならないだろう?」

ソラは私の顔を見ている。
私は、表情を動かせない。

「そなたはそもそも、闇魔法の人間であることでハンディを背負っている。その上、目立つドラゴンといることでそのハンディが露見してしまうことが問題だ。ドラゴンがいなければ、そなたは普通の生活が送れる。魔法を使わなければ基本的には闇魔法がバレることはないからだ。これからの人生、ずっと闇魔法の女だと差別され、邪険にされ、苦しんでいく道を選ぶというのか?そんなのは、あまりに愚かだ。せっかくドラゴンもそなたも幸せになる方法があるというのに利用しない手はない。」
ソラは不安そうな顔で、私の手を握りしめる。
「ソラ、違うよ。ソラといたって、私は不幸じゃないよ。」

グウル国王は徐にこちらに何かを投げた。
ころころと転がったそれは、野球ボールほどの大きさの宝石だった。

「そなただって考えたことはあるはずだ。これから先、ドラゴンはもっと大きく成長する。そんなことになれば、他の人間と共に普通の暮らしなんかできるはずもない。それに、そのドラゴンは光属性の種族だ。そもそもの話、そなたたちの相性は最悪なのだ。共にいること自体が間違いなんだ。そのドラゴンは、光の加護をたくさん受けることが出来るのにもかかわらず、そなたがいることによってその国に長居が出来ない。逆もしかり、そなたが居心地の良い闇の加護を受ける国は、ドラゴンには毒になる。何もかも、分かっているはずだ。」
「キュウ・・・。」

ソラは首を振って私の腕にしがみつく。
私は足元に落ちている宝石を見る。

「その宝石ひとつで一生分の金を手に入れることができる。それでも足りなければさらに宝石を渡そう。欲しい土地があるか、山か、海か。金で解決できない事など存在しない。そのドラゴンをこちらに渡すだけで、そなたはこれから幸せになれるのだ。」

私はゆっくりとその丸い宝石を拾う。

「この世界、賢い者しか生き残ることは出来ない。その場の状況判断に長けた者だけが勝利を掴むことが出来る。どうせ、そなたが選べる道など限られている。それならば、今私の言うことを聞くのが賢明と言えるだろう。」
薄ら笑いを浮かべたその顔に、私は笑顔を向けた。

「お断りいたします。」

「なんだと・・・?」

私はその丸い宝石をローザめがけて全力で投げた。
ローザは驚いて、その宝石を片手で受け止める。
「悪い方ではないって、言ってませんでした?」
「・・・。」
私の言葉にローザは言葉を詰まらせる。
「騎士って国王に黙って従うだけの仕事なんですね。」
私はそう言い捨てて、出口へと向かおうとした。


だが、その瞬間足元の床が大きく開く。
私は落ちる瞬間、床の絨毯を掴んだ。


ソラが引き上げようと手を伸ばそうとすると、ローザ以外の騎士がソラを羽交い絞めにする。
「キュウキュウ!!」
「やめて!!ソラを離して!」
私が叫ぶと同時、私が落ちそうな穴をグウル国王が覗き込んだ。
「もう少し、賢いと思っていたんだがなぁ。所詮、闇魔法の女か。」
私を見下ろすその国王の顔は、冷たく虚ろでゾッとするほど感情がなかった。
国王は手に持っていた槍のようなもので、絨毯を掴んでいた私の手を一突きした。
その痛みで私は手を離し、穴の底へと落ちていく。
頭を打ったのか、私は気絶してしまい暗い穴の中で倒れてしまった。
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