【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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真実の追究1

処刑の撤廃

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私の言葉を聞いた国王は表情を歪め、それから手で顔を覆った。
「私が始めたことではない。これは、先代、先々代から受け継がれてきたことです。今更、私の代で何もかも崩してしまえと言うのですか・・・?」

国王にとってそれは、考え難いことなのだろう。
あり得ないことなのだろう。
だから、崩してしまうという発想になるのだ。

「今更、とはなんですか?今だからこそじゃないんですか?時代とともに変わっていくものがあるのにも関わらず、それと並行して変わらなければならない意識や制度がそのままだから、苦しんでいる人もそのままなんでしょ。」
勿論私だって、簡単に変えられるなんて思っているわけではない。
それでも、まず意識しないことにはスタートラインにすら立てないのだ。
「国王の知っていることを教えてください。国民が知らないことを皆に教えてください。今この国で暴動が起きそうなのは、皆が何も知らないからです。情報を上手く扱うことが出来ないからです。そして、上手く扱えないのは、国が情報を操作していたからですよね。知られたくないことを隠し、都合の良い部分だけを知らされている。噂や情報に踊らされるのではなく、利用できるようにならなければ国民を守ることなんてできません。」

こんな小娘が何を偉そうにと思われても仕方がない。
でも、ここで引き下がるわけにはいかないんだ。
闇魔法は未知で恐ろしいなんて意識が古すぎる。
そもそも魔法自体、使い方でいくらでも危険はある。
そんなものは自然魔法も闇魔法も一緒なんだ。
そして、唯一手放しで危険性のない光魔法が、自由を奪われて搾取されていることにおかしいと気付けないのがおかしいんだ。

「国王、貴方が私をこの国に受け入れたのは先代から受け継がれた決まりがあるからでしょう。でも、ソラと私を引き離さなかったのは貴方の意思ですよね?」
国王は顔をゆっくりと上げ、私とソラの顔を見た。
「アイル先生の叔父を連れてきた時もそうです。遺族を探して欲しいという私の言葉を何も疑わず、彼の葬儀をすることも迷わなかった。彼が闇魔法の人間だと知っていても、貴方は弔うことをご自分で選んだ。そうですよね?」
ゆっくりと頷く国王に、私は片膝をついた。
「白銀の国との国交も、これまでの歴史では考えられない事です。これは、国王がご自分の意思で選んだ新しい時代です。貴方が崩しているのではなく、貴方が新しく作っていくものです。本当はもう既に国王のおかげで変わったものがいくつもあるんです。これからの国民の未来を変えるか否か、貴方が選んで下さい。」


私は頭を深く下げた。
騎士としてのお辞儀ばかりを見てきたから私にはこのやり方しか分からなかった。
でも私はこの場で最大限の礼儀を尽くさなければならないと思ったのだ。
国が国なら侮辱罪。
時代が時代なら即刻死刑になりそうな振る舞いをした。
そしてそれが、太陽の国王ならば聞いてくれるチャンスがあるのではと一縷の望みにかけた。



そうして頭を下げ続け、少し間をおいて国王は話し始めた。
「この国の周辺には昔から別の世界から来たという人間が現れていました。その者たちは人間は持たない光魔法か闇魔法を持っていました。闇魔法の人間には特徴があり、共通言語を話すことができない。その上、闇魔法というのは強くて恐ろしい種族が持つと思われていて、その原因は主に戦争のイメージのせいです。そのことによって、闇魔法の人間は長い間、処刑の対象にされていました。その中には勿論、言語を勉強し、魔法を隠して生活していた者もいたでしょう。昔も今も、鑑定士は非常に少なく、魔法を使っている状態を視認しなければ魔法の属性は分からなかったからです。しかし、魔法を検知する鏡が導入されたことにより、闇魔法の者を見つけ出すことは容易になってしまいました。おそらく、その鏡によってアイル先生の叔父であった騎士は処刑の対象になってしまったのだと思います。」

丁度鏡が導入された時期に騎士であった叔父ザハルは、迷いの森へと送られてしまった。

「先々代はおそらく、このことによって疑問に思ったのでしょう。今まで国のために尽くしてくれた騎士を闇魔法だからと言って処刑した制度がおかしいと思い始めたのです。処刑制度を撤廃すると共に、太陽の国は光魔法も闇魔法も受け入れることにしました。ですが、国民はそうもいかない。長年はびこっている負のイメージは払拭が難しく、新たに闇魔法への差別を禁ずる法律を作りました。そうするとどうなるか。法によって恐怖を抑圧された国民が国へ反感を抱く。そして、いずれは暴動へつながる。それを防ぐために、先々代は光の加護を強めることにしました。それは、闇魔法が国に長居できない理由を作るためでした。」

処刑を撤廃したことにより、国民の恐怖が増幅された。
差別を禁止したことにより、その抑圧に耐えきれなくなりそうだった。
だから、闇魔法の人間の出入りを極端に減らそうとしたということか。

「国民を納得させ、闇魔法への差別を減らすには互いの接触を減らすしかないと考えたのでしょう。光の加護を強めるためには、別世界から来た光魔法の方たちの力を借りるほかありませんでした。強い光の加護を継続するためには、光魔法の人間が減っては困る。先々代に頼まれた光魔法の方たちは、国王に力を貸すことにしたのです。その当時、決してそれは強制ではなかった。困っている国王を助けるために光魔法の方々が自ら率先して、祈りを捧げ続けてくれたのです。ですがそれがいつしか、神官や聖女は辞することも自由に行動することもできないとねじ曲がっていった。むしろそれは神官や聖女の勤めだと、誉だと思うような人間が増えてしまったのです。」

はじめは国王と光魔法の人たちの信頼関係によって成り立っていた制度だった。
光魔法の人たちの厚意によって光の加護はなされていた。
しかし、その厚意は次第に義務へと変わり、そうしなければならないという認識になってしまった。

「神の言葉を聞く神官や聖女は次第に国民の間で神格化された。そのことが、より悪化する原因でした。自分たちとは違う存在だと意識することによって、彼らは祈り続けることが当たり前だと、彼らが周りからの刺激を受けないように、外に極力出すべきではないと、そんな風に彼らを縛り始めたのです。」

そうして、今の光の神殿があるということか。
彼らがそこから出れるのは仕事があるときのみ。
そして、接触できるのは限られた者のみ。
神官や聖女は自分たちとは違うと神格化した人間が、余計な思想を周りに広めたことで起こったことだ。

「そうなってはもう、国王の声は国民に届きませんでした。いや、むしろそれで国が安定したことがいけなかった。暴動を防ぎ、光の加護が強まり、闇魔法の人間への敵視が薄まる。その状態が最善なのではないかと、思ってしまったのです。」
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