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真実の追究1
不撓不屈の聖女
振り返るとそこにはヒカルがいた。
神妙な面持ちの彼女は、白くて細かいデザインが施された美しい格好をしている。
おそらくそれは、聖女の格好なのだろう。
「国王とリビさんのお話を全て聞かせて頂きました。光の加護をいずれすることになるだろうと、その様子を見学するために王宮に来ていたんです。」
ヒカルは私から目を逸らすことなく、話を続けた。
「私はこの世界に来てから、何もかもを誘導されていたんですね。衣食住を与えられ、学校に通わせてもらい、私はとても恵まれているのだと思いました。もちろん、そのことについて恨み言があるわけじゃありません。右も左も分からず、知っている人もいないこの世界で、私がなんの苦労をすることもなく暮らせたのは、この国の制度のおかげでもある。その恩を返すために、人々を癒すための聖女になるんだと思えば、何も辛いことはないのです。」
ヒカルはゆっくりと瞬きをすると、己の手を胸に当てた。
「ですが、そんな思いが意図的に作られているこの状況は間違っているとはっきりと言えます。恩を返す、人々の癒しのために働く、それらのことは全て自分の意思ですることです。誰かにやらされたり、嵌められてそうするしか道がないなんてどう考えてもおかしなことです。だからこそ、そこから逃れようとする人間が現れる。逃れようとするから、逃がさないような仕組みが強化される。この悪循環を私は壊したい。」
真っすぐに私を見るヒカルは強い瞳で訴えかけていた。
すると、ヒカルの後ろから誰かが走って来て私を突き飛ばそうと両手を突き出してきた。
私はそれを難なく避け、後ろに数歩下がる。
付き飛ばそうとしてきた女性は、以前太陽の神殿の門で会った人だった。
その女性は私を睨みつけ、そうしてヒカルに向き直る。
「いけませんヒカルさん、このような闇の者と会話するなんて!!貴女が汚れてしまうことになるのですよ。いずれ聖女になる貴女は、心も体も美しさを保たなければならないのです。」
ヒカルは女性に視線を移すと、口元を緩める。
「はい、私は聖女になりたいです。」
「そうでしょう、そうでしょうとも!!光の聖女様は神に選ばれた尊いお方、そんな貴女が、この下賤で恐ろしい者に近づいてはならないのです。貴女は清く美しいままの存在で、私たちの希望の光なのですから!!」
瞳孔を開いたその表情は正直怖すぎるが、ヒカルはそんな女性に微笑みかける。
「あなたのような人が、この国の倫理を捻じ曲げたんですよ?」
「え・・・。」
あまりに綺麗な笑顔だったので、その場にいた私もソラもその女性も目を丸くした。
「な、なに言ってるんですかヒカルさん。あの闇魔法の小娘の言うことに耳を傾けてはなりません!!あの者は、ヒカルさんを惑わそうとする悪しき存在なのですよ!?我々を混乱させようとしている極悪非道な人間なのです!」
「国王の言葉が国民に届かない、というのがよく分かりますね。だって、話をまともに聞けないんですもの。」
ヒカルは次第に憐れむような表情へと変わり、女性はヒカルにすがりついた。
「国王の話を信じているのですか!?あんなものは、この小娘に誘導されて言わされたようなものです。国王だって、これまで通り何も変わらない平和な国が良かったはずです。何も知らなくたって、これまで何不自由なく暮らしていたじゃないですか!!それの何がいけないの!?」
ヒカルの綺麗なローブを引っ張る女性の手を、ヒカルが優しく包み込む。
「全員知らないふりをしてただけですよ。平和だと思い込みたかったんでしょう?不自由のある人を切り捨てて、無かったことにしたかったんでしょう?自分が見えている範囲が平和で、自分が見たい部分だけを見れれば満足だった。それだけのことでしょう?」
「違う!違います!!私は、私たちは、貴女たち光魔法の神官様や聖女様を尊い者だと信じて、貴女たちを守るために尽くしてきたんです。全てを投げうってでも、貴女たちが汚れないように、神聖なままでいられるように、平和でいられるように尽くしてきたのに・・・。」
女性はずるずると手を床に付いて、這いつくばるような姿勢で叫ぶ。
「何もかもすべて貴女たちのためにやったことなのよ!!どうして分かってくれないの?私たちはこんなに尽くしているのに!!」
そんな泣き叫ぶ様子にソラが怯えるように私の後ろに隠れる。
「貴女のために、って言ってくる人ほど、自分のことしか考えてないらしいですよ。」
ヒカルのそのばっさりとした言葉に、その女性は絶望の顔をする。
「聖女様は、そんなこと言わない。言ってはいけません。貴女は人々に寄り添い、綺麗な言葉しか。」
「間違っていることも肯定するのが綺麗なんですか?それって、何も考えてないだけでしょ?口先だけの薄っぺらい言葉が欲しいなら、聖女や神官である必要はないです。」
「いいえ!!貴女が、神官様や聖女様が言うから意味があるのです!貴女方の言葉だからこそ、私たちは耳を傾けることが出来る。」
「今、傾けてないじゃないですか。」
「それは、貴女が間違った方向へと進もうとしているから正そうと!!」
堂々巡りのこの会話に終止符を打ったのは勿論ヒカルのほうだった。
ヒカルは白いローブを翻し、床に這いつくばる女性を見下ろした。
「あなた方の理想の神官や聖女の型にはまっていた時代は終わりです。私は私のやり方で聖女を遂行します。そもそも、汚れてはいけないと言いながら、差別という汚い言葉をあなたが吐いていた。私に悪影響なのは、闇魔法ではなくあなたの方です。」
そう言われた女性は力なく、床に頭をつけてすすり泣いている。
そうしてヒカルは私の手を取った。
「リビさん、私はこの太陽の国の中から国民を変えてみます。できるかどうかは分かりませんが、国王と共に皆を守るために現実を分からせなければならない、ですよね?」
ヒカルの力強い言葉に私は頷いた。
「ヒカルさんの言葉なら、皆聞いてくれる。私はそう思います。」
聖女候補をさし引いても、ヒカルは国民に好かれていたように思う。
それは、ヒカル自身の力だと思うから。
ヒカルは笑顔で頷くと、私の手をぎゅっとした。
「思い出が薄れても、日本語を話せなくても、私の故郷は変わらない。私を形成するものすべて、元いた世界のものだって気づいたんです。生き方も、考えた方も、私がぶれなければ変わらない。だからこそ、この世界の変わらなければいけないことにも気づけた。」
そうしてヒカルは私の首に腕を回し、抱き着いた。
「いつかまた、太陽の国に戻って来て下さいね。絶対ですよ。」
そう言ったヒカルは、以前記憶が消えていき苦しそうだった少女とは別人のようだった。
前へと進むことを選んだヒカルは、こんなにも強くてかっこいい。
私も、負けていられないなとヒカルの体を抱きしめた。
「はい。またいつか、この国で会いましょう。」
私とソラは王宮から外へ出た。
その時、後ろから思い切り手首を掴む誰かがいた。
神妙な面持ちの彼女は、白くて細かいデザインが施された美しい格好をしている。
おそらくそれは、聖女の格好なのだろう。
「国王とリビさんのお話を全て聞かせて頂きました。光の加護をいずれすることになるだろうと、その様子を見学するために王宮に来ていたんです。」
ヒカルは私から目を逸らすことなく、話を続けた。
「私はこの世界に来てから、何もかもを誘導されていたんですね。衣食住を与えられ、学校に通わせてもらい、私はとても恵まれているのだと思いました。もちろん、そのことについて恨み言があるわけじゃありません。右も左も分からず、知っている人もいないこの世界で、私がなんの苦労をすることもなく暮らせたのは、この国の制度のおかげでもある。その恩を返すために、人々を癒すための聖女になるんだと思えば、何も辛いことはないのです。」
ヒカルはゆっくりと瞬きをすると、己の手を胸に当てた。
「ですが、そんな思いが意図的に作られているこの状況は間違っているとはっきりと言えます。恩を返す、人々の癒しのために働く、それらのことは全て自分の意思ですることです。誰かにやらされたり、嵌められてそうするしか道がないなんてどう考えてもおかしなことです。だからこそ、そこから逃れようとする人間が現れる。逃れようとするから、逃がさないような仕組みが強化される。この悪循環を私は壊したい。」
真っすぐに私を見るヒカルは強い瞳で訴えかけていた。
すると、ヒカルの後ろから誰かが走って来て私を突き飛ばそうと両手を突き出してきた。
私はそれを難なく避け、後ろに数歩下がる。
付き飛ばそうとしてきた女性は、以前太陽の神殿の門で会った人だった。
その女性は私を睨みつけ、そうしてヒカルに向き直る。
「いけませんヒカルさん、このような闇の者と会話するなんて!!貴女が汚れてしまうことになるのですよ。いずれ聖女になる貴女は、心も体も美しさを保たなければならないのです。」
ヒカルは女性に視線を移すと、口元を緩める。
「はい、私は聖女になりたいです。」
「そうでしょう、そうでしょうとも!!光の聖女様は神に選ばれた尊いお方、そんな貴女が、この下賤で恐ろしい者に近づいてはならないのです。貴女は清く美しいままの存在で、私たちの希望の光なのですから!!」
瞳孔を開いたその表情は正直怖すぎるが、ヒカルはそんな女性に微笑みかける。
「あなたのような人が、この国の倫理を捻じ曲げたんですよ?」
「え・・・。」
あまりに綺麗な笑顔だったので、その場にいた私もソラもその女性も目を丸くした。
「な、なに言ってるんですかヒカルさん。あの闇魔法の小娘の言うことに耳を傾けてはなりません!!あの者は、ヒカルさんを惑わそうとする悪しき存在なのですよ!?我々を混乱させようとしている極悪非道な人間なのです!」
「国王の言葉が国民に届かない、というのがよく分かりますね。だって、話をまともに聞けないんですもの。」
ヒカルは次第に憐れむような表情へと変わり、女性はヒカルにすがりついた。
「国王の話を信じているのですか!?あんなものは、この小娘に誘導されて言わされたようなものです。国王だって、これまで通り何も変わらない平和な国が良かったはずです。何も知らなくたって、これまで何不自由なく暮らしていたじゃないですか!!それの何がいけないの!?」
ヒカルの綺麗なローブを引っ張る女性の手を、ヒカルが優しく包み込む。
「全員知らないふりをしてただけですよ。平和だと思い込みたかったんでしょう?不自由のある人を切り捨てて、無かったことにしたかったんでしょう?自分が見えている範囲が平和で、自分が見たい部分だけを見れれば満足だった。それだけのことでしょう?」
「違う!違います!!私は、私たちは、貴女たち光魔法の神官様や聖女様を尊い者だと信じて、貴女たちを守るために尽くしてきたんです。全てを投げうってでも、貴女たちが汚れないように、神聖なままでいられるように、平和でいられるように尽くしてきたのに・・・。」
女性はずるずると手を床に付いて、這いつくばるような姿勢で叫ぶ。
「何もかもすべて貴女たちのためにやったことなのよ!!どうして分かってくれないの?私たちはこんなに尽くしているのに!!」
そんな泣き叫ぶ様子にソラが怯えるように私の後ろに隠れる。
「貴女のために、って言ってくる人ほど、自分のことしか考えてないらしいですよ。」
ヒカルのそのばっさりとした言葉に、その女性は絶望の顔をする。
「聖女様は、そんなこと言わない。言ってはいけません。貴女は人々に寄り添い、綺麗な言葉しか。」
「間違っていることも肯定するのが綺麗なんですか?それって、何も考えてないだけでしょ?口先だけの薄っぺらい言葉が欲しいなら、聖女や神官である必要はないです。」
「いいえ!!貴女が、神官様や聖女様が言うから意味があるのです!貴女方の言葉だからこそ、私たちは耳を傾けることが出来る。」
「今、傾けてないじゃないですか。」
「それは、貴女が間違った方向へと進もうとしているから正そうと!!」
堂々巡りのこの会話に終止符を打ったのは勿論ヒカルのほうだった。
ヒカルは白いローブを翻し、床に這いつくばる女性を見下ろした。
「あなた方の理想の神官や聖女の型にはまっていた時代は終わりです。私は私のやり方で聖女を遂行します。そもそも、汚れてはいけないと言いながら、差別という汚い言葉をあなたが吐いていた。私に悪影響なのは、闇魔法ではなくあなたの方です。」
そう言われた女性は力なく、床に頭をつけてすすり泣いている。
そうしてヒカルは私の手を取った。
「リビさん、私はこの太陽の国の中から国民を変えてみます。できるかどうかは分かりませんが、国王と共に皆を守るために現実を分からせなければならない、ですよね?」
ヒカルの力強い言葉に私は頷いた。
「ヒカルさんの言葉なら、皆聞いてくれる。私はそう思います。」
聖女候補をさし引いても、ヒカルは国民に好かれていたように思う。
それは、ヒカル自身の力だと思うから。
ヒカルは笑顔で頷くと、私の手をぎゅっとした。
「思い出が薄れても、日本語を話せなくても、私の故郷は変わらない。私を形成するものすべて、元いた世界のものだって気づいたんです。生き方も、考えた方も、私がぶれなければ変わらない。だからこそ、この世界の変わらなければいけないことにも気づけた。」
そうしてヒカルは私の首に腕を回し、抱き着いた。
「いつかまた、太陽の国に戻って来て下さいね。絶対ですよ。」
そう言ったヒカルは、以前記憶が消えていき苦しそうだった少女とは別人のようだった。
前へと進むことを選んだヒカルは、こんなにも強くてかっこいい。
私も、負けていられないなとヒカルの体を抱きしめた。
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